第302話 アリエルの学園での出来事
sideアリエル
「ファンファン。一緒に頑張ろうね!」
「ちゅ~!」
私が肩のファンファンに呼びかけるとファンファンも任せてと言ってるみたいに返事してくれた。私とファンファンのコンビは完璧でありえるのです!
「それにしてもや。動物園に来てこんなことに巻き込まれるなんてほんま堪忍やわ」
私と一緒についてきてくれているのは今日知り合ったばかりのリアだった。彼女も私と同じ学園の一年生なのです。
「そういえばアリエルはどんな魔法が使えるんや?」
「え? 私ですか。私は――」
リアに魔法について聞かれつい学園での事が想起された――そう。学園に入ってまだ間もない頃の――
◇◆◇
「貴方。教室にネズミなんて持ち込んで一体どういうつもりですの?」
入学式を終えて私はBクラスに入ることになり数日は問題なく授業を受けていたのだけど、そんな私に突然絡んできた子がいた。それが今目の前で眉を吊り上げているこの子メナーニャ・イスメリアだった。
メナーニャはとてもカリスマ性の高い女の子のようで、この時には既にメナーニャを中心としたグループが出来上がっていた。一方で私はあまりクラスに馴染めずにいたのです。私は元々人見知りが激しかったし、だからお昼も見知った顔のアイラたちと一緒にすることが多かったんだ。
でも、それがよくなかったのかな……。
「学園にペットの持ち込みは不可。それぐらい貴方だってわかってるわよね? あ、それともわからないのかしら。確か貴方田舎国のお姫様でしたわよね。だからそういった常識が欠けているのかしら?」
「そんな本当のことを言っては可愛そうですよメナーニャ様」
「そうですよ。これでもマヌーケ王国でしたか? そこのお姫様なのですから報復でもされた、あぁ恐ろしい」
そう言いながら小馬鹿にしたように笑っていた。
「こんなことで報復なんてありえないです。ですが私の国はマナール王国ですからその間違いはありえません」
「ちゅ~!」
「あらそうだったかしら? ま、どちらでもいいでしょう」
ファンファンも怒ってくれていたけどメナーニャの態度は変わらない。それでもこの間違いはやっぱりありえないです。
ただ確か彼女の出身はオドニア王国です。オドニア国の中には何故か私の育った国を下に見て馬鹿にする人がいるらしいのです。その上メナーニャは今の生徒会長の親戚らしくそれを傘にきて取り巻きを増やしているんだとか。
正直私からすればそんな真似をして何が楽しいのかといったところですけどね。全くもってありえません。
「とにかくクラスにそんな小汚いドブネズミがいては迷惑なのよ。さっさと処分するなりなんなりしてくれないかしら」
「な! ありえないです! ファンファンは私の親友です。それにファンファンは白綿ネズミなのです。ドブネズミだなんてありえないし、とてもきれい好きなのですよ!」
「ちゅっちゅ~!」
ファンファンも私の肩で立ち上がり抗議しているようだった。とにかく全てにおいてありえなかったのですが何が楽しいのかメナーニャと取り巻きたちはニヤニヤとした笑みを浮かべて私を見てきます。
私は――同世代の子からここまでの悪意を向けられたことがありませんでした。私は特に何もしてないのにどうして彼女たちはこんなありえないことを――
「授業始めるわよ。貴方達も早く席に付きなさい」
その時、先生が入ってきて私達に注意しました。もうとっくに始業のチャイムはなっていましたから先生が来ることは十分にありえるのです。
「先生。私はこの子に注意していたのですよ。こんなネズミを連れて教室にいるなんて非常識だと。先生もどうしてこんな規則違反を無視しているのですか? もしかしてアリエルが王族だからですか? 学園は完全中立機関の筈ですわよね? 王族だからと特別扱いは許されることではありませんわ」
メナーニャが先生に向けて文句を言った。だけどそれは私にとってはありえない暴論です。
「はぁ、メナーニャ。貴方こそ学園の規則をしっかり読んでいるのかしら? 確かに授業に関係のないペットを同行させるのは許されないことよ。だけどそれが必要と認められれば別。アリエルは魔法を使う時にファンファンの協力が必要なタイプなの。だから一緒に授業を受けることも許可されているわ」
先生が諭すようにメナーニャに言った。全くもってそのとおりでありえるのです!
「つまりアリエルの魔法はそのネズミを使役する魔法ってことですか? だとしたらやっぱりおかしいわ。その程度の魔法しかつかえないで何故Bクラスに入れるの!」
私を指さしてメナーニャが不満を漏らしました。そんなことを言われても私は皆と同じように試験を受けてその上でBランクだったのです。文句を言われるなんてありえません。
それにメナーニャはそもそも思い違いをしています。
「ふむ。これは実際見たほうが早いと思うがな。アリエルは構わないか?」
「はい。わかりました」
実際みないと理解してくれないので私は魔法を使ってみることにします。今日まで実技にしても魔法の基礎を教わるだけだったので本格的に魔法を披露することはなかったのです。
だからメナーニャも納得しないのでしょう。それなら――
「それじゃあファンファン行くよ」
「ちゅ~!」
ファンファンもやる気を出してくれてます。ですから私は魔法を行使するのですありえるのです!
「白綿の海、風に揺らめく綿毛の鳥、重力に縛られぬ自由を――コットンフロート」
私が詠唱するとファンファンの尾の綿毛が肥大化しあっという間にファンファンが綿に包み込まれました。丸っとした柔らかい綿の中でファンファンが顔だけ出している状態でフワフワと浮かんでいます。
「な、何なのこの魔法?」
「これが私の白綿魔法です! ありえますね!」
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