第308話 思いがけない援軍
――契約者の火傷を確認。保険治療が適用されます。
戦いが終わりまたあの声が聞こえてきたかと思えば、俺の火傷が完治していた。俺も結構無茶したがそれでもこの保険に救われたな。
――蓄積魔力の不足により保健が切れました。以後保険再開まで保険治療は適用されなくなります。保険再開までの期間は凡そ三日です。
引き続き響き渡る声。どうやら今治療した分で一旦効果は切れたようだ。さすがに無制限に傷が治されることはないのか。
それにしても三日かよ。今この状況ではもう保険による治療は期待できないってわけか――
ま、それも仕方ない。助かったのは事実だし、それよりも今は――改めて見るとウルフリーズは倒れたまま動かない。全身も焦げていて完全に気絶した状態だ。
「やったぜリミット!」
思わず声を張り上げてリミットを見た。だがリミットもその場に倒れてしまっていて全く反応を示さない。
「お、おい!」
「リミット!?」
倒れているリミットに俺が近づくとドクトルの声も聞こえてきた。どうやら向こうの治療も終わったようだ。
倒れているリミットをドクトルが診てくれた。一応事情は事前に聞いていたがそれでも心配にはなる。
「どうだドクトル? リミットの様子は?」
「うん。気絶しているだけみたいだ。特に怪我もなさそうだよ」
「そうか。よかった――」
俺はほっと一息ついて胸を撫で下ろした。気絶することは最初に聞いていたからな。そしてリミットの寝顔を見た。
「ムニャムニャ――ワッフル美味しいねぇ」
「……何か心配して損したぜ」
この状況でもこいつは寝言で食い気かよ。とはいえリミットの魔法には救われたな。そうでなきゃ俺一人じゃ魔獣なんて――
「ウォオォォオォオオォォォォオオオオン!」
その時だ。鼓膜が破れるかと思えるほどの叫び声が聞こえ、かと思えば複数の吠える声と足音がこっちに迫ってきた。
「ちょ、さっきの魔獣がさらに四匹も――それに更にヤバそうなのが――」
ドクトルの表情が凍り付く。俺もふざけんなと言いたくなった。一匹でさえ苦労したウルフリーズの群れにくわえて、白い毛並みをした二本足で歩く狼まで姿を見せやがった。
しかも白い狼はこの中ではリーダーらしい。ウルフリーズもそいつが引き連れて来ているようだ。俺らが倒したあの魔獣も、もしかしたらこいつらの仲間だったのかもしれない。
だとしたら――仲間がやられて相当気が立っている筈だ。くそ! こんな奴ら相手に一体どうしろってんだ。
「ドクトルお前、戦えるか?」
「身を守る術ぐらいは心得ているつもりだけど、基本は治療に使う魔法だよ。戦闘向きじゃない」
ドクトルもただ黙ってやられるつもりはなさそうだが戦闘面ではそこまで期待できないかもしれない。俺の保険ももうあてにできない。全くこれが絶体絶命の危機って奴か――
「やれやれ。まさかこんなことになってるとは思いませんでしたよとお答えいたします」
「「え?」」
一体どうしたらいいのか考えていると聞き覚えのある声がし、かと思えばすぐ目の前にメイド姿の女が着地した。
俺とドクトルの声がそろう。なぜならそこに立っていたのは俺たちのクラスのメイリアだったからだ。
「ホワイトファングとウルフリーズですか。動物園で触れ合うには狂暴すぎますねと、ペロッ、お答えします」
「て、ソフトクリーム食ってるんかい!」
俺は思わずメイリアに突っ込んだ。こいつ片手にソフトクリームを持ってぺろぺろしてやがるぞ。
「えっと、君ってそういうの食べるんだね」
「あくまで嗜好品としてです。メイドとして料理の味の確認が必要なこともありますのでマスターが機能としてつけてくれたのですとお答えしますペロッ」
そう答えつつソフトクリームを美味そうに舐めてやがるぜ。
それにしてもメイリアは誘っても一緒には行かないといっていた筈だってのになんでここにいるんだ?
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