第322話 魔力0の大賢者、師匠の話を聞く
「前の園長と違って今の園長は手段を選ばない儲け主義だったようなのさぁ。闇で希少な動物をオークションに掛けたりも平気でやったりね――」
今の園長の正体を師匠が語ってくれた。口調は軽いノリだけどひしひしとした怒りが滲み出ているよ。
「そ、そんな酷いです! 仮にも動物を守らなきゃ行けない立場の園長がそんなことをするなんて!」
聞いていたアニマも憤っていた。動物と心を通わせる事が出来るアニマだからこそ、どんな理由であれ動物を使って違法な取引をすることが許せないんだと思う。
「ピィ!」
「グルゥ――」
アニマが連れているメーテルとシグルも気分が悪そうだ。アニマの気持ちを察したのかも知れない。
「情けない話やな。うちはお金の大切さはわかってるつもりやけど、だからこそお金に振り回されるのは愚かやと思う。捕まった園長はまさにお金に振り回された阿呆やな」
そう言ってリアが顔を顰めた。僕もお金の為だけに悪事に手を染める事ほど馬鹿らしいことはないと思うよ。
「全くありえないです! 動物さんたちが可哀想!」
「ちゅ~!」
アリエルも眉を怒らせていてファンファンも鳴き声が荒い。園長については皆思うところがありそうだよ。
「話はわかりました。ですが先生。その闇で取り引きされた動物たちはどうなるのですか?」
「確かにお嬢様の言う通り私も気になるところです」
イスナとクイスが師匠に聞いていた。裏で取り引きされたという動物の中にはエルフにとって身近な存在であるユニコーンもいたから気がかりなのかもしれないよ。
「ま、そっちもなんとかするよ。この通りリストも手に入れたしねん♪」
師匠が紙束を取り出して舌を出した。う~んどうやって手に入れたかは敢えて聞かないほうが良いかも。
「これをししょ、いや、先生だけで何とかするのですか?」
結構な量だし簡単ではなさそうだけど――
「師匠、僕も手伝いましょうか?」
そっと師匠に耳打ちした。知ってしまったら正直放ってはおけないしね。でもそんな僕の頭を師匠が撫でてニコッと微笑んだ。
「マゼルには学業があるんだからそっちを優先させなさい。それにこれに関しては協力者もいるから大丈夫♪」
それが師匠の答えだった。協力者がいることについては皆に聞こえるように言っていたね。
「さてと、折角の休日なんだし皆は再び休みをエンジョイするといいさ。まだ時間はあるだろう?」
「いや、いくらなんでもこの状況じゃ――」
「あ、いたいた!」
そんな話を師匠としているとまた誰かが息せき切ってやってきた。きっっちりとした身なりの中年の男性だった。
「皆様この度は遊園地のために動いてもらい本当にありがとうございました! そして迷惑をおかけしたことを責任者として深くお詫びいたします!」
責任者の男性は僕たちの前で深く頭を下げてきた。どうやら園内のトップの人みたいだね。
「お詫びと言ってはなんですが本日は勿論、この魔導遊園地の特別フリーパスを提供させて頂きます。よろしければ是非!」
そしてなんと僕たち全員分のフリーパスを渡してくれた。これ食事も無料らしいよ。そんな僕たちに師匠は笑顔を向けてくれた。
「マゼル。折角だし」
「せやな。こういうお得は活かしてなんぼや」
「お兄様! 私もまだ皆と楽しみたいです!」
フリーパスと聞いて皆がウズウズしていた。確かにこのままだと中途半端な休日になりそうだしね。僕たちは師匠や遊園地側の厚意に甘えて残りの時間を楽しむことにしたよ。
なんだかんだで最終的には皆で楽しめたしいい休日になったと思うよ!
◇◆◇
side 師匠
「うん。弟子の良い笑顔も見れたし満足満足。それにしても――」
マゼルたちを見送ったあと、改めてリストを見た。全くよくもまぁこれだけやってくれたものだね。ただ――肝心な情報はないか。やっぱりそう簡単には尻尾は出さないよね。
正直マゼルに話そうか迷うところだけど、今は学園生活を十分に満喫してほしいからね。
だから師匠として今はしっかり見守ってあげたいのさぁ。うん、私いい師匠! ハハッ自分で言ってちゃ世話ないか。
それにしても今回の取り引き――あの園長だけの仕業じゃないようだし、なんとなくだけど身近に黒幕がいそうな気もするねぇ。
ま、とりあえずこっちからなんとかしようかな。幸い協力者がいるのは本当だからね♪
そしてマゼル――前世で出来たなかった学園生活をしっかり謳歌しなよ。色々と苦難も待ってるかも知れないけどそれも含めての青春なんだからね――
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