第277話 魔力0の大賢者、昼休みを終える
「はぁ、はぁもう何でこんなに走らないと駄目なのよもう!」
息を切らしてメドーサが愚痴を零していた。本校舎を出るときには昼休みも終わりに近かったから皆で走って戻ったんだよね。
「しかし流石マゼルだな。涼しい顔で息切れもしていない」
「それも強化魔法の賜か?」
「ハハッ……」
笑ってごまかすのが精一杯だったよ。体力には自信があるというだけの話なんだけど皆全速力で戻って来てて汗だくになってるからね。
とにかく僕たちはそのまま旧校舎の教室に戻ったんだ。
「あ、シアンちゃん。はいこれお土産♪」
リミットが売店で購入したサンドイッチをシアンに渡していたね。ハニーの蜂蜜を利用したハニーサンドで売店では大人気の品だったんだ。
「……あり、がとう」
シアンがリミットにお礼を言っていた。決して口数は多くないけどそれでもだいぶ打ち解けて来てる気がするよ。
「はい。メイリアちゃんにはこれ」
リミットはメイリアにもお土産を購入していた。ハニークッキーだね。
「……私はゴーレム。食べ物は必要ないとお答えします」
「えぇ? 食べること出来ないのメイリアちゃん?」
「……食べたものを分解してエネルギーに変換可能とお答えしますが別にそんなことしなくても」
「ならよかった~やっぱり美味しいもの食べないと楽しくないもんね!」
「…………」
結局メイリアはクッキーを受け取っていたね。食べ物を通したこういったコミュニケーション能力の高さはリミットの強みだと思う。
「ふぁぁ……」
僕たちが教室に戻った後、イロリ先生が生欠伸しながら教室に入ってきた。
「……マゼルちょっと表にある箱を運んでくれ」
先生から頼み事をされたね。廊下に出ると大きめの箱があった。そこまで重くはなかったからすぐに運んだけどね。
「席に戻っていいぞ」
荷物を運び終えた後、先生に言われ僕は席に戻った。皆イロリ先生が持ってきた箱に興味がある様子。
「先生それなんですか?」
皆の気もちを代弁するようにアズールがイロリ先生に聞いた。僕も勝手に中を見たりは出来なかったからちょっと気になるね。
「……この中にはお前たちの制服が入ってる。これから配るから取りに来い」
アズールの質問にイロリ先生が答えた。制服――そう確かに僕たちは本校舎の皆と違ってずっと私服だった。
だけど、どうやら僕たちにも制服が支給されるようだね。
「俺たちにも制服が配られるのか」
「てっきりないかと思ったわよね」
「先生。でもどうしてこのタイミングで?」
ガロン、メドーサ、ドクトルが順番に口にした。イロリ先生は頭を摩りつつ僕たちを見て制服を取り出す。
「このクラスは今年新設されたばかりだからな。理由としては発注が間に合わず遅くなったということだ」
制服を見せながら先生がそこまで言った後、尤もと続け、
「実際は小テストが終わって急遽手配したんだろうな。お前らはそれだけ期待されていなかったってわけだ」
それが先生の答えだった。つまり僕たちは小テストで結果が出せず退学になると思われていた。だから制服は必要ないと、そう判断されていたわけか。
「チッ、兄貴といい腹立つぜ」
アズールが頬杖を付き愚痴を零していた。兄……兄弟がいるようだね。
「とにかく配るぞ」
そしてイロリ先生から僕たちに制服が配られた。その後は着替えて不具合がないか確認するよう言われたので一旦教室を出て着替えてから戻ったよ。
「皆似合ってるね」
「うむ。マゼルも似合っているぞ」
「は、はいとても良く、に、似合ってると思う!」
「ガウ」
「ピィ」
何かちょっとしたお披露目会みたいになってしまったね。でも本当みんなよく似合ってる。
「シアンちゃんもメイリアちゃんも似合ってるよ」
「…………」
「こんなのも見た目の変化しか影響を与えないとお答えします」
こうして皆が着替え終わり改めて席についた。先生が問題ないかと聞いてきたけどサイズ的にもピッタリだったよ。
でもこうして制服に袖を通すとより身が引き締まる思いだね!
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