第238話 敵の正体
グリンはシルバの鎖を切るのがこの状況で適切だと考えたみたい。でもどうしてかな?
「待って何でよりによってシルバなの?」
「それはもちろんこの鎖には銀が使用されていると思われるからなのだよ」
「え? この鎖に銀が?」
思わず私は鎖を見た。だけど見た感じは鉄っぽいけど……でも銀、銀……。
「あ! もしかして魔法銀!」
思いついた物が口に出た。ミスリルとも呼ばれてる金属で確かにそれなら術式を発動するのに役立つよ。
「そうか魔法銀に術式を刻んで私達の魔法を封じてるのね」
「えっと、それはどうかな? 教団は魔法を憎んでいて魔導具の扱いすら忌避してるみたいだし……」
フレデリカも私と同じ考えに至ったようだけどラーサは疑問を抱いていた。そういえばデクスが火銃を魔導銃と呼ばれて怒っていたよね……。
「その通りなのだよ。だからこれは魔法銀ではない僕の予想ではこれは魔封銀なのだよ」
「魔封銀?」
「初めて聞いたねぇ」
ラーサの疑問に答えるようにグリンが説明を始めたよ。
でも魔封銀……ラーサとアネも知らないみたいだし他の皆も?顔だ。私も知らないなぁ……。
「魔封銀――でもグリンあれは魔法殺しとも呼ばれていて忌み嫌われていた銀だよね。だから魔法使いの反感を買って処分されたって……」
「そんなものまともに信じても仕方ないのだよ。魔法の制御を狂わせるような代物、使いようによっては大きな武器にもなる。処分したと偽って隠し持っていたとしてもおかしくないのだよ」
「だったら何でそんなものをあの連中が持ってるのよ」
ブルックとグリンの話にフレデリカが割り込んだね。眉を顰めて不機嫌そうだよ。
「奴らは支援者がいると言っていたのだよ。これだけの教団を支援する以上それ相応の貴族や商人がバックにいるとみて間違いないのだよ。である以上魔封銀を手に入れていたとしてもおかしくないのだよ」
グリンって何か凄い……この状況でそこまで思いつくなんて。
「とにかくここから出れるかどうかはシルバにかかってるのだよ。さぁ早く鎖をなのだよ」
「わかったよ。ほらあたしの足を使いな」
「――ふ、ふふ。これは、お、お誂え向きだ。僕の優秀さを」
「いいから早くするのだよ!」
シルバが自分に言い聞かせるように口にしていたけど、グリンに厳しい口調で促されて渋々という感じで鎖をアネの毛に当てた。
ヤスリ代わりにゴシゴシやっているよ。でも声が震えていたし不安も大きそう。
それからしばらくシルバの作業は続いた。その間にやっぱり見回りはきたけど何とか私たちでカバーしてばれずにすんだよ。
それから暫くして――
「き、切れた!」
「でかしたのだよ!」
シルバが立ち上がり両手を上げて鎖が切れたことを皆に教えてくれた。確かに鎖が見事に切れているよ。
「それなら早く君の魔法で皆の鎖を解くのだよ」
「……いやでも良く考えたら魔法を封じる銀なのだろう? 僕の魔法も通じないのでは?」
「いや、これが魔封銀なら内側への影響は高くても外からの干渉には弱い筈だよ」
不安そうにしているシルバにブルックが答えた。そういう物なんだね……。
「どっちにしてもやってみないと仕方ないのだよ。駄目だったらプランBに移行するまでなのだよ」
プランB!? そんなものまで考えていたんだ……。
「そのプランBが何か聞いてもいいかい?」
「……聞かないほうがいいのだよ」
「なにそれ怖い!」
シルバに聞かれたけど、どこか憐れむような目を彼に向けながらグリンが答えた。い、一体どんな作戦なんだろう?
「くっ! 無理だったとしても恨まないでくれよ。操作の銀、揺らぐ銀、銀は我の手中にあり、銀魔法シルバーマニピュレイト!」
シルバが魔法を行使した。すると皆の鎖が動き出し鎖の一部がどろどろに溶けていったよ。
凄い同時に皆を解放しちゃった……でもこれで脱出出来るよ!
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