第291話 魔力0の大賢者、皆と改めて杖を見る
ちょっと失礼が過ぎた店員が奥に行ってから改めて皆が杖を見学していた。
「う~んこれなんてどうか、ゲゲッ!?」」
アズールは先端に赤い石がはめ込まれた杖を見て唸っていた。気になってはいるようだけど価格を見て驚いているね。
「リミットは何かいい杖ありました?」
「え? わ、私は。どうかなあはは……」
向こうではアニマとリミットが会話していた。アニマは色々手にしてて杖に興味があるようだけどリミットからはどことなく戸惑いを感じるんだよね。
「マゼル~この杖どう? ビロス似合ってる~?」
今度はビロスが杖を持って僕に聞いてきた。当初ビロスは杖が必要ないと言っていたけど結局は僕たちと見てみることにしたようだね。
でも杖が似合うってどう言えばいいんだろう? う~ん今のビロスは可愛いし何を持っても様になるけどね。
「様にはなってると思うよ。でも効果は」
「本当!? マゼル大好き――」
「そこまでですビロス」
「また抱きつくつもり」
ビロスが両手を広げたところでラーサとアイラが割って入ったよ。
そしてビロスといろいろ話しだした。
「マゼル先輩。私にこの杖は似合うと想いますか?」
「わ、私も見てもらっていいですか?」
ビロス、アイラ、ラーサが話している間にフレデリカとアンが杖を持って聞いてきた。えっと何で皆して僕に杖が似合うか聞いてくるのかな?
「よく似合ってると思うよ。ただ杖は見た目より実際の効果も大事だと思うからそこも見極めないとね」
「さすが先輩です!」
「勉強になります」
フレデリカとアンがキラキラした目で言った。そこまで大したことは言ってないきもするんだけどね。
「マゼル先輩は杖は決まったのですか?」
グリンに聞かれた。僕の杖か。残念ながら僕に杖は使いこなせないからね。
「う~ん。杖は僕には似合わないかなと思って」
「流石マゼル。やっぱり店売りの杖じゃマゼルのお眼鏡にはかなわない」
「おお。やっぱり大賢者だけあるな」
「僕たちとは見ている視点が違うのですよきっと」
「え?」
単純に魔力もないし杖を使っても意味がないからというニュアンスだったんだけど、なぜかアイラやモブマン、ネガメから勘違いされてしまったよ!
違うからそんな失礼な意味じゃないから!
「むむむっ、マゼルの周りに女の子や男の子までうぅ」
「姫様。やはりここの杖では精霊は馴染まなそうです」
あれ? 何か視線というか、圧を感じるんだけど――
こんな感じで皆色々杖は見たけど今日のところは購入せずに一旦保留という話になったね。
「杖選びは中々難しくてありえます」
「ちゅ~」
店を出てそうそうアリエルが言った。肩の上ではファンファンが鳴いている。
「ラーサも結局杖を選ばなかったんだねぇ」
アネがラーサに言っていた。確かにラーサも色々見てはいたんだけどね。
「どれもいいと思ったのですが学生用の中ではあまりピンッと。で、ですがお兄様また見たくなったら一緒に来てくれますか?」
「ハハッ。勿論ラーサの頼みならいつでも付き合うよ」
「嬉しい。お兄様大好きです!」
ラーサが嬉しそうに飛び込んできたよ。妹に慕われるのは光栄だけど大分成長したからやっぱり照れくさいね。
「杖は既製品を買うのも手やけど素材を持ち込むって手もあるで。確か学園では素材を探す授業もあるってうち聞いたことあるんや」
今日知り合ったゴールドが皆にそう説明していた。そういえば今後は外での授業もあるって先生が言っていたね。
「店ではゴールドさんのおかげげ助けられたね。本当ありがとう」
ゴールドが割って入ってくれたおかげで皆も気持ちよく杖が見れたからね。感謝しないと。
「えぇんやで。でもゴールドさん言うのはこそばゆいわ。うち、マネリア・ゴールド言うねん。親しい間ではリア言われてるからそれでえぇよ」
話してみると気持ちのいい子みたいだね。
「うん。わかったよリア」
「リア、宜しく」
「宜しくねリア~」
僕もリアと呼ぶことにして皆も続いた。すぐに打ち解けることが出来たようだね。
「はは、随分と楽しそうだな。俺も混ぜてもらっていいかい?」
店の外で皆と話していると、聞き覚えのない声が割って入った。
振り返ると蛇のような目をした男が近づいてきていた。上背は高い。かなり引き締まった体をしているね。
僕はこの男を知らない。だけど――一緒についてきている人物には見覚えがあった。トイレで先輩に暴力を振るっていた男だけど、今はなぜか怪我してるようだね……。
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