第306話 Zクラスの奮闘
side アズール
なんだかとんでもないことになってきやがった。動物園で魔獣が暴れ回ってるらしくマゼルの声も聞こえてきた。
園内もパニックだし確かに放ってはおけないな。俺たちZクラスも園内の客が避難出来るよう動いている。
俺と一緒に動いているのはリミットとドクトルだ。アニマとガロンそしてメドーサは別行動だ。アニマが連れてるメーテルが周囲を探ってくれた結果、二手に分かれたほうが効率よく園内の客を避難させられると思ったからだ。
「ぐわあぁあ! 俺の右腕がぁあああぁああ!」
その時、少し先から悲鳴が聞こえてきた。早くしないとと思い向かうと右腕が氷漬けになった男が地面を転がっていた。
「大丈夫ですか!」
すぐさまドクトルが男に駆け寄った。けが人に対して反応が早いな。
「ブルルルウゥウウ――」
そして男から少し離れた位置に一匹の蒼い狼がいた。牙をむき出しにして腕の凍った男とドクトルを睨んでいる。
俺は嫌な予感がしてすぐに駆け出した。同時に狼も動き出し二人に向けて牙を向けた。
「染め上げる朱、唸れ業火、赤腕の一撃――フレイムナックル!」
俺の右腕が燃え上がり二人に迫る狼めがけて疾駆しそのままの勢いで蒼狼を殴りつけた。攻撃と同時に狼に炎が燃え移る。
「ブロオォォオォオオ!」
こいつ――雄叫びを上げたかと思えば発生した冷気で俺の炎を消し去った。全身が凍てつく感覚。咄嗟に飛び退き距離を置いた。
なんとか氷漬けは免れたが、これがこいつの能力か?
「こいつ――氷を操るのか」
「そいつ、魔獣ウルフリーズだよ! 爪や牙にも相手を凍らせる効果があるから気をつけて!」
リミットの声が耳に届いた。氷の力を持つ魔獣ってことかよ――厄介だな。
「あ、あの狼に引っ掻かれて俺の腕も凍ったんだ! お、おい、これなんとかなるんだろうな?」
腕が凍りついた男がドクトルに聞いた。見るとドクトルは困った顔をしていた。
「傷なら縫ったり出来るけど氷漬けはどうしようも……ただ傷口も含めて綺麗に凍っているからいますぐどうこうはないと思う」
それがドクトルの答えだった。確かに傷の治療と凍った腕を治すのは全く別物だろうしな。
「あなた治療できるの? それならこの子を! 傷が深いんです!」
「わかったすぐいきます」
ドクトルの斜め後方から声が掛かった。少女が倒れていて母親が青い顔をしている。
ドクトルは一旦男から離れ母娘に駆け寄っていく。
「な、治せますか?」
「大丈夫。これなら――」
母親の心配そうな声、それに答えるドクトル。どうやらそっちの傷は大丈夫そうだな。
「お、おい! 俺の腕はどうなんだよ!」
「あんたの腕はすぐにどうなるもんじゃねぇってんだろう。ちょっとは我慢しろ」
全く大の男がぴぃぴぃとうるさいぜ。後で魔法の治療は必要だろうが、あれだけ騒げるなら大丈夫だろうよ。
それに今はそれどころじゃねぇ。ドクトルは他にもいるけが人の手当があるし今は目の前の魔獣をなんとかしねぇと。
するとウルフルーズが大きく息を吸い込み――
「ブルォオォォオォォオオオオ!」
かと思えば凍てつくような息吹を放ってきた。俺は咄嗟に飛び退き元いた場所を見た。
「ちっ! 地面が凍ってやがる」
それぐらい冷える息吹ってことか。まともに喰らうと不味いな。
「ブルゥウゥウォオオォオオ!」
再び狼が吠え俺に向かって突撃してきた。しかもこいつ自分で凍らせた地面を利用して滑ることで加速してきた。
「ブロォ!」
「チッ!」
加速してきたウルフリーズの爪を完全には避けられなかった。俺の左肩が抉れ、そして――凍りついた……。
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