第317話 捕まったラーサを見つけるアネ
side アネ
とりあえずナーガも倒してあたしの管轄では危険がなくなったね。
「お姉ちゃんすっご~い」
「かっこいい!」
「あ、あの先ほどは本当にありがとうございました」
そして安全を確認できたからか、さっき助けた人間の親子がやってきてお礼を言ってきたね。毒を受けていた男の方は治療できるところで診てもらってるようだよ。
「いいかいお前たち。あたしがすごいんじゃないからね。あたしのご主人様である大賢者マゼル様が凄いのさ。よく覚えておくんだよ」
「うん! 大賢者様は凄い人!」
「大賢者様かっこいい!」
「その大賢者マゼル様にもよろしくお伝えください」
うんうん。素直なのはいいことだよ。
「あ、あのもう行かれるのですか?」
「あぁ、あたしはこれからご主人様へ報告に戻らないとならないからねぇ。ま、もうこの周辺には魔獣もいないからね。心配いらないさ」
そしてあたしは糸を近くの木に絡めて飛び立った。子どもたちがお礼を言っているのが聞こえてくるね。
全くかつては人間に恐れられていたアラクネのあたしがまさか人間に感謝される日が来るなんてね。長く生きていればいろんなことがあるよ。
勿論主様と出会えたことが一番だけどさ。
そんなことを思いながらあたしは主様の匂いを追って移動していたのだけど、そこで見た。魔獣に捕まって連れて行かれるラーサの姿をね。
あいつエンペラーコングだね。参ったねあたしが全快状態の本体なら問題ないと思うけど、今は大分消耗してしまってる。
今のあたしじゃちょっとキツイ相手だよ。仕方ない急いで主様の下へ向かおうかね――
◇◆◇
「ハァアアアァアアアア!」
「――ッ!?」
僕が殴りつけると巨大なワニのような魔獣【アリゲーダイル】が吹っ飛んでいった。地面に仰向けになったまま意識は完全に失っているね。
「とりあえずこれで危険な魔獣は倒せたし、もう大丈夫だと思いますよ」
「いや、本当あんた何者なんだい?」
「こんなにすごい魔法の使い手初めてみたわ……」
「お兄ちゃんすっご~い」
「ほっほっほ。こんな凄いものが見れるとは長生きはするものじゃのう」
「えぇおじいさん。今日は遊びに来てよかったですねぇ」
危険が去ったから呼びかけると隠れていた人たちも出てきて喜んでいる。
魔法だと感嘆している人もいるけど全部魔法じゃなくて物理なんだけどね……。
「主様見つけた!」
「あ、アネ」
声のした方に顔を向けると糸を振り子のように使ってアネがやってきた。何か慌てているような
「アネ。他の様子はどうかな?」
「あたしの方は問題なしさ。一匹小生意気な蛇がいてちょっと消耗したけどね」
アネはこう言ってるけど結構消耗は激しそうだ。皆のために頑張ってくれたんだなと思う。
「て、それどころじゃないんだよ主様。ラーサが大変なんだ」
「え! ラーサが!?」
アネのただならぬ様子に僕は驚きの声を上げた。ラーサに一体何が?
「魔獣に捕まってしまったようでね。あたしが助けられたらよかったんだけど」
アネが申し訳無さそうにしているけど、今の消耗を考えれば致し方ないと思う。だからこそ僕のもとに駆けつけてくれたんだろうし。
「大丈夫。あとは僕に任せて!」
「主様ならそう言うと思ったよ」
そう言ってアネが僕の肩に乗った。
「ラーサを見た場所は向こうだよ」
「うん。今僕も見つけたよ」
「もうかい? 流石主様の探知魔法は完璧だね」
気配を探っただけなんだけどね。て、いまはそんなこと考えている場合じゃないね。僕は急いでラーサの気配のある場所まで向かった。
どうやらラーサを捕まえた魔獣は動物園から出て遊園地の方に向かったらしい。
これはラーサも心配だけど他に被害が出ないように急がないと!
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