第254話 魔力0の大賢者、先生と教授と師匠?
「いやぁこの程度で済んでよかったねぇイロリン」
「だからその呼び方はやめろと言ってるだろう!」
ゲシュタル教授に親しげに呼ばれるもイロリ先生は不機嫌そうに応じていた。
う~ん、でもこの二人を見てるとやっぱり――
「先生たちは親しい関係だったのですね。とても仲が良さそうだし」
「ふざけるな誰がこんなのと!」
「あはは。これでもちょっとした仲だからね」
「誤解を招く言い方するな。くそ、ゲシュタルは昔は俺の後輩だったんだよ。以前から先輩を先輩と見ない女だったがな」
やれやれとイロリ先生が答えてくれた。でもそうかイロリ先生が先輩だったんだ。
「いやいや僕はイロリンは可愛がってたつもりだよ?」
「おおよそ先輩に言う言葉じゃないな」
イロリ先生が顔を顰めた。ただ本気で嫌がってる感じでもないかな。
「――ま、成績に関してはこいつの方が断然上だったからな」
「確かに僕はずっと首席だったからね~」
イロリ先生がゲシュタル教授を指さして語ると、否定することもなく素直に認めていたね。
「全く遠慮のない奴だ」
「あはは。でも指導力ならイロリンの方が上だったね。だからこそ今も教師を続けてるんだろうけどね」
指を口に近づけてゲシュタル教授が言った。
「――指導力があればこんなところにいたりはしないさ。買いかぶり過ぎだろう」
「そんなことはないじゃないか。ね、マゼルくん」
ゲシュタル教授が僕に同意を求めてきた。それなら僕も気持ちを伝えないと。
「はい。僕もイロリ先生がいてくれてよかったと思います。先生のおかげで僕は妹を助けることが出来ました」
「馬鹿言うな。こっちはそんなつもりじゃなかったってのに。たく、おかげでとんだとばっちりだ」
「まぁまぁ結果的に学園には残れるじゃないか?」
「は、はい! 僕もイロリ先生が辞めずに済んで良かったと思ってます!」
イロリ先生が辞めずに済んで良かったと思ってるのは本当だ。イロリ先生は何だかんだで僕たちのことを考えてくれていると思う。
「――フンッ。何がいいものか。ただでさえ安月給だってのに減給処分なんだからな」
イロリ先生が愚痴をこぼした。そ、それを言われると……申し訳ない気もしてしまう。
「まぁまぁ今度呑みにでも行こうか。勿論イロリンのおごりで」
「何でだよ!」
ぐるるとイロリ先生が唸った。げ、減給が厳しいのはやっぱり事実なのかな……。
「マーーーーゼーーーールーーーー!」
先生たちと話していると何か聞き覚えのある声が近づいてきたよ。見ると師匠が猛ダッシュで近づいてきて――
「良かった~その様子だと何事もなかったんだねぇ」
そして師匠に抱きしめられた。
「ちょ、し、いや、スーメリア先生!」
師匠いきなりすぎだよ! ここは学園なんだから節度を持ってもらわないと!
「え~何か他人行儀~スーちゃんって呼んでくれても、いいんだぜ?」
目元にチョキを持っていき舌をペロンっと出して師匠が言った。精霊たちも光ったり風を起こしたり相変わらずの盛り上げ具合だ。
「先生からかわないでくださいよ」
目で師匠に、控えて、と訴えつつ答えた。師匠気が付いて!
「うんうん。もっと抱きしめて欲しいんだね。いいぜ~ほら、来なよ」
「違う!」
両手を広げた師匠に思わず突っ込んでしまったよ。
「あはは、ジョークジョーク。それはそうとしてどうやら二人のおかげでマゼルは助かったようだね。ありがとうさ~」
「……別に俺は何もしてない。そいつが勝手にやったことだ」
「僕もメイリアの報告をそのまま告げただけさ。でもマゼルが残ってくれたのは嬉しいかな。君には興味があるからねぇ」
イロリ先生はいつもどおりの反応だった。ただゲシュタル教授の反応は気になったけどね。
僕に興味って……冗談だと思うけどね。
「……ふぅ、疲れたから俺は先に戻るぞ。マゼルも用事が済んだらさっさと戻れよ」
「僕もそろそろ仕事に戻らないとね。じゃあイロリンまたね~」
「……フンッ」
あれ? 何か気を使われたとか? とにかくイロリ先生とゲシュタル教授は先に戻って僕と師匠だけが残されたよ――
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