第260話 魔力0の大賢者、昼休みを利用して皆で本校舎へ

「やっと着いたわね……」


 メドーサがげんなりした顔で言った。途中かなりへばっていたからだろうね。


 だけどアニマの提案でシグルに乗せてもらうことで大分楽になったとは思う。


「シグルありがとうね」

「ガル」


 メドーサがシグルの顎の辺りを擦って労っていた。シグルは普段大人しくて今も軽く反応したぐらいだけど、目はちょっと細めてるから気持ちいいのかもね。


「全くお前はもう少し体力つけた方がいいぞ」

「そうだな。朝のランニングからはじめて見るのはどうだ?」


 アズールとガロンがメドーサに提案するも彼女は苦み走った顔で首を横に振った。


「いやよ。別に筋肉とかつけたくないし大体魔法使いでそんなに体鍛えてるあんたらがおかしいのよ」

「いや、まぁそこはおかしくはないと思うけどね」

 

 頬を描きながらドクトルが反応する。魔法使いとは言え、ある程度鍛えておいた方が健康にもいいとは僕も思うけどね。


「てか、ドクトルだって細いのにわりと体力あるのね」

「……うん。父さんと一緒に遠方の村に行ったりすることも多かったからね」


 ドクトルがメドーサの疑問に答える。歩くのには慣れてるということみたいだけど、今答える時少し間があって表情に影が落ちたような――


「アニマもそんなに苦労してなさそうだし」

「シグルやメーテルと一緒に散歩したりすることが多かったからかも」

「マゼルは……聞くまでもないわね」

「え!?」


 なにか僕だけ当たり前みたいな対応だよ! いや確かに苦ではないんだけど。


「いいから早く食堂に行こうよ。学食♪ 学食♪」


 リミットが校舎を指さしてせっつくように言った。本当に食べるのが好きなんだね。


「ふむ。昼休みの時間は限られているしな。急いだ方がいいのは確かかもしれない」


 ガロンが言った。確かに時間は有限だからね。


「おいあいつら……」

「何で無能なZクラスの連中がここにいるんだよ」

「嫌だ、制服も支給されてないみたいよ」

「流石ゼロのZクラスだな」

「よく恥ずかしげもなくここにこれるぜ」


 リミットと本校舎に入った僕たちだけど、生徒たちがこちらに気づいてひそひそと話し始めた。

 

 ニヤニヤと笑ったり小馬鹿にしたり明らかな嫌悪感を示したり様々だけどいい印象を持たれてないのは確かなんだと思う。


「何よ感じ悪いわね」


 メドーサが顔を顰めた。確かにあまりいい気分にはなれないかもしれないよ。


「制服がまだだから僕たちがZクラスだってすぐにバレちゃうみたいだね」


 ドクトルが私服を確認しつつ口にした。苦笑いを浮かべていて居心地悪そうに感じる。


 周囲の生徒は皆、学園支給の制服を着用してるからね。確かにその分僕たちは目立つかもしれない。


「ハッ、馬鹿らしい。気にすることはねぇだろう」

「そうだな。来るのはもう許可されてるんだ」


 吐き捨てるようにアズールが言った。ガロンもその意見に同意なようだね。


「おい無能のZクラスがなんでこんなところ歩いてんだよ」


 皆とそんな会話をしながら歩いていると数名の生徒がニヤニヤしながらこっちに近づいてきて話しかけてきた。


「お前らZクラスは小テストの成績が悪かったら学園から追放されるんだろう? だったらとっとと出ていけよ」


 真ん中の茶髪の少年がそんなことを言った。確かに退学は示唆されていたけど本校舎にも知れ渡ってたんだ。


「それなら問題ないよ。テストでは全員及第点を取れたからね」

 

 どうやら勘違いしているようだから僕が彼らの疑問に答えた。


 すると彼らが顔を見合わせ、プッ、と吹き出す。


「あはは、ありえねぇだろうがそんなこと」

「全く笑えない冗談だ」

「そんな嘘をついてまでここにしがみつきたいとは哀れだねぇ」


 そろって笑い声を上げ僕たちが嘘つきのように扱って来た。


 参ったね別に嘘なんてついてないのに――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る