第303話 アリエルと制約

「し、白綿魔法? 綿を生み出す魔法ということですか。ですがくだらないですね。こんなの一体何の役に立ちますの」

「ふわぁ~きゃわいいぃい!」

「ね、ねぇアリエルファンファンに触ってもいい?」

「勿論。触るのもありえるのです」

「ちゅ~♪」


 メナーニャはあまり納得のいっていない感じでしたが、他のクラスメートは綿に包まれたファンファンを可愛いと言ってくれました。


 そうです。ファンファンはやっぱり可愛いくて十分人気がありえるのです。


 何気にメナーニャのグループの子たちもファンファンを見て頬をむずむずさせていました。どことなくファンファンを愛でている皆の輪に入りたいといった様子が感じられます。


 だけどメナーニャを気にして中々言い出せないようですね。


「良かったらファンファンを撫でてくれるとファンファンも喜ぶのです」

「「「「「え?」」」」」


 私がそう告げるとメナーニャのグループの女の子たちが顔を見合わせていました。するとメナーニャが目を細めその子たちに伝えます。


「あら。興味があるなら別に私の事は気にせず行ってきたらいいじゃない」

「そ、そんな興味なんてありませんわ」

「寧ろあんな魔法で得意がるなんて、滑稽ですわ」

「綿を生み出すだけだなんて将来洋服でも作るおつもりなのでしょうか」


 そう言ってこっちを見て笑ってました。ただどこか無理しているようにも感じます。


「フンッ。だいたい綿を扱うだけの魔法なら別にそのネズミがいなくてもいいじゃない。ネズミを教室に連れてくる理由にはならないわ」

「それはありえないのです。私の白綿魔法はファンファンの毛でないと発動しないんです!」

「は?」


 私がそう説明するとメナーニャたちが目を丸くさせました。なんだろう? ファンファンの毛でないといけないのがそんなにおかしいのでしょうか。


「はいはい。貴方達もそこまでにしておきなさい。そんなにファンファンを撫でたいなら休憩時間にしなさい。メナーニャもこれで問題ないわね?」

「……はい――」

 

 やっぱりどこか不満げではありましたが、とりあえずはファンファンが一緒にいることについてメナーニャも理解してくれたようです。当然ありえますが。


「ふむ。しかしその白綿ネズミ限定……つまり制約ね――」


 この件はこれで終わりかと思いましたが先生が呟いた制約というのが気になりました。そこで私は授業が終わった後に先生に聞いてみることにしたのです。


「先生お聞きしても宜しいですか?」

「うん。何だアリエル。まださっきのことで何かあるのかい?」

「えっと無関係ではないですが、先生が先程言っていた制約というのが気になって」

「あぁそれね――」


 私の質問に先生は一つうなずくと教えてくれました。


「魔法というのは制約を掛けることで本来よりも大きな力を生むことがあるのよ。それをアリエルは自然と掛けているんだなと思ってつい口に出たわけ」

「え? 制約ですか? でも私には……」

「あぁ。見たところ無自覚なんだろう。だが、ファンファン限定でしか扱えないというのは立派な制約よ。だからアリエルの白綿魔法はおそらくその分かなり強い。ただし制約というのは掛け続ければ続けるほどそれに縛られることになる。故に自らの制約を破った時には大きなリスクを背負うことにも繋がるの。そういう意味では諸刃の剣でもある。ま、気をつけることね――」





◇◆◇


 そう、それが私の魔法。白綿魔法には制約がある。だけどその分、私の魔法は効果が高い!


「リア。私の魔法は白綿魔法。ファンファンと一緒だからこそ成立する私の武器なのです! だからこの魔法で困ってる人々を助けるのもありえるのです――」


 そして私はファンファンを一つ撫でた後、詠唱を唱えます。


「白き綿、人々を保護し、魔の爪牙から守り抜け――コットンシェルター!」


 詠唱を終えるとファンファンの尻尾の綿毛が肥大化した後、尾から離れ魔獣に怯える人々の近くに落下。


 すると半球状の綿の建物シェルターに変化しました。


「皆さんそこに逃げ込んでください! 魔獣の攻撃から身を守ってくれる筈です!」


 私が叫ぶと近くにいた人々がシェルターに飛び込みました。同時に牛のような魔獣がシェルターに突撃します。


 しかし綿は衝撃を吸収します! 魔獣の攻撃だろうとそう簡単には崩せません! これが私の白綿魔法なのです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る