第235話 捕まえた目的

「なんて酷いことを――」


 笑い続けるデグスをラーサが険しい顔で見ていた。私も気持ちは同じだろう同時に怖いという思いが強いよ……。

  

 こんなことを平気で口にする奴らから私たちはどんな目に合わされるのか……。


「わ、私たちは一体どうなるのですか? まさか、こ、殺されるッ!?」


 フレデリカが切羽詰まったような声を上げた。御者のおじさんにも容赦なかった集団だし、不安になるのもよくわかるよ――


「ハハッ、さてどうするかな?」

「――命を奪うつもりならとっくに奪っているのだよ。それをせずこうして閉じ込めておく以上、何か理由があるに決まっているのだよ」


 眼鏡を直す仕草を見せながらグリンが考えを述べた。正直不安しかなかったけど冷静に考えてみればそうなのかも……でも、どうして私たちを?


「――可愛げのないガキもいたもんだ。だが、そのとおりだ。お前たちは大切な貢物だからな」


 グリンの推測に反応してデグスが答えた。でも貢物って……。


「それはどういう意味ですか?」


 ラーサが怪訝そうに問いかけていた。皆が気になる点だよ――


「言葉通りだ。我々魔狩教団とて色々入用でな。故に我々の理念に賛同してくれる貴族など支援者も多い。だが当然支援だけで見返りが何も無ければ不満もでる。そこでお前らの出番だ」

 

 ニヤリとデグスが口角を吊り上げた。うぅ、嫌な予感しかしない……。


「お前らのような魔法に長けて調子に乗った連中を自分の所有物とし従わせたいという支援者は多い。そういった要求に答えるのも大事な仕事の一つなのだ」


 デグスが愉悦に浸った顔でとんでもない事実を突きつけてきた。私たちが奴隷みたいに売られるってこと?


「――呆れましたね。散々偉そうなことを言っておきながら、結局お金欲しさに相手に媚びを売るような真似をしなければ存続できないだなんて、魔狩教団だなんだと言っても程度が知れるというものです」


 ラーサの発言に皆が目を白黒させていた。この状況でここまでハッキリいい切れるなんて……でも、まデグスが不機嫌そうな顔を見せているよ……。


「黙れ。言っておくがお前らが送られる相手は容赦など一切ない魔法使いに恨みを持った連中だ。きっとお前らを生かさず殺さず様々な手で甚振り尽くすことだろう。今ここで死んでおいた方がマシだったと思える程にな」


 デグスが私たちに非情な現実を突きつけてきた。そんな……一体どうして。私たちはただ魔法学園に向かっていただけなのに……。


「――貴方たちの思いどおりにはなりません。絶対に偉大な大賢者であるマゼルお兄様が助けに来てくれます!」

「そうさね。あたしの主様ならきっとね!」

「な! あ、アネのではありませんよ!」


 ラーサが自信ありげに答えた。アネも追随するようにデグスに言い返していたけど何故かラーサがムキになってアネと言い争うになっているよ。


 でも、噂のあの大賢者様が助けに来てくれるならひょっとして!


「大賢者か。ククッ残念だがそう上手くはいかないのさ。その大賢者とやらが今魔法学園にいることはわかっている。それであれば助けに来るなど不可能だろう」

「な――まさかそれも計算して、な、なんてセコい!」

「全くだね。言ってて情けなくないのかい」

「だ、黙れ!」


 デグスの答えにラーサとアネが反論した。デグスがちょっとムキになって反応してるよ。

 

 だけど、そうか学園にいる状況だとそう簡単ではないってこと……うぅ折角希望が見えてきたと思ったのに――


「強がっていられるのも今のうちだ。大賢者の妹だったな。貴様はとくに変態貴族が好みそうな容姿をしている。そこにいる蜘蛛は一部のコレクターが好きそうだ。ククッ、今から楽しみにしておくんだな」


 そこまで言った後デクスを含めた教団の面々が出ていった。


 本当にこれから私たちがどうなっちゃうのか……うぅ、送り出してくれた町の皆もきっと心配しているだろうな――

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