第304話 マネリアの魔法
side アリエル
「アリエル凄いやん! あのフワフワの建物のおかげで、中に入った人無事みたいやで。もっとたくさん作れば怖いものなしやん」
「それが、今の私の力だとあのサイズ一つ作るだけで一杯でそれ以上は、あ、ありえなくてごめんなさい」
「ちゅ~……」
私の魔法を認めてくれたのは嬉しい。だけどこの魔法は魔力の消費も大きいしあまり多くは作れないのです。
折角期待してくれたのに……ファンファンも申し訳無さそうにしてます。
「そっかそっか。せやけど、うちら以外はこれで安心安全やで。十分十分。というわけで今度はうちの出番やな」
そう言ってリアが魔獣に体を向けました。
牛の魔獣は何度か私の作ったシェルターに体当りしてましたがどうやら諦めたのか、標的を私たちに変えたようです。
「あの魔獣。そうとう興奮していて危険なのがありえます!」
「せやな。向こうからしたら折角の狩りを邪魔されて腹たってるといったところやろ。せやけど、頭に血が昇ってる獲物ほど扱いやすいっちゅうもんやで」
そう言ってリアがウィンクをした。興奮状態の魔獣は今にも襲いかかってきそうですがリアは落ち着いて詠唱を紡ぎます。
「金は天下の回りもの、貸す時は笑顔で貸すで、せやけどうちの利息はトイチやで、うちの取り立ては厳しいで覚悟しいや――マジックローン!」
な、なんだか変わった詠唱ですね。ですがありえます! だって身近にもっと変わった詠唱をする、そう兄の存在がありますからそう驚きません。
ただ金融魔法というのは一体……どんな魔法か想像もつきません。ただ魔獣が青白い光に包まれたのはわかります。
「さ、アリエルここからは追いかけっこや! 暫く逃げ回るで!」
「へ? ええぇえええ!」
「ちゅ~!?」
どんな魔法か考えていたらリアがとんでもないことを言ってきましたありえません!
ですが牛の魔獣は鼻息を撒き散らしながら突進してきてます。あたったらとんでもないので逃げるのはありえます!
「アリエル。シェルターが無理やったら足止め出来る魔法何かないん?」
追いかけてくる牛の魔獣から必死に逃げ回っているとリアから問われました。足止め――そうだ!
「ファンファン少しだけ下りてほしいのです」
「ちゅ~!」
任せてとファンファンが地面に着地しました。
「あかん! そんなちんまいの魔獣にぺしゃんこにされてまうで」
「そうならないためにも――白綿の柔らかな床、邪魔する者よ、その足を止め――コットンインターフィア!」
魔法を行使すると地面に下りたファンファンの毛が地面に広がり綿の床が出来上がりました。
「おお、これは寝っ転がったら気持ちよさそや。お値打ちもんやな、ってちゃうやろ! こんなときに床をフワフワにしてどないすんねん!」
「大丈夫です十分ありえます! ファンファン!」
「ちゅ~!」
ファンファンが私の肩に戻ってきました。けれど魔獣は私達が一瞬足を止めた隙を見て猛突進してきました。
しかも角を強化して長大にしています。こんなのはまともに受けたら不味いですありえないです。
「あかん! はよ逃げな!」
「それはありえます。でも大丈夫です。足は鈍りますから」
「何やて?」
リアが目を丸くさせていると突撃してきた魔獣が綿の床に足を踏み入れ、とたんに動きがおそくなりました。
魔獣の足は白綿の床に沈み込み足がとられてしまっているのです。
「これがこの魔法の効果です。フワフワすぎて逆に動きにくいのです!」
「おお。そんな秘密が隠されていたんやな。これはお値段以上の価値やで」
えっと、そもそも私の魔法に値段はついてませんので売るのはありえないのです!
「せやけどこれはうちの魔法と相性が良さそうやな」
「え? そうなのですか? その、そもそもさっきの魔法の効果は?」
「あの魔法はうちの魔力を相手に貸し付けたんや。ただし利息はトイチ。十秒につき一割の負担が伸し掛かるんや。そして今回負担として扱ったのは重み。うちが貸し付けた魔力は五百。その一割の五十キロが十秒ごとに伸し掛かる上、うちのは複利やから時間が経つごとに重みはどんどん増していくで」
「な、なるほど……」
「ちゅ~?」
ファンファンがよくわかってなさそうな声を上げました。私は、えっと、なんだか凄そうなのはわかりました!
「まぁややこしいことは考えへんでとにかくあの魔獣は今どんどん重くなっているところと思ってくれたらえぇで」
「そ、それなら理解出来るのもありえます!」
そしてその効果は次第に顕になって来ました。魔獣は完全に動きを止め何かに押しつぶされたように地面に伏せてしまい鼻息も更に荒くなってきてます。
「もう限界なようやな。そろそろ頃合いやろ。あんたの魔力利息と合わせてしっかり返済してもらうで!」
そうリアが言った途端魔獣を覆っていた青白い光が球体となってリアに吸い込まれました。
かと思えば魔獣がうめき声を上げそのまま気を失ってしまったのです。
「魔力の枯渇やな。それで牛だけに意識を
「…………」
「ちゅ~……」
私はなんと返していいかわかりません。ファンファンも同じ気持ちのようです。
「アリエルもノリが悪いで! うちらが勝ったんやからもっと喜びや!」
「え? あ、そうか! そうです勝ったのです! ありえないけどありえるのです!」
「ちゅ~!」
とにかくこれでこっちの魔獣はなんとか対処できました。後は他の皆は大丈夫でしょうか? いえ、きっと皆なら大丈夫! 勝利はありえるのです!
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