第258話 魔力0の大賢者、テスト結果を知る
side ゲズル
「解答欄がすべて埋められていたか……」
小テストが終わり本校舎に戻ってそうそう理事長に呼ばれて部屋に向かった。
イロリに代わりこの私が小テストの試験官に選ばれたからだ。しかも問題児の多いZクラスだ放っておいては一体どんな不正行為を働くかわからない。
理事長が危惧するのは当然のことだ。そう当然のことなのだが――
「それで連中はまともにテストを受けたのか?」
「はい。それは間違いありません。この私がずっと目を光らせていたのですから」
理事長が気にしたのはやはりそこだった。だが私が今話した通りそして意外にも連中は真剣にテストと向き合っていた。
小テストとは言え魔法学園のレベルは高い。この短い期間では一年生の身ではそう良い点は取れないものだ。
で、ある以上カンニングを狙うかそうでなければ腐ってやる気を無くすかだと思ったのだがな……。
「まぁ気にすることではなかろう。埋めたと言っても、とりあえず答案用紙を埋めておけば採点の際の心象が良くなるかもしれないなどと言った浅い考えなのだろう」
「は、はぁ……」
理事長の予想に思わず気のない返事をしてしまった。勿論その可能性がないでもない。だがあの魔力無しのマゼルに関してはテストが始まってから五分もせずにテストを終えてしまった。
事前に終わった順に提出することと伝えていたとは言えあの早さはあまりに想定外――
たしかにあのマゼルは入学試験においても本来解けるはずのない問題を解いていた。
だがあれはきっとたまたま見ていた参考書が偶然問題と被っていただけの偶然だと判断したのだが――しかしちらっと解答を見る限り適当に埋めたような感じではなかった……。
しかし問題はそこだけではない。マゼルがテストを終わらせてから程なく次の一人がテストを終わらせた。
もっともこれはメイリアであったから納得ではあった。もともと今回のテストでZクラスから一人はすぐにテストを終わらせて出ていくと踏んでいた。
それがメイリアだ。なにせあのゲシュタル教授が生み出した人型ゴーレムだ。小テストぐらいは余裕だろう。
もっともあのマゼルはそのメイリアよりも圧倒的に早かったのだが……とにかく次は――つまりメイリア以外にもまだいた。
流石にマゼルやメイリアからは遅れたがそれでもかなりの余裕を残してドクトルがその後にはシアン――更にリミット、アニマ、ガロンと続いた。
結局時間いっぱいまで掛かっていたのはアズールとメドーサの二人だけだった。しかもその二人にしても答案用紙はしっかり埋め尽くされていた。
これに驚かされた。だが冷静に考えて見れば理事長の言うとおりであろう。メイリア以外はとにかく答案用紙を埋めることで手一杯だったに決まっている。
そう思っていた。そして後日私は採点を終わらせたわけだが――
◇◆◇
「――テストの結果がわかった。採点した用紙と一緒に返すぞ」
朝、教室に入ってきたイロリ先生から告げられた。小テストの結果か――僕たちはこの成績次第で退学になるかもしれないと事前に伝えられていた。
だからこそ緊張もする。僕だってそうだ。一応すべて解いたつもりではあるけど――
「採点した用紙は成績順に返していく。先ずはマゼルださっさと取りに来い」
「へ?」
色々考えを巡らせていた矢先に呼ばれてしまったよ。早いよ!
「点数は満点だ。お前ここはZクラスだぞ少しは空気を読め」
「えぇ……」
テストを取りに行ったら不機嫌そうに点数を教えられて文句を言われてしまった。
それにしても満点を取ってしまうとは――
「次はメイリアだが同じく満点だ。お前らいい加減にしろよ」
「――同じ点数なのになぜ私が二番目なのか教えて欲しいとお答えします」
「教室を出た順番だ。たくZクラスから満点二人も出たら俺の立場がないだろうが」
「満点が二人も出てなぜ立場がないのか」
「そこは喜ぶところだよねぇ」
ガロンとドクトルが困ったような声で言っていた。でも先生は本当に迷惑だと思ってるわけじゃなさそうだけどね。
「次はドクトル。九十二点だな。ほら取りに来い」
次に呼ばれたのはドクトルだった。更にシアンが九十点、リミットが八十九点、アニマとガロンはそろって八十八点と呼ばれていった。
「残りはアズールとメドーサだったな。テストの時お前らだけがギリギリまで粘ったようだ。少しは空気が読めるのがいたじゃないか」
「別に空気読んで粘っていたわけじゃねぇし」
「わ、私は本当はもっと早くテストは終えたけど空気を読んだのよ!」
不満そうに口にしたアズール。そしてメドーサはイロリ先生に乗る形の反応を見せた。
そしてテストの結果だけど……。
「メドーサ八十七点、アズールは――八十五点だ」
「やったギリギリ! て、あれ?」
「あ……」
点数を聞いてメドーサが喜んだけど、その直後アズールの点数で彼を見ていた。僕や皆もそうだ。
アズールも力が抜けたような顔で遠くを見ている。なぜなら事前に聞いていた小テストの平均点が八十六点だったから――
「どうしたアズール。さっさと取りに来い」
「……はは、そうだ、な――」
肩を落としたアズールが先生の前までいきテストを受け取った。結果をまじまじと見てそして自嘲気味な笑みを浮かべる。
「はは、悪い俺、駄目だったわ」
「そんな! 駄目だよそんな!」
思わず立ち上がって僕はイロリ先生をみた。アズールだって頑張っていたんだ。
「先生何とかなりませんか! こんなことで退学だなんて!」
「……ルールは変わらん。前にも言った通りZクラスのお前らは小テストの平均点以下を取ったなら退学――もっとも今回の小テストの平均点は八十四点だったわけだがな」
「マゼルいいんだ。俺だって男だこうなったら土下座でもなんでも! て、へ?」
アズールが僕を止めつつ決意を新たにしていたけど、えっとイロリ先生の発言で目を丸くしていた。それは僕たちも同じなわけで。
「ちょ、ちょっとまってくれよ先生! それなら俺は!」
「全く運のいい奴らだ。アズールもだがZクラスからの退学者はなしって事だ。たく、少しは面倒が減るかと期待したってのにな――」
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