第253話 魔力0の大賢者、退学から免れる?

「マゼルに関係していることだと?」

「うん。そうだね。今の話とも無関係ではないと思うけどね」


 リカルドの問いかけにゲシュタル教授が答えた。

 不快そうにリカルドが顔を顰める。


「――それで。一体どんな話だ?」

「うんうん。実はねさっきメイリアが僕のところに来てある報告をしてくれたんだよ」


 ゲシュタルの話につい耳が傾いた。メイリアは僕が学園を出た後も付いてきていたんだよね。


「……Zクラスに入れたゴーレムのことか。だが、その報告が何だというんだ?」

「メイリアは言ってたのさ。学園を出た後マゼルを追いかけていたとね。そしてこうも言っていたマゼルは山からは出ていないそれどころか学園の管轄エリアから外れることもなかったとね」


 くすっとどこか楽しげにゲシュタル教授が語ってくれた。管轄エリア――それはメイリアが教えてくれたことだ。


 おかげで僕は遠くから狙撃してきた魔狩教団を追いかけるのをやめたんだけどね。


「見ていた、だと――」


 リカルドがつぶやき悔しそうに歯ぎしりした。リカルドは僕が嘘をついていると判断したようだったけどメイリアからの報告のおかげで真実だと証明されたことになる。


「僕も最初何のことかわからなかったけどね。メイリアによるとイロリンがマゼルに言ったそうじゃないか」

「その呼び方はやめろ」

「イロリンがね山からは出るなって」

「やめろと言ってるだろう!」


 イロリンってやっぱりイロリ先生のことだよね。イロリ先生はその呼び方嫌がってるみたいだけど――


「まぁ彼はあくまで山から出るなっていったわけだしマゼルもそれに従った以上、バツを受ける言われはないよねぇ?」


 ぐるるるぅ、と唸り声を上げるイロリ先生を他所にゲシュタル教授が話を進めた。


 ゲシュタル教授も僕を擁護してくれているみたいだけど……。


「黙れ! あんなヒトモドキの人形が言ったから何だという! 人形の戯言など何の証明にもならん!」

「メイリアは私が手掛けた最高傑作だ。そして私のことを主人マスターと認識している。君もわかってるだろう? ゴーレムである以上メイリアはマスターである私に嘘はつけない、と」


 ゲシュタル教授がリカルドの肩を掴みながらそう説明した。確かにゴーレムは主人の命令に忠実に動くけどね――


「それとも君はこの僕が嘘をついていると、そういうのかい?」

「グッ!」


 リカルドが呻いた。そして――何かゲシュタル教授の様子に変化。リカルドへの圧力が強まってるよ。


「それと――確かにメイリアはゴーレムだが私の最高傑作であり私は本物の人間と変わらないよう接してるつもりだ。そのメイリアをニンゲンモドキなんて言われるのはとても不愉快だ。訂正してもらいたいね」

「き、貴様私を誰と――」

「訂正、してくれるかな?」


 何だかとても冷たい響きの声だった。リカルドも戸惑っている。


 ただ、メイリアは僕から見ても人間と変わらないし、クラスメートを侮辱されるのは愉快じゃないけどね。


「……悪かった。つい熱くなったメイリアも今は学園の一生徒だ。訂正……しよう」

「そう。良かった♪。なら今回はこれで解決だね。マゼルも約束はやぶってないわけだし」

「は? いや、それとこれとは話が別だ!」

「でもメイリアが嘘をついてないのはわかったよねぇ? それともまだ責任がどうこういうつもりかい?」

「――」


 ゲシュタル教授がニコニコと笑顔を振りまきながらリカルドに切り込んでいった。


 リカルドは言葉をなくしてしまい愕然とした様子だよ。


「ま、どうしても責任がとなるとイロリンにバツを与えることになるのかな?」

「だからイロリンはやめろ! それに俺も辞めるつもりはあった」

「えぇ? そうなの~? でも理事長はそれだと困るよねぇ? マゼルが辞めるだけなら生徒の不始末で済むけどイロリンもとなると――学園側も各方面に色々説明が必要かもしれないしねぇ。学園側の不始末だと追求されるかもしれないしねぇ」

「――くそ!」


 ゲシュタル教授に言われ悔しそうにリカルドが声を上げ机を叩きつけた。


「で、どうするのかな?」

「――マゼル・ローラン。仕方がない今回は不問とする。ただしこの件は口外しないこと。わかったな!」

「は、はい。あの、それでイロリ先生は?」

「……三ヶ月の減給処分だ」


 どうやらイロリ先生については完全に罰を免れるわけにはいかなかったようだね……でも学園を辞めるようなことにはならなくてよかったよ――

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