第296話 魔力0の大賢者、魔導コースターに乗ってみた

 途中、魔導コースターも乗れそうだったから皆で並んだよ。魔導コースターはレールの上を高速で走る乗り物なんだけど、コースに特徴があってスリルが楽しめるんだ。


 魔導コースターに乗っていざ出発! 最初はゆっくりと進んでいてカーブしたり速度を上げたりしていく。途中で宙返りも挟んだりね。


「う、うぉおっぉおおおおおおぉぉっおおおぉ! 死ぬ死んじまうよぉぉおおおぉおおおおおおおッ!」


 後ろでモブマンの悲鳴が聞こえてきた。これは、そ、相当怖がってるみたいだね。


「あ、ありえる、ありえ、あり、ありえなぃいぃいい! キャァアア!」


 今度はアリエルだ。なんだか凄く叫んでるね。でも悲鳴からは怖いだけじゃなくて楽しんでるって感じもするよ。

 

 ちなみにファンファンは危険だからと係員の女性が預かってくれてる。見ると係員の腕の中で腕を上げてここだよってアピールしているね。


 猛スピードだけど僕の動体視力なら確認出来る。


「きゃはははははっ! すっごい速い速い速~~いぃっ!!」


 中でも一番テンションが高いのはビロスだったよ。凄い楽しそうに笑ってたなぁ。


「ふふふっ、このチャンスに大賢者様に、うふふ――」

「ひ、姫様お気を確かに! 絶対に大丈夫ですから、ヒッ、ひぃぃぃいいい!」


 クイスとイスナが乗っていたあたりから何か呟くような声が聞こえてきたけど、何よりクイスが悲鳴を上げているのが意外だったね。こういうのが苦手なのかもしれないよ。


 そして魔導コースターが終わって戻ってきた後――


「ふぅふぅふぅ、ふぅふぅふぅ……」


 モブマンは汗びっしょりで息が荒かったよ。何だか顔が真っ青になっているしよっぽど怖かったんだね。絶叫系が好きだっていう人もいるようだけどやっぱり苦手だという人も居るわけだよね。


「お兄様。次はどう致しましょうか?」

「う~ん。そうだね……」


 ラーサがウキウキした様子で聞いてきた。ラーサも遊園地を楽しんでそうで何よりだよ。


「ま、マゼルぅ。次はもっと落ち着いたのにしようぜ」

「モブマン。よっぽど怖かったんですね」


 ネガメが眼鏡を直しながらちょっと呆れ気味に言った。確かにあそこまで怖がるなんてちょっと予想外だったかもしれないね。


「それなら魔導観覧車がいいかもしれない」


 アイラが観覧車を指さしながら言った。それはいいかも! さっき見た時から乗ってみたかったんだよね。


「へぇ観覧車かぁ。いいですね。乗りましょうよ先輩!」


 フレデリカが目を輝かせて言ってきた。観覧車好きなのかな?


「――冗談が過ぎますね。大賢者様と二人きりで乗ろうなどと――」

「そうですよフレデリカ――お兄様を独り占めだなんて……うふふ。それ相応の覚悟がおありなんですよね?」

「待って待ってラーサ! 目が怖いよ!」


 イスナとラーサがフレデリカの両隣に立って睨みを利かせていた。それを見たアンが止めに入ってるよ。二人とも落ち着いてほしいんだけど……。


 そういえばいつもイスナの側で控えているクイスは……あ、何かぐったりしてるよ。モブマンと一緒で彼女にも魔導コースターの疲れが見えるよ。


「あはは! じゃあ、僕が皆さんと一緒に乗ろうじゃないか! それで解決!」


 シルバが自分を指さして女の子たちにアピールしていた。


「誰も聞いてないのだよ」

「ガーン!」

「あはは。どんまいだよ」

 

 グリンの言葉にショックを受けてるシルバだけど、ブルックに慰められているね。


「たく。全員でじゃんけんでもして決めればいいだろう」

「それがいいじゃない。アズールにしてはいいアイディアね」


 アズールが観覧車に乗るためのいい案を教えてくれたよ。メドーサも感心してるね。それから皆で集まってじゃんけんをしたよ。


 その結果――僕と乗るのはグリンとブルックとシルバになったよ。


「ノーーーー! 何でよりによって全員男ッ!?」

「えっと、嫌だったのかな?」

「いえ。先輩と乗れるなら光栄なのだよ。シルバのことは気にしなくていいのだよ」

「わぁ。近くで見ると高いねぇ。これに乗れるんだぁ」


 何故か急に落ち込んでしまったシルバのことを気にしたら、グリンが気にするなと言ってきてくれたよ。ブルックは観覧車に乗れるのが凄く嬉しそうだよ。


 そして僕はみんなと一緒に観覧車へと乗ったんだ。皆それぞれ違う表情をしていて見ていて楽しかったな。


 そして降りた後はリミットが食べたいと言っていたクレープを食べに言ったんだけど――


「あっはっは! 奇遇だな我が弟子、と言ってもおかしくない大賢者マゼルよ!」


 そこにいたのがスメリア師匠だった。て、なんでここに師匠が!?

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