第319話 クラークに突きつけられる現実

side クラーク


 魔獣を勝手に解放し俺たちは一旦魔導遊園地を離れた。だけどキャノンだけは様子を見てくると言ってまた戻ってしまった。


 あんなことしておいて一体どんな神経してたら戻るなんて出来るんだ。本当正気を疑うぜ。三年のDクラスはヤベェのばかりと聞いていたけど残った連中も含めて本当にそのとおりだと思う。


「戻ったぞ」


 そんなことを考えていたらキャノンが空中からやってきた。一体どうやったのかとんでもないジャンプ力だと思う。


「そ、その大丈夫でしたか? 魔獣なんか放しちゃって」

「あぁ。あの一年は随分と粋がいいなぁ。面白いじゃねぇか。あれだけの魔獣を放ったってのに仲間がいたとは言え鎮圧しやがった。被害も殆どでてねぇしな」


 マジかよ。あいつ魔力が0じゃねぇのか。それなのに何でそんな真似が出来るんだ。


「おいおいマジかよ。とんでもねぇ一年がいたもんだな」

「で、どうするんですかい?」

「あぁ、そうだなぁ。あんまり興味なかったがあんなのが出るなら対抗戦とやらに出てやってもいいかもな」


 キャノンがニヤニヤしながら呟いた。対抗戦って例のアレか。だけどそんなのDクラスが出れるのか?


 なにせ三年のDクラスは一年や俺たち二年とは意味合いそのものが異なる。ダーククラスという異名で知られるような魔境だ。文字通り一癖も二癖もありそうな生徒の集まり――


「それはそれとして、だ。クラークのおかげで俺の財布代わりが一つ消えた。その分はお前ら二年に頑張ってもらわないとなぁ」

「え?」


 それを聞いて背中に冷たい物を感じた。


「ま、問題ないだろう。一年にも金づるは多そうだからな。期待してるぜクラーク」

「ちょ、ちょっとまってくださいよ。そんなこと急に言われても」

「おいおい、俺はお前に期待してるんだぜ。何せこんな客が多い休日に魔獣を檻から出して暴れさせるような危ない奴だ。そんなお前ならいくらでもやりようはあるだろう?」


 俺の肩に腕を回し覗き込むようにしてキャノンが囁いてきた。


 ちょ、ちょっとまってくれよ。何を言ってるんだこいつは。それは全てあんたの仕業だろうが。


 魔獣を暴れさせるなんて俺はそんなこと――


「クラーク。お前――やべぇ奴だな」

「おいおいマジかよ」

「二年のくせによくやるぜ」


 だけど、周囲の三年もキャノンに同調し俺を犯人に仕立て上げるつもりなようだ。俺がここで反発しようものなら奴らは確実に俺を潰しにくるだろう。


 そう、俺には選択肢なんてなかった――


「それじゃあ俺等は先に帰るが今後は頼んだぜクラーク」


 俺の肩を叩きキャノンたちはゲラゲラ笑いながら帰っていった。くそ、何だって俺がこんな目に――

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