第262話 魔力0の大賢者、食堂に入る

「わ~食堂は盛況だねぇ」


 皆で本校舎の食堂に入ってみたけど中は生徒で溢れていた。これは早めに席を押さえておかないといけないかもね。


「ふわぁいい匂いだ~よ~し食べるぞ!」

「いや食べるのはいいけどお金大丈夫なの?」


 張り切るリミットをメドーサが心配そうに見ていた。食堂で食べるのにもお金は掛かるからね。


「なぁこれ注文ってどうやるんだ?」

「あぁ、あそこにある券売機という魔導具を使うんだよ」

「券売機?」

 

 アズールの疑問にはモブマンが答えていた。指さした方向には箱型の何かが置かれているね。


「えっとあれで何が出来るのですか?」

「ピィ?」

「ガウ?」


 券売機が何かアニマは疑問に思ってるようだね。メーテルとシグルも首を傾げていた。


 僕も初めて見る道具だからちょっと気になるね。


「僕も最初は驚いたものですけど――」


 空いた券売機に向かうとネガメが使い方を教えてくれた。券売機にはメニューが書かれた出っ張りがあった。


「欲しいメニューのボタンを押すとこうやって食券が出てくるので、これをつかって食事を用意してもらうんですよ」

「へぇ~凄いねこれ!」


 やり方を聞いて驚いた。出っ張りがボタンというらしいね。僕が生きていた世界ではなかったし

なんだかわくわくするよ。


「何にしようかな……」

「おすすめはハニーセットですよ大賢者様」


 いろいろなメニューがあって目移りしてしまうなと思っていると、可愛らしい声で呼びかけられた。


 見るとやっぱりハニーだったよ。そういえば今は食堂で働いているって言ってたもんね。


「ハニー元気そうだね」

「はい! 大賢者様もお元気そうで良かったです。全くここでは見られなかったんで」


 うん。小テストが終わるまでは本校舎にこれなかったからね。


「うん! これからはマゼルもこれるマゼル凄い!」

「あははそうだね~」


 ビロスがそうハニーに教えていた。ビロスとハニーはずっといっしょに過ごしてきただけあってなかよしだよ。


「――か、可愛い……」


 ん? 何かドクトルがハニーを見たまま固まってるね。何かつぶやいているし。


「どうかしたの?」

「あ、いや、なな、なんでもないんだ。ハハッ――」


 僕が聞くとドクトルが随分と慌てた様子を見せた。なんだろうね。


「ところでハニーセットってやっぱり蜂蜜の?」

「はい! 私の故郷の料理をまかないで出してみたら大好評でメニューに加えることになったんです!」


 なるほどね。ハニーセットはまさにハニーが持ってきた蜂蜜をふんだんに取り入れた料理らしいね。


「蜂蜜って甘くならないのか?」


 アズールがハニーに聞いていた。蜂蜜を使うから甘いってイメージが湧くんだろうね。


「うん。いろいろな種類の蜂蜜を組合せてるから甘いだけじゃないよ。あ、でもデザートはしっかり甘いよ」

「私そのハニーセット! それと――」


 説明を受けてリミットはハニーセットを頼むことに決めたようだね。


「それじゃあ僕もそのハニーセットを」

 

 ドクトルがハニーの方をチラチラみながらハニーセットの券を出してたね。


 値段も手頃だし結構人気みたいだ。僕たちも頼むと品切れになっちゃったよ。


「……私たちは普段食べてるから大丈夫」

「ハニーセットは美味しくてありえます! 皆に食べて欲しいです!」

「ちゅ~」

「私も今日は別なのを頼んでみますね」

「姫様と同じものを――」


 皆がそう言ってくれた。どうやらハニーセットを僕たちZクラスの皆が注文するまで待っててくれたみたいだね。


「うむ、確かにこれは美味いな」


 ガロンが料理を口にして美味しそうにしていた。内容はハニーシチューにハニーパン、それにハニードレッシングの掛かったサラダとハニータルトだね。

 

「うん。本当に美味しいよ凄いねハニーさん!」

「え? はは、これは食堂の皆が作ってくれたものだし私だけの力じゃないよ~でも喜んでくれて嬉しいな」

「はう!」


 ドクトルの感想にハニーがお礼を言っていたね。それにしてもドクトル胸を押さえてどうかしたのかな?


「ねぇドクトルってもしかしてあれじゃない?」

「あん? あれってなんだよ。てかマジで美味いなこれ」

「……聞いた相手がわるかったわね」


 何かメドーサがアズールに話しかけていたけど食事に夢中みたいだね。そんなアズールにメドーサが呆れたような目を向けていたよ。


「メーテルとシグルも気に入ってるみたい」

「ガウ」

「ピィ~」


 アニマから分けてもらってメーテルとシグルも美味しそうにしているね。


 それにしてもこうやって皆で食べているとやっぱりより美味しく感じるね――と僕たちが食事を楽しんでいると僕に向けてなにかの容器が飛んできた。


 キャッチしたけど、手にベチャッとドロッとした液体が付いたよ。


「おっとわりぃ、つい手が滑って――」


 見ると別な席の男女がニヤニヤしながら全く感情のこもってない謝罪をしてきたよ。


 さっきの連中もそうだけど一定数こういう生徒もいるようだね――

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