第323話 生徒会長

side ヘンリー

「今度の親睦会、俺たちも参加したいと思ってる」

「……ぶしつけにやってきたと思えば一体どういう風の吹き回しだ?」


 休み明けそうそう生徒会室にそぐわない相手がやってきた。キャノン・アインドル――僕も目をつけていたDクラスの生徒だ。


 そもそも三年のDクラスには問題を起こしそうな連中が集まっている。生徒会としても目を光らせているわけだけど、そのDクラスの中心となっているのがこのキャノンだ。


 その男が今、生徒会長の目の前で思いがけないことを口にした。生徒会長である【ロジール・オドニア・フラジリス】の顔つきも険しい。


「お前たちDクラスはこういった行事にはこれまで無関心だっただろう? 面倒なのはゴメンというスタンスだったはずだが」

「はは。確かにそうだが、気が変わってね。遊園地の件といい今年の新入生は活きが良いのが多いようだしな」


 遊園地の件――もう耳にしてたか。昨日魔導遊園地で起きた魔獣騒動。その件の解決に一役買ったのが学園の一年生だった。そしてその中には僕のライバルにして親友のマゼルの名前もあったのさラララ~♪


 おっとつい心のなかで謳ってしまったよ。マゼルの活躍については妹のアリエルからも話を聞いたけど流石はマゼルだと思ったよ。


「……魔導遊園地の事も知ってるとは随分と耳が早いな」

「何。昨日は俺たちもたまたま遊園地に遊びに行っていたからさ。その流れで知ったのさ」

「……遊園地に、遊びに?」

「あぁそうだ」

「……お前たちがか?」

「何かおかしいかい?」


 に、似合わないな、と正直僕も思ったよ。この男が遊園地ではしゃぐ姿がまったく想像つかないよ。


「ま、そんなわけでたまには先輩として後輩に指導するのも悪くないと思ったのさ」

「勘違いしているようだが、試合形式こそ取るがあくまで上級生と下級生の交流の場だ。お前たちのようなDクラスが参加しても意味がないと思うがな」

「そんな事無いと思うぜ。それにこれも祭りみたいなもんだろう? だったら俺等は相応しいと思うぜ。しっかり楽しませてやるよ」

「…………」

 

 会長もキャノンの真意を図ろうとしているようだね。僕としてもこの行動には謎が多い。


 ただ――キャノンと付き合いのある二年がマゼルと揉めていたことがあった。それが何か関係しているのか?


 それにしてもこのタイミングでか。そもそも通年なら親睦会で新入生の相手をするのは生徒会だった。だけど今年は特別学区が出来たことで、急遽僕たちが親睦会で相手するのは特別学区から選ばれた生徒たちだと伝えられた。


 そこで流石に生徒会だけで特別学区と新入生の相手をするのは厳しいだとうということで、新入生の相手は三年生から選ばれるということになった。だからこうしてキャノンがわざわざ生徒会室まで乗り込んできたわけだ。


「――どちらにせよ直談判されても困る。三年から誰が出るかは今後の成績などを見て判断するからな。各クラスからバラバラに選ばれることもありえる」

「なるほどね。つまり実力があると判断されれば選ばれるわけだな」

「……勿論普段の素行もチェック対象だぞ」

「はは、ならバッチリだ。俺らほど清く正しく生きている奴はいないからな」


 笑ってキャノンが答えた。本当よく言えたものだと思うよ。


「ま、話はわかったよ生徒会長さん。それじゃあ一丁実力を見せつけてやるとしましょうかねカカッ」


 そう言ってキャノンは生徒会室をあとにした。随分とあっさり引き下がったね。そこが少し不気味に思える。


「ふぅ――全く。それでヘンリーあいつがどういうつもりであんなことをいいだしたか検討はつくかい?」

 

 会長に問いかけられた。真剣なその目つきも美しい。僕も自分の美しさには自信があるけど会長のロジールには敵わないなと思えてしまう。


 生徒会長のロジールはこの魔法学園でも屈指の人気を誇り男子生徒からも女子生徒からも支持されているカリスマ的存在だ。僕も副会長としてロジールと一緒に仕事出来て誇らしく思える。


 そんなロジールからの問いかけ、僕としてもしっかり答えたいところだけど――


「なんともいえないかな。ただ、直接ではないけどキャノンの仲間と僕のライバルで一悶着あったことがあってね」

「ほう。ヘンリーのライバルというと今年の新入生でもあるマゼル・ローランのことか」


 思い出したようにロジールが呟いた。


「名前を覚えていてくれて嬉しいよ」

「それはまぁ、あれだけ情熱的に語られてはね」


 苦笑気味にロジールが答えた。言われてみればマゼルに関してはついつい熱くなって語っていた気がするよ。


「しかし、そうか――少し興味が湧いたな。ヘンリーにここまで言わせる一年生マゼル・ローラン。魔獣騒動でも相当な活躍だったらしいしちょっと会いに行ってみようか」

「なんと! それなら僕も同行しますよ」

「ハハッ、本当に気に入ってるんだね」


 そう言ってロジールが笑った。相変わらずいい笑顔だよ。


「ただ、少々手厳しい事も言う事になるかもしれないがな」

  

 だけど会長は真顔でそんなことも言った。やっぱりそこにも触れることになるか。だけど、マゼルを一目みたらきっとロジールも気に入ってくれると思うさ――

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