第316話 野獣の皇帝

side ラーサ


「で、でけぇえええぇ! 何だこいつ!」

「鑑定できました! これは魔獣エンペラーコングですね。圧倒的パワーにパワーを重ねたような怪力自慢の魔獣です!」


 唐突に来襲した魔獣はネガメの鑑定によるとエンペラーコングというらしいです。


 これにはモブマンも仰天してますね。かなりの体長を誇る化物です。


「い、嫌な予感がしてきましたわ。ほら! 空にもどんよりした雲が!」


 フレデリカが空を指さしました。確かにだんだんと空模様も怪しくなって来てます。


「アイラ! 試験のゴーレム戦みたく錬金魔法であれ閉じ込められないのか?」

「無理。あの時はゴーレム自体が錬金魔法の素材として使えたから出来た。あの大きさの生物を直接閉じ込める檻は作れない」


 どうやらアイラの錬金魔法でもエンペラーコング程の巨体を閉じ込める事は出来ないようです。


「ビロスに任せる! ハニーボール!」


 ビロスの生み出した蜜の玉がエンペラーコングに向けて飛んでいきます。ですがエンペラーコングは大口を開けてそれを食べてしまいました。


「食べられた!」

「栄養補給させただけみたいね……」

「あ、あんなのどうすればいいんだよ~!」


 シルバが悲鳴を上げました。シルバの水銀魔法でもあの大きさを相手するのは厳しそうです。


「だったら俺のパワーだ! 筋肉魔法!」


 魔法でモブマンの筋肉が増強し、その状態でなんとエンペラーコングに向かっていきました。


「駄目だモブマン! そいつにパワーで挑んでも!」

「うわあぁああああぁあああぁあああッ!」


 ネガメが叫びますが時すでに遅し、エンペラーコングがペチンっとモブマンを叩くと遠くに飛ばされてしまいました!


「だから言わんこっちゃない」

「だ、大丈夫なのかな?」

「モブマンはあれで結構頑丈。問題ない」


 アイラは随分と冷静です。だけど確かにモブマンならなんとなく大丈夫な気がします。


「駄目だ曇ってきているから僕の切り札も使えない」

 

 ネガメが悔しがっています。どうやら天気が悪いと使えない魔法があったようですね。


 ですがこのままだとまずいですね。こうなったら私がなんとかしてみせます!


「天空の輝き、煌めく矛、その光で闇を穿て――ライトジャベリン!」

 

 私の魔法で光の矛がエンペラーコングへと飛んでいき突き刺さりました。これでどう!


「おお! やった!」

「いや、駄目だよあまり効いてない」


 シルバが興奮気味に声を上げたけどブルックの言う通りあまり効いてないようです。それなら!


「天の鳴動、輝く雷鳴、黄金の鉄槌、迸るあずま、打ち砕け障碍――ブレイクサンダー!」


 エンペラーコングの頭上で電撃が迸り雷が直撃しました。これでどう!


「フンッ!」

「え? そ、そんな――」


 ですが、エンペラーコングは鼻息を吹き出しなんだか自分の頑丈さをアピールするようにポージングを決めだしました。

 

 な、なんて奴なんでしょう。


「そんなラーサの魔法まで効かないなんて」

「…………」

 

 ネガメの驚く声が聞こえました。アイラも言葉が出なくなってるようです。


「――ウホッ!」

 

 そして――何故かエンペラーコングが私をじっと見つめてきて更に鼻息が荒くなってきました。


「な、何?」

「ウッホホォオォオォォォォオオオ!」


 エンペラーコングが叫びます。私を見つめてハァハァと物欲しげな目を向けているように感じられます。


 そしてその太い腕が私に伸びて来て――


「キャァアアァアアア!」

「ウッホホホホォオォオォオオイ!」

「ラーサ!」


 急にエンペラーコングが私を掴み飛び跳ねながら移動を開始しました! そ、そんな私を捕まえて一体何を――

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