第326話 魔力0の大賢者、とクラスメートは理事長室に呼ばれてしまう
昼時に僕たちはイロリ先生と一緒に本校者に向かった。僕たちは本校舎に入ってすぐに理事長室に連れて行かれることになった。
理事長室は結構な広さだからZクラスの僕たちが全員入ってもそこまで窮屈には感じない。
理事長は革張りの椅子に座り僕たちを待っていた。書類仕事をしていたようだけどイロリ先生に連れてこられた僕たちに気が付き顔を向けてくる。
「来たか。何故呼ばれたかはわかっているな?」
「昨日の遊園地の件だって聞いたぜ。だけど文句言われる筋合いじゃないだろう? 俺たちは魔獣を捕獲する為に動いたんだ」
リカルドの問いかけに真っ先に答えたのはアズールだった。アズールはこの件でわざわざ呼び出される事に一番納得いってなさそうだったからね。
「お前たちは所詮自分たちが一学生にしか過ぎないということを考慮していないようだな」
ため息混じりにリカルドが答えたよ。確かにそうだけどそのまま放置しておくわけにはいかなかった。
「その件で遊園地側からクレームでも入ったのですか?」
僕からもリカルドに聞いてみた。魔獣が逃げた原因が僕たちにあったというなら問題視されるのもわかるけどそんなことはないわけだし、昨日の段階では飼育員さんも喜んでくれていた。
「……寧ろ感謝状を送りたいとまで言われたがな。勿論丁重にお断りしたが」
「ちょ、ちょっと! それなら何も問題ないじゃない!」
「寧ろもらえるものならもらっておけばいいのに。食べ物の方が嬉しいけど」
メドーサが叫びリミットは不満そうにしていた。感謝状はともかくやっぱり僕たちに文句を言ってきたわけじゃなかったようだね。
「確かにお前たちの活躍も聞いた。暴れる魔獣を見事に鎮めたようだな」
「そうです。自慢したいわけじゃないですが被害が大きくならないようある程度は貢献したと思います」
ドクトルが言い切った。ガロンも頷いている。
「あ、あの! メーテルやシグルもとっても頑張ってくれたんですよ!」
「ガウ」
「ピィ」
アニマに寄り添うメーテルとシグルを撫でながらアニマも訴える。そう昨日は皆の頑張りがあったから被害を最小限に押さえられたと思う。
「なるほど。確かにお前たちが魔獣を止めるのにある程度貢献したのは確かだろう。だが――結果論だ」
言ってリカルドが厳しい目を僕たちに向けてくる。
「お前たちはまだ魔法を習っている学生の身だ。確かに今回はたまたま上手くいったのかも知れないが未熟なまま無謀な真似をされて余計に被害が広がる可能性は十分にあった」
「だったらあんたは俺たちが何もしなきゃよかったというのかよ!」
「ちょ、アズール落ち着いて!」
アズールが理事長の机を叩きつけて詰め寄った。大分感情が高ぶってるようで危うい気もするからなんとか宥めたよ。
「そうはいってない。だが直接行動する前にやるべきことがあったのではないか? 学園都市の魔導師団を頼るなど手はあったはずだ」
「魔導師団ってそんなところに駆け込んでる暇はなかったじゃない!」
リカルドの意見に対してメドーサが反論した。ただメドーサも感情的になってしまっているようだよ。
「暇がなかったか。メイリアお前はどう思う?」
「はい? 何でメイリアに聞くの?」
「この中で一番客観的に見れるのは彼女だからだ。何せあのゲシュタルが作った秘蔵っ子だからな」
リミットの質問にリカルドが答えた。ゴーレムだからと言いたいのかもだけど――
「……例えばアニマが飼っているメーテルを飛ばせて魔導師団に伝言させるなど、幾らでも手はあったとお答えします」
「何言ってるのよメイリア!」
「そうだよお前はどっちの味方なんだ!」
メイリアの答えにメドーサとアズールが声を荒げた。だけどメイリアは表情も変えず口を開く。
「聞かれた質問に素直に答えたまでですとお答えします」
「と、いうわけだ。結局お前たちのやったことが無謀だったことは確かなようだな」
「グッ、だけど結果はだしてんだろが!」
「やれやれ。私が心配しているのはアズールお前のような生徒だよ。とても直情的で論理性のかけらもない。君のお兄さんは優秀だというのにな」
「テメッ、今兄貴は関係ないだろうがぁあああぁあッ! 熱っちぃいいぃいぃぃぃいいッ!」
不味い! アズールがまた火に包まれたよ! 水をかけないと――
「やれやれ」
するとリカルドが指をパチンッと鳴らし途端にアズールの頭上から水が降り注いだ。
「ブッ!?」
アズールがびしょ濡れになり火は消し止められた。これってリカルドの魔法の効果のようだね――
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