第241話 作戦が筒抜け?
side アン
「いいねぇその顔。とくにそっちの眼鏡のは随分とわかったようなことをべらべらと言っていたようだが、残念ながら全てこちら側に筒抜けだったわけだ」
「くっ!」
グリンを指差しデグスが嘲笑した。グリンが悔しそうに歯噛みしているよ……。
でもどうしてバレていたんだろう……見張りはいたけど見張りに聞こえるような声で話し合ってないのに……。
「筒抜けねぇ。だったら随分と余裕じゃないのさ。おかげでこっちは魔法を封じていた鎖も外すことが出来たっていうのに」
「そのとおりです。むしろ不利なのは貴方たちの方ですよ。今度は馬車でのようにはいきません!」
アネとラーサが強気に言い放った。確かに今なら皆も魔法が使える。沢山いるし向こうは魔法が切れるらしいけどそれも全員が出来るわけではないはずだ。
「しかし、そこの奴が下手な勘ぐりしてくれたおかげで大賢者の妹のお前は魔法がつかえないままだ。それ以外の連中なんてどうとでもなる」
「あ、う……」
デグスの発言でグリンがうめき声を上げた。何かすごく動揺しているのが伝わってくるよ。
「あたしを忘れてるんじゃないかい?」
ラーサの肩の上でアネが鋭い口調で問いかけた。前はなにかにやられたようだったけど今回は周りに皆もいる。
アネは強いし皆でがんばればきっと!
「さて、どうかな?」
デグスがニヤリと不気味に口端を吊り上げた。
何か嫌な予感がする。
「お、おいなんだよそれ!」
ふとシルバから声が上がった。指をさしていたのは頭上。そこには何か筒状の物が飛んできていた。
細長い紐が付いていて先端から火花が――
「それは爆弾だ! そのままだと全員吹っ飛ぶぞ!」
「きゃぁあああ!」
「フレデリカ様!」
デグスの声にフレデリカが頭を抱えて叫んだ。一緒に来ていた女の子の一人がフレデリカを庇いに入る。
爆弾――魔法で作られた物が今は一般的だけど、雰囲気的に火薬と言うので作られたんだと思う。
それがこんなところで爆発したら……逃げようにももう落下寸前だよ――
「チッ!」
「アネ!」
その時アネがラーサの肩から飛び出して落ちてきた爆弾に覆いかぶさった。
刹那――激しい爆発音がして衝撃で髪が激しく揺れ土埃が発生した。
「ゲホッゲホッ、み、みんな大丈夫?」
「な、なんとか平気さ」
「グリン大丈夫!」
「僕は、僕は、もっとやれるはず、なのだよ、僕は――」
「アネッ! アネッ!」
「フレデリカ様は無事です!」
心配になって声をかけると皆の反応が返ってきた。ブルックに心配されているグリンの様子が気にはなるけど怪我はないみたいだから後回しだ。
それよりもラーサが声を掛けているアネの怪我が酷いよ!
「チッ、とっさに糸で覆ったつもりだったけどこの体じゃ完璧とはいかなかったさね。情けないもんだねぇ」
「アネこんな無茶して……」
「主に頼まれてるからねぇ。妹のあんたに傷一つつけさせるわけにはいかないさ」
ラーサが涙ながらにアネの話を聞いていた。命に別状は無さそうだけど火傷が酷いよ。
「ハハハッ、頼みの魔獣もそのざまだ。下手打つのもこれで二回目か実になさけない」
「くっ、おいグリン呆けてないで何か考えてくれよ。だいたいおかしいだろ! これだけいたのにどうしてあんなのが投げられていたことに気が付けないんだよ!」
シルバが立ち上がりグリンに訴えた。言われてみれば確かにそのとおりだよ。それにそもそも爆弾は教団が立っている位置とは関係ない方から飛んで来ていたし……。
「シルバ私の鎖を解いて! もう見つかっているのだから関係ない」
「あ、そ、そうか!」
「おっとそうはいかない。いい加減お前らのお遊びに付き合ってはいられないんだよ」
声を上げデグスや正面に立っている仲間たちが一斉にあの火銃というのを抜いた。
「少しでも動いたら撃つ。この距離なら詠唱よりこっちの方が早いぞ?」
「い、いいのですか? わざわざこんな手間まで掛けて攫っておいて撃つなんて」
「調子に乗るなよガキが。ラーサだったなお前はどうせ何も出来ない。こっちは最悪連れ去るのがお前だけでも仕方ないと思っているし、別に殺さなくても身動き取れ無い程度に撃ち抜くことだって出来るんだぞ?」
「くっ!」
「僕は、僕は――なのだよ……」
駄目だ――ラーサの鎖は解けていないしグリンもぶつぶつ呟いているだけで完全に戦意を失ってるよ……。
「も、もう駄目だわ……」
「フレデリカ様諦めては駄目です!」
「うぅ、でもどうしようもないじゃんこんなの~」
フレデリカの目から光が失われていく。一緒にいた子の一人は励まそうとしているけどもう一人は諦めに近い顔だ。
「折角ここまで来たのに……クソッ!」
シルバの悔しがる声。ブルックはグリンに声を掛けているけど立ち直りそうにないよ……こんなときに私も何も出来ない無力すぎるよ……。
「さてとそこの魔獣もついでに貢物にしようと思ったがその怪我じゃな」
「あ、貴方たちがやったのではないですか!」
「フンッ。無駄な抵抗をするからだ。とにかくお荷物はここで殺処分といくか」
デグスが重症を負ったアネに銃口を向けた。
まさか、そんな――
「死ねッ!」
「だめぇ! いやお兄様ーーーー!」
ラーサが叫ぶのと同時にデグスが引き金をひいた。銃声が鳴り響いたその時、私の頬を風が撫でていった。
そして――
「良かった――息はあるねアネ」
「あ、主様?」
「お兄様!」
「な、何だと馬鹿な!」
アネがか細くつぶやきラーサが喜々とした表情で叫んだ。
そして――デグスの戸惑いの声。見るといつのまに現れた男の子の姿。まさかこの子があの――
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