第297話 魔力0の大賢者、遊園地でテンションの高い師匠と合流?

 遊園地で出会ったのはなんとスメリア師匠だった。しかもかなり遊園地を楽しんでるのか頭には遊園地で買ったのか帽子を幾つも重ねて被ってるし、どこで買ったか知らないけどぬいぐるみを大量に抱え、妙なつけ鼻とつけ髭と眼鏡をしていた。いや、それにしてもすごいはしゃいでるというか……楽しそうだね。


 でもまさかこのタイミングで師匠に会うとは思わなかったよ。


「せ、先生どうしてここに?」

「愚問だな。そんなもの決まっているだろう。ここが魔導遊園地だからさ」

 

 何かキメ顔で師匠が答えた。師匠はピーヒャラと音がなりキラキラしててピロピロした物が飛び出てくる笛を咥え鳴らしていた。その恰好と相まってシュールだ……。あと他のお客さんの視線が妙に痛いような気がするんだけど気のせいかな?


「……スーメリア先生自由過ぎるわね」

「え、えぇ……」


 そんな師匠を見て唖然としているアイラとネガメ。師匠は本当はスメリアというのだけど、今は素性を隠すためにスーメリアと名乗ってるんだよね。


「実に楽しそうでありえるのです!」

「ちゅ~♪」


 アリエルは寧ろスメリア師匠の姿を見て喜んでいた。肩に乗ってるファンファンもだね。白綿ネズミ特有の綿毛のような尻尾も愉しそうに揺れ動いているよ。


「しっかし驚いたわぁ。まさかあの有名作家のスーメリア先生と会えるやなんて。学園の先生してくれるちゅうだけでも凄いことやと思うてたんですけど、ほんまもんに間近で会えて感動やわ~」

 

 そう口にしたのは一緒に来ていたリアだった。リアは今日初めてあったのだけど皆ともすっかり打ち解けているよね。そんなリアもどうやら師匠の事は知っていたらしい。作家としてなようだけどね。


「へぇ、私を知ってくれているなんて光栄だなぁ。よし! これからはスーちゃんと呼んでくれていいよ。あ、サインいるかい?」


 そう言って師匠がどこからか羽ペンを取り出した。というか多分精霊が渡した。準備がいいね。そして決行ノリノリだ。うん、師匠……。


「ほんまでっか? う~んでも残念。今日は先生の出版された初版の本を持ってきてなかったんや。せやから次の機会にとっておこう思うねん」

「あっはっは。遠慮はいらないさ。なんなら色紙ぐらい」

「初版の本にお願いやで」

「何ならそのシャツに」

「価値が上がる初版の本でお願いやで!」


 最終的にはリアが師匠の両手をがっちり握りしめて言い聞かせていた。初版にそこまでこだわりあるの! というか師匠の本ってそこまで価値あるんだね。正直知らなかったよ。


「はぁ~クレープ美味しそう」


 リミットが師匠の側で浮いているクレープを見て涎を垂らしているよ。あれも精霊の力で、師匠は精霊に食べさせてもらっていた。それを羨ましそうに見ているリミットなんだけど――


「うむ。このクレープはう・ま・い・ぞぉぉおぉぉおおおッ!」

「「「「「何か巨大化したぁああぁああぁあ!」」」」」


 師匠の悪癖が始まってしまった――精霊を使ってこういう過度な演出をしたがるんだよね……巨大化は実際にそうしているんじゃなくて精霊の力で光を屈折させてそう見せてるだけなんだけどね。しかも口からも何か光を放出しているし。


 というかおかげで周りの目が気になるんだけど!


「おい見てみろよさっきからなんかすげぇぞ」

「魔導カメラで撮っておかないと」

「これもなにかのイベントなのかしら?」


 ほらやっぱり目立ってるよ! しかも師匠は注目されて更に調子に乗っちゃってるし!


「……いい加減遊園地に迷惑」

「少しは反省してくださいね。精霊の無駄遣いも」

「はい。ごめんなさい――」


 最終的にはアイラとイスナに怒られてしょげていたよ。師匠……。


 その後はリミットの希望通りクレープを食べたよ。僕も初めて口にしたけど甘くて生クリームものっていて美味しかったなぁ。


 その後は皆で次にどこにいこうかって話になったのだけどね。


「あの、私、その案内板で見たのですが、動物園に興味があって」


 気恥ずかしそうにアニマが言った。彼女は普段から鷹のメーテルや狼のシグルを連れてあるいているからきっと動物が大好きなんだろうな。


「うむ。そう言えばこの遊園地には動物園とやらも用意されているのだったな」


 ガロンも頷いてそう言っていた。確かに僕も見た気がする。この魔導遊園地はかなり広いからね。色々な施設が一緒になっているようなんだ。


「動物園……私も見てみたいかも」

「お兄様アンも興味あるようですし、私も見てみたいです」


 ラーサは友だちのアンと一緒に動物園を見てみたいようだね。


「ま、たまには動物を眺めるのもいいかもな」

「乗り物もちょっと疲れてきたしね」

「それなら。これから動物園に行こうか」

「「「「「「さんせーーーーーーい!」」」」」」


 こうして僕たちは動物園に行くことになった。師匠もノリノリでついてくる気みたいだね。本当楽しんでるなぁ――

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