第310話 もう一つのZクラスの戦い
sideアニマ
私達は今、暴走した魔獣と対峙しています。眼の前には双頭の獅子がいてギラついた瞳でこっちを見ています。
「ふぇえぇん怖いよぉ~ママぁ」
「お兄ちゃん泣かないでぇ~」
そして近くには逃げ遅れたと思われる兄妹がいて、ガクガクと震えお兄ちゃんの方は泣きじゃくってます。妹の方は頑張って泣かないようにしてそうですが体は震えています。
近くに親はいません。きっと逸れてしまったのでしょう。
こんな状況ですから親と逸れたとしても仕方ないと思う……だからこそ私達が守らないと。
「ちょっとアニマ。確か貴方獣を使役する魔法が使えるのよね? だったらあの魔獣なんとかならないの?」
メドーサがそう聞いてきました。メドーサは子どもたち二人の前に立ち守ろうとしてくれています。
「わ、私の魔法は動物と心を通わす魔法で、直接使役出来るわけじゃないのです。メーテルとシグルはそれで仲良くなれたけど、あの魔獣は――」
私の魔法は勘違いされがちですが、相手を強制的に使役する魔法とはことなります。あくまで心を通わすだけなので使役するには心を通わせる必要があるのです。
ただ同時に動物相手でも心をある程度読み解くことが出来ます。でも、だからこそわかるのです。この魔獣は人と仲良くなるつもりなんてない。ただただ血に飢えていて私たちを餌としか認識していない。
「やっぱり難しそうか?」
「は、はい……それに心を通わすのはそう簡単ではありませんので」
私の肩に乗っている鷹のメーテルや、隣で唸り声を上げて魔獣を威嚇している狼のシグルも小さい頃か一緒に過ごして心を通わせていたからこそ今も私のために抗おうとしてくれているのです。
『グォオォオオォオォォォォォオォオオオ!』
その時、双頭の獅子が揃って雄叫びを上げました。その声を聞いた瞬間心臓を鷲掴みにされたような感覚。こ、こわい。シグルとメーテルも同じ気持ちなようです。シグルは唸り声もあげなくなり、メーテルの翼はカタカタと震えています。
「気をつけろ来るぞ!」
ガロンが叫ぶとほぼ同時に獅子の魔獣が飛びかかってきましした。でも私の足は思うように動かない。
「うぉおぉぉぉおぉおお!」
ガロンが襲ってきた魔獣の前に割って入りその牙を受け止めました。す、すごい――魔法学園に通っている生徒としては逞しいと思ってましたが、魔獣の攻撃を受け止めるなんて。
「ぬぅううぅうぅう!」
だけど魔獣はやはり強い。ガロンが必死に食い止めているけど、少しずつ押されていってます。
「アニマ! 今のうちになんとかならない!」
メドーサが叫んできます。で、でも……私が出来るのは動物たちと心を通わすことだけで……魔獣相手ではそれも役に立たないのです。
「グルウゥウゥウゥウ!」
「ピィ~!」
その時でした、シグルが魔獣に飛びかかり首に噛みつきメーテルが飛び立ち魔獣の頭上から爪で攻撃を仕掛けたのです。
「グゥウゥウウウ――」
獅子の魔獣が唸り声をあげました。さっきのような相手を畏怖させるものではなく嫌がっていそうな声。
メーテルもシグルも恐怖に屈せず私のかわりに戦ってくれている。それなのに私は何をしているの? 私にだって出来ることはある――
「気高き心、燃え上がる勇気、屈強なる精神――通心魔法・ヒートハート!」
私が戦闘で使える数少ない魔法の一つです。これによって私と心の通ったメーテルとシグルの精神が強まりその影響で戦闘能力も上がるのです。
「グルゥウゥゥウゥウウウ!」
「ピィイィイイ!」
シグルとメーテルの瞳に鋭い光。魔獣に対して熾烈な攻撃を仕掛けました。
「助かったぞアニマ! 隙ありだ!」
ガロンが魔獣に向けて突きを放ち、更に蹴りへとつなぎます。魔獣が大きく後ろに下がりました。これは効いている――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます