第286話 メイリアは反抗期?
sideメイリア
私は休日になり学園にやってきました。マスターの研究室に向かいます。
「何だメイリア。どうしたんだい?」
「……定期的に来るよう言っていたのはマスターだとお答え致します」
私はマスターであるアイパー・ゲシュタル様と会いお話致しました。
マスターは苦笑気味にコーヒーを口にしております。何か不満があるのでしょうか。
「折角の休みじゃないか。僕のもとに来てくれたのは嬉しいが他に予定はなかったのかい?」
「――お答え致します。クラスメートに街に出るよう誘いを受けましたが必要性を感じないのでお断りいたしました」
「必要性ねぇ――」
マスターがカップを皿に置き椅子に腰を掛けました。私の目をジッと見てきます。
「私の顔に何かついてますでしょうか?」
「いや。メイリアさ、そういう場合は僕のことより出かけるのを優先していいのだよ」
「――その行動に何か意味があるのでしょうか? とお答えします」
「それは質問だよ。でもまぁ、これはもしかして喜ぶべきことなのかな?」
マスターが笑いながら言いました。
「嬉しいのですか?」
「そうだね。メイリアが本当にただ命令を聞くだけのゴーレムなら私の言いつけを守ることを優先し大人しく誘いに乗ったことだろう。そうしなかったのはそうだな――反抗期とも言えるのかな?」
「――反抗期とは精神発達の過程で反抗的な行動を取る人間独特の行動原理です。私には当てはまらないとお答えします」
「ふむ。つまりメイリアは無意識にそれを実行しているわけか実に興味深いね」
どうにも話が噛み合いません。私にはマスターに反抗する理由がなくそのような気持ちなど勿論存在しません。
「怪訝そうだね。表情が豊かになってきたな。それも興味深い進化……いや成長か」
マスターが再びコーヒーを口に含みました。
「メイリアもコーヒーを飲んでみるかい?」
「私には必要のないものとお答えします」
「君には味覚が備わっている。嗜好品になる程度だが口にしたものは内部で処理も可能だ。確かに人間のように食事で栄養を確保しなくても生きてはいけるけどね」
「マスター。その表現には語弊があります。私はゴーレムであり生物とは異なります。私にあるのは活動を続けるか停止させるかのどちらかでしかなく生物における生死という概念は存在しないとお答えします」
「そういうところはまだまだ硬いね。まぁとにかくだ――メイリアはもっと素直になればいい。それと食事は生き死にだけじゃなく楽しむという要素もある。メイリアはもっと自分の気持ちに素直になり生きることを――今の君流に言えば活動を続けることをもっと楽しみなさい」
それがマスターの希望のようです。マスターがそう願うなら従いたいとは思いますが――気持ちなどと言われても私はただのゴーレム。その行動原理は術式によって定められているに過ぎないのです、と私は私にお答えします――
◇◆◇
「うわぁ、人が一杯だねぇ」
「休日は平日よりも人が多い。迷わないよう注意が必要」
アイラが僕の声に反応してくれた。それにしても見渡す限り人、人、人だよ。僕が生まれ育った町も賑やかだったけどそれでもここまでではなかったから驚きだ。
転生前に行った王都だってここまでじゃなかったしね。確かになれないと迷っちゃうかもしれないよ。
「街に来たはいいけどこれからどうしようかしらね」
メドーサが皆に問うように言った。確かに街に遊びに出てきたはいいけど僕もまだこの都市については不慣れだから街について詳しくないしね。
「――それぞれ行きたい者同士でグループになって行動するのがいいと思う」
「別行動ということだね。でも折角だから食事は揃って楽しみたいよね」
アイラが答えるとドクトルから提案が。食事は皆で摂った方が楽しいからそれがいいと思うね。
「それでは待ち合わせ場所を決めてお昼になったら集合しませんか?」
イスナが言った。……思ったんだけどなにかすごく距離が近い気がする。
「それがいいと思う。それに午後に予定があうなら皆で見たり遊んだり出来るスポットに行くのも手。おすすめは多くの魔導遊具が備わった魔導遊園地」
『魔導遊園地!?』
アイラの提案に僕たちの声が揃った。な、なにかすごく楽しそうな響きに思えるよ。勿論そんな施設は転生前にはなかったからね――
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