第278話 魔力0の大賢者、制服を支給される

「全員制服は問題ないな」

「おう! 何かこれで本格的に学生生活が始まったって気がするな」


 アズールがとても張り切ってるよ。勿論テストの時だって皆頑張っていたけど制服が支給されて気合いが入ったんだね。


「そもそもこれまでずっと自習だったもんね」

 

 半目でメドーサが言った。確かにテストまでは自習だったけどね。


「先生。今後はその……授業ありますよね?」


 ドクトルもイロリ先生に確認している。テスト期間は教科書にヒントもあって何とかなったけど日々の授業は流石に自習だけというわけにもいかないだろうしね。


 それにイロリ先生は別に無責任でやってたわけじゃないと思うししっかり授業してくれるんじゃないかな。


「私はご飯さえ食べられれば自習でもいいけど」

「それはちょっと……」

「ガウ……」

「ピ~……」


 リミットの言葉にアニマが苦笑していた。メーテルとシグルも微妙な感情のこもった鳴き声を上げている。


「全く今さっきお昼を食べたばかりだというのに本当にリミットは食い気が勝っているんだな」


 嘆息混じりにガロンが言う。たしかにお昼を摂ってきたばかりだったね。


「一応給金を貰ってる身だからな。最低限の授業はする。だが今後は俺以外にも授業を受け持つ担当が来ることもある。それに魔法学園は他クラスとの合同授業や校舎外での授業も多いからな」


 イロリ先生がそう説明してくれたよ。どうやら座学は基本校舎内での授業になるけど魔法の実技に関する授業は外や特別な施設で行うことが基本なようだね。


「まぁ授業は適当に慣れていけ。それと来週始めには今年から出来た幼年学区の生徒を含めた全校集会がある。そのときに上級生からの挨拶もあるそうだ。たく面倒だな」


 そういってイロリ先生が顔をしかめた。でも幼年学区か。ラーサが入ってる学区だね。


「まぁそんなわけだ。以上、今日も自習だ」


 締めの一言で全員がずっこけそうになった。


「そりゃないぜ先生」

「今後授業やるにも色々準備がいるんだよ。たく本当に面倒だ」


 そう言ってイロリ先生が教室を出ていった。一見面倒くさそうだけど準備はしっかりしてくれるんだね。


「で、結局自習で今日も終わったわけだ」

「まぁ明日からは本格的な授業も始まるだろう」


 午後の授業時間も終わりアズールが後頭部に腕を回しやれやれといった様子を見せた。ガロンは明日からの授業に期待しているみたいだね。


「お腹すいた~」


 リミットはぐてぇ~となってお腹の虫を鳴らしていた。


 そういえば今日の夕食を何にするか考えないとだね。


「今日も何か狩って来ようか?」

「食堂に行くという手もあるけどね」

「しかし門限があるからな」


 ドクトルからまた食堂に行く提案がなされたけどガロンの言うように門限も考えないといけないからね。


「食堂もいいし狩った食材で料理もいいなぁ~そうだ! 食堂にいく時に一緒に狩りもするのは?」

「もうリミットちゃんってば」


 リミットの発言にアニマが笑っていた。全体的には今日は自炊でいいかなという空気だ。


 米も残ってるしそれでもいいかもね。それならこのまま狩りに行く感じかなぁ、と思っていたのだけど――何か足音が近づいてきているよ。

 

 どことなくリズミカルな足音だった。一緒に鼻歌も口ずさんでるようだけどえっとこれって。


「ララ~やぁマゼル僕は遂にやってきたよ! そう大親友であり後の義弟でもありそして僕の永遠のライバル大賢者マゼル君に会いにね!」


 そう口にしながら先輩でもあるヘンリー王子が薔薇を飛ばしてきたわけだけどね――

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