第288話 魔力0で最強の大賢者、街でバッタリ妹と再会

「お兄様!」

「はは。ラーサも街に出てたんだね」

 

 ラーサが駆け寄ってきて僕に抱きついた。ラーサも大分大きくなってきたからちょっと照れくさいけど妹にこうやって慕われているのは兄として嬉しい。


「おいおい。この子がマゼルの妹? すげぇ可愛いな」

「まぁ可愛いだなんて。お兄様この御方は?」


 ラーサがニコニコしながら僕に聞いてきた。可愛いと褒められたのが嬉しいんだな。可愛いのは間違いないからね。


 ただアズール……愛妹をどういう目で見ているのかちょっと気になる。


 いや、そりゃこれだけ可愛いラーサだしいずれは巣立つ日も来るとは思っているけど、それはきっと今じゃないよ!


「アズール責任を持ってラーサを守れる自信はあるんだろうね!」

「いや何言ってるんだマゼル! わけわかんねぇよ!」

「……マゼル落ち着く」


 アズールが戸惑っていたしアイラにも宥められてしまった。ちょっとラーサの事となると我を見失っちゃうところがあるよ。気をつけないとね。


「やれやれご主人様はラーサに甘いねぇ」

「アネ。ラーサの事を守ってくれていつもありがとうね」

「……えっとマゼル様。この方が妹様でえっと肩の方は?」

「えっとラーサは妹で肩に乗っているのはアラクネのアネの分体で――


 イスナがラーサとアネの事を聞いてきたから答えたよ。確かに皆初対面だもんね。それに――


「皆も元気そうで何よりです。ラーサとは良くして頂いているみたいで兄として感謝致します」

「いえそんな! 私達こそ以前は助けて頂きありがとうございます!」

「あぁ大賢者マゼル様。覚えていて下さるなんて光栄至極でございます!」


 先ずアンとフレデリカが声を掛けた僕に反応してくれた。二人とも前は魔狩教団相手に怖い目にあったんだよね。


 でも今はすっかり元気になってるようでよかった。一緒に街に来ているということはラーサとも仲良くしてくれてるようだし。


「マゼル先輩。その節はありがとうございました」

「ま、まぁその時の事はお礼を言わなくもないかな」

「シルバ駄目だよ。もっとちゃんとしないと」


 続いて声を掛けてくれたのはグリン、シルバ、ブルックの三人だ。皆今年から新設されたという幼年学園の生徒なんだよね。


「女生徒だけではなく男子生徒にまで慕われるマゼル様……素敵ですがムムムッ!」

「姫様、心の声がダダ漏れですよ」


 あれ? 背中に何か突き刺さるような視線を感じるけど、き、気のせいかな?


「皆も杖を見に来たの?」

「は、はい。学園都市にはかなり良い杖があるとも聞いたので」

「よい杖職人を抱えていると評判なのだよ」


 アンとグリンが答えてくれた。やっぱりこれだけ大きい都となると品揃えも豊富で品質も確かなんだろうね。


「マゼル。ここは店も大きいし皆で入れそう」

「うん。そうだね」


 僕たちがやってきた杖の店は結構大きな店だ。ただ何となく高級感も漂ってそうだけどね。


 とにかく皆で中に入ってみた。店には先客がいたけど何となく年が一緒ぐらいの女の子だなって思ったよ。


「いらっしゃいませ……チッ、何だよまたガキかよ」

「え?」


 店に入ると金髪の店員が接客してくれた、かと思ったけど僕たちを見るなり舌打ちして腕組みしだしたよ。


 何かあまり歓迎されてない様子だ。う~ん気持ちの良い接客態度ではないね。


「あの、杖を見ても?」

「チッ――」


 質問したけど店員は舌打ちしてそっぽを向いてしまった。その態度に皆の顔も曇る。


「あんなやる気の無いやつ放っておいて見ようぜ」


 するとアズールが中に入って杖を取った。確かにあまり気分の良いものじゃないけど特に断られてもいないし先客も杖を手にとってみてるしね。


 とりあえず見させて貰うことにしたよ――

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