第301話 魔力0の大賢者、皆にお願い
『皆、今動物園で魔獣が暴れて大変なことになってるみたいなんだ。だから僕たちで園内の人が避難するのを手助けしてあげたいんだ』
『これ? マゼルの声? 流石大賢者。念話の魔法まで使いこなせる』
アイラの声が聞こえた。えっと魔法じゃないんだけどね。音を皆に届くよう発してるだけだし、声が聞こえているのも音が届いた位置から特定して注意深く聞いてるだけで物理だし。
『マゼルすげぇな! 魔法でこんな大声だせるなんてよ!』
モブマンの声も聞こえてきたけど、声を大きくしているわけじゃないんだよね。皆以外には聞こえてないはずだし。
『ビロスもマゼルの為に頑張る! 皆を助ける!』
『ありがとうビロス』
『僕の眼鏡魔法で避難経路を導き出せます。任せてください』
『流石だねネガメ。頼りになる』
『私とファンファンも張り切ります! ありえます!』
『ちゅ~!』
『何やこんな声まで届くなんてほんますごいやん。丁度アリエルが近くにいるし一緒にうちも働くで!』
アリエルとファンファンそれにリアの声も聞こえてきた。皆やる気になってくれているようだよ。
『マゼル。当然俺らも動くぜ』
『うぅ、動物園に来ただけなのにどうしてこんな……はぁでも仕方ないか』
『私もドクトルが近くにいたから一緒に動くね~お腹減りそうだから後で何か奢ってね♪』
『もし怪我人が出たら僕が治療にあたりますよ』
『俺もアニマと行動を開始する。しかし相手は魔獣だ。マゼルはともかく全員単独行動は避けたほうがいい』
『シグルやメーテルも張り切ってくれてます。ガロンとも一緒ですから安心してください』
クラスの皆からの力強い返事も届く。良かった何とか上手く行きそうだ。ガロンの言うように単独行動は危険だけど、気配を見る限り皆パートナーを決めて動いてくれてるみたい。
そう皆がいればこの事態だってきっと――ただ一点気がかりなのはラーサたちなんだけど。
『お兄様! 私も協力させてください! クラスの皆も手伝ってくれると言ってます』
僕の考えを読んでるかのようにラーサの声が届いた。強い意志に溢れた声だった。これは僕が心配性過ぎただけかもしれない。
『ありがとうラーサ。だけど皆、絶対に無理はしないでね』
『『『『『
こうして僕たちは行動を開始した。気配を探りながら動いていると――
「主様みっけ♪」
「アネ!」
どこからともなく声が聞こえてきて僕の肩に小さなアネが飛び乗ってきた。
「今日はラーサと一緒じゃなかったんだね」
「それがねぇ。あたしは分体な上、本体から離れているからか時折無性に眠くなるのさ。それが今日だったわけだけど、昼過ぎに目がさめたらラーサがいなくてさ。なんだか面白そうなところに行くって置き手紙があったから追いかけてきたのさ」
そういうことだったんだね。分体だとそういう弊害もあるんだ。
「それにしてもなんだか大変なことになってそうだねぇ」
「うん。魔獣が逃げ出したみたいで暴れまわっているんだ。アネも皆の避難を手助けしてくれると嬉しいんだけど」
「主様がそういうならあたしは従うよ。だけどそのまえに――」
アネが僕の首にしがみついてきた。えっと、これって?
「ふぅ。主様成分補給完了と」
「いや成分って――」
そんな謎の成分が僕にあるなんて!? いや今はそんなこと気にしている場合じゃないね。
「さて、それじゃあ主様の役に立ってみせるかなっと」
「ありがとう。宜しくねアネ」
アネは僕の肩から離れていった。アネも魔獣のアラクネだからね。分体になっても実力は十分だ。
「キャァアアアァアア!」
悲鳴が聞こえた。急いで声のする方に向かう。襲われているのは飼育員の女性だった。後ろには大きめのうさぎのビッグラビットの姿。悲鳴を上げながらもしっかり動物を守ろうとしているのがたくましく思える。そんな彼女を傷つけさせるわけにはいかないね。
「はいそれまで!」
「★▲■※※§!?」
右手に集めた電撃をワニの魔獣に浴びせた。暴走しているとはいえ動物園の魔獣だし気を失わせるに留めたよ。ま、暫くは目が覚めないだろうね。
「大丈夫ですか?」
「は、はい助かりました! 本当にありがとうございます!」
「怪我がないなら良かったです。ただここは危険なのでそのウサギと一緒に安全な場所に避難を」
「は、はい!」
僕は飼育員の女性とウサギを安全な場所に連れて行った。さて、この調子で助けていかないとね――
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