第244話 魔力0の大賢者、デグスと決着をつける?
「な、何なのよあのバケモノ!」
「ひぃ、も、もうだめだぁ終わりだぁ私の輝かしいキャンパスライフも始まる前に終わるんだー!」
「駄目だもう無理だ僕は無能なのだよ……」
「ちょ、グリンしっかりしてってば!」
あちゃあ……デグスの変貌で皆がパニックに陥ってるよ。
見た目の変化が凄まじいしあの年齢なら仕方ないか……とにかくまずは落ち着いてもらおうかな。
「安心してください! あそこに立っているのは大賢者たるマゼルお兄様。あのような薬に頼るような相手に負ける理由がありません!」
「そうさね。主様がいれば安心さ。大船に乗ったつもりで見てるんだね」
「わ、私もラーサの言葉を信じるよ。だってあれだけの大魔法を見せてくれたんだから!」
ラーサとアネ、そしてもうひとりの眼鏡の女の子。もしかしてラーサの新しい友だちかな。
うん。ラーサいい友達が出来たんだね。そして今の三人の言葉で慌てていた他の皆も大分落ち着いてきたようだね。
「大賢者……まさか本当に?」
「フレデリカ様。私も何となく信じられる気がします」
「く、悔しいけど今は伝説の魔法だよりか!」
ハハッ……魔法じゃないんだけど今はそんなこと考えてる場合じゃないね。
「ジネェ! だいげんじゃー!」
巨大なカマキリを彷彿させる化け物に変貌したデグス。ただお腹の中心に元の名残か顔状の瘤が残っていて声はそこから発せられている。
デグスは四本の鎌を振ると三日月型の斬撃が飛んできた。これは避けたら皆に当たる軌道だ。
「ひぃ、もうダメだママ~!」
「大丈夫。絶対に通さない」
僕は飛んできた斬撃を全て手で払い除けた。くだけた斬撃は後ろには飛んでいかない。
「た、助かった?」
「……シルバ情けなさすぎでしょう……でも一体どうやって?」
「あれこそがお兄様の完全守護魔法です!」
皆の疑問の声が聞こえてきたけどラーサが魔法ということで説明していた。何かだんだんと扱いが大仰になってきてるような……。
「流石は主様だね。後ろにいても安心感が違うよ」
「あれが、おとぎ話だと思っていた大賢者様のお力」
「えっと、フレデリカ様?」
何か色々話してる声も聞こえてきてる。声の雰囲気的に不安は解消されてそうで良かったけどね。
「ぐぅううう、だ、だいげんじゃああぁああ!」
すると遠距離からの攻撃が効かないと見たのか今度はデグスからこっちに近づいてきてくれた。
僕としては逆に好都合かな。
接近してきたデグスが四本の鎌を利用して鎌で攻撃。四方向から逃げ場を無くすつもりだね。
「でも甘いよ」
「!?」
一旦後ろに引きつつ加速して背後に回り込んだ。更に――僕は手刀にした右手を翳しつつデグスを見る。
「もうこれで鎌は使えないよ」
「――ッ!? グガアァアァアアァア!」
デグスの四本の腕が宙に舞った。回り込んだ時にこれで切っておいたからね。
「大賢者様が消えて後ろに?」
「あれこそが大賢者たるお兄様の瞬間移動魔法です!」
「同時に風魔法まで展開して腕を切ったね。流石主様だ」
はは……全て物理なんだけど……。
「アァアアアァアアァアアァアアアア!」
「お、おい! あいつまた腕が生えてきたぞ!」
誰かが叫んだ。うん本当だ。再生能力高いね。だけど――
「残念だけど隙だらけだ」
腕を生やす時が無防備過ぎる。僕が右手の手刀を振り下ろすとデグスの体が一刀両断された。
「あ、あんな大きいのが真っ二つに? 一体どうやって?」
「決まってます! あれこそがお兄様が誇る大聖賢魔法エクスカリバーです!」
「は! 聞いたことがあります! かの邪神を両断したとされる大賢者の魔法。それこそがかの聖剣エクスカリバーのモデルとなったとされるのは有名な話です! まさかあれが!」
「流石さね主様は」
いやいやそんなの初めて聞いたよ! 何聖剣のモデルって!?
うぅ、とにかく決着は付いたよ。切れた腕は再生しても命までは再生出来ないようだからね――
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