第324話 魔力0の大賢者、休み明けのクラスのやり取りを見る
「シアンちゃんこれお土産だよ!」
魔導遊園地で過ごした次の日、教室でリミットがシアンに遊園地で購入したお土産を手渡ししていたよ。
本当帰ってからすぐ渡す予定だったみたいだけど、昨日はシアンも早くに休んでいたみたいだから今日、教室で渡すことに決めたみたいだね。
「――これは?」
「猫耳だよ! 魔導遊園地のマスコットキャラのケットくんのね!」
そう言ってリミットが笑った。ケットくんは猫のマスコットキャラだったけど、リミットはヘアバンドにケットくんの耳のついたお土産を買ってきたんだ。
「……こういうのは別に」
「ほら! やっぱり似合ってる! 似合うと思ったんだよねぇ」
猫耳を付けてあげたリミットが嬉しそうだね。そして皆で出し合って購入した魔導遊園地名物の菓子も手渡したよ。
「あとメイリアにも、はいこれ」
「これはなんですか、とお尋ねします」
リミットがメイリアにも紙袋を手渡していた。メイリアが疑問げなかおをしているよ。
「おみやげだよ」
「……私は昨日遊園地にいました。知ってる筈では?」
たしかにね。メイリアのおかげで皆も助けられたし魔獣の捕獲にも貢献してくれたよ。
「そうだけど、その前に買っていたからね。昨日はいつの間にか帰っていて渡しそびれたし」
「……私にそのようなものは必要ないとお答えしま――」
「きゃぁあ! 可愛い! やっぱり似合ってるよメイリアちゃん!」
メイリアの返事を聞く前にリミットが帽子を被せていたよ。
「……これは?」
(ソフトクリームを模した帽子だよ♪ 昨日美味しそうに食べていたし丁度よかったよね!」
「……私には帽子は必要ありませんとお答えします」
「そんなことないよ。メイリアちゃん可愛いんだしオシャレオシャレ」
メイリアは押し返そうとしていたけどリミットが押し切っていたよ。そしてメイリアにも菓子を渡した。
「これこそ私には必要ないとお答えします」
「いや、昨日ソフトクリーム食べていただろう?」
「……味覚の機能が備わっているだけです。食べる必要があるわけではなく、元々はマスターの毒見のために備わった」
「わかったわかった。いいから受け取っておけよ」
メイリアの説明を全て聞く前にアズールが受け取るよう促した。それでも固辞していたから僕も会話に参加する。
「うん。これも美味しいしソフトクリーム味もあるからね」
僕がそう伝えるとメイリアの視線が菓子に向いたよ。ソフトクリームが気になったのかもね。
「僕も食べてみたけど美味しかったよ。それに君のマスターも味覚をつけるぐらいだし食べ物を粗末にするのは臨んでないんじゃないかな?」
ドクトルの薦め方は旨いね。メイリアの興味が向きそうな話題を振りつつ彼女の気にしそうなところをついている。
「…………わかりました。でしたらありがとうとお答えします」
「いやだ、素直にお礼言えるんじゃん」
メイリアがお礼を口にするとメドーサが驚いていたよ。
「メイリアちゃんいい子だもんねぇ」
「なぜ頭を撫でるのですか、と疑問に思います」
そしてリミットの行動にメイリアが戸惑っている? いや、嬉しいのかな。表情はあまり変化ないけど段々と打ち解けていってるようで良かったよ。
「メイリアちゃんとも仲良くやれてよかったね」
「うむ。クラスの仲が良いことに越したことはないからな」
「ピィ」
「ガルゥ」
アニマとガロンもそんなメイリアの様子を優しい目で見ていたよ。
「全く朝から騒がしいなお前らは」
「あ、イロリ先生おはようございます。これお土産です」
「――たく、何も知らずおめでたいやつらだな」
そういいつつイロリ先生は僕が渡したお土産を受け取ってくれたよ。
「とにかく席につけこの問題児ども」
「朝から随分な言い草じゃねぇか」
イロリ先生に促され僕たちは席についた。ただその言葉にアズールは不満そうでもある。
「実際そうだから仕方ない。こっちは朝から理事長に呼ばれてわざわざ本校舎に顔だしてきたんだ。全く面倒なことこの上ない」
イロリ先生が頭を掻き毟りながら話してくれた。理事長――リカルドのことだね。
「お前ら昨日魔導遊園地に行ってたな?」
「遊びには行ったが、まさかそれに問題があったのか?」
「でも休日に出かけることはもう制限されてないですよね?」
イロリ先生の反応にガロンとドクトルが食いついていたね。確かにそのとおりだけど、ただこの感じはやっぱり――
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