第232話 魔力0の大賢者、ファンファンに気がつく
イロリ先生が教室から出ていった後ももやもやした気持ちが続いた。
自習は確かに今に始まったことじゃないのも確かなんだけどね。
ただ先生の表情とかいつもと違う気がしたし――
「ちゅ~」
「やだ可愛い。何このネズミ?」
「え? 白綿ネズミ? どうしてこんなところに?」
「どこかから紛れ込んだのか?」
「白綿ネズミ?」
メドーサとアニマそれにガロンの声が耳に届く。鳴き声と白綿ネズミという単語で頭にアリエルと肩に乗るファンファンの姿が思い浮かんだ。
「やっぱりファンファンだ」
「ちゅ~!」
皆の方へ近づくと机の上で鳴きながら何かを訴えてるファンファンの姿が見えた。
ファンファンも僕に気がついたみたいですぐさま飛びついてきたよ。
「マゼルの知ってるネズミなの?」
「うん。友達のアリエルのペットなんだ」
「ちゅ~♪」
ファンファンの頭を撫でながら皆に説明した。アリエルも今学園にいることも含めてね。
「でもどうしてここに?」
『マゼル――聞こえますか?』
「お、おい今そのネズミが喋ったのかよ!」
アズールが目を丸くさせて聞いてきた。確かにファンファンから声が聞こえてきてびっくりだよね。
「いや、この声はイスナのだね」
「イスナ……もしかして留学生のエルフのお姫様!?」
「そういえば聞いたことある声だと思った」
僕が話すとメドーサが驚きリミットが思い出したように呟いていた。
『今風の精霊を通じてマゼルに声を届けています。出来ればマゼルだけに――』
「え、えっとごめん皆!」
今の部分は声のトーンも下がっていて、どうやら他の人には知られないほうがいい内容みたいだ。
だから一旦ファンファンを連れて教室を出た。
『今大変な事が起こっていてどうしてもマゼルにお伝えしたくて精霊とファンファンに協力してもらいました。実は――』
そしてイスナからの説明を聞いて――驚いた。何かあったのかなとは思ったけどラーサの乗ってる馬車が狙われたなんて。
「マゼルお前エルフのお姫様と一体どういう関係ってどうしたんだよその顔」
「……何かあったのか?」
「ちょっと顔が怖いんだけど」
「あ、ご、ごめん――」
精霊の声を聞いた後、教室に戻ったけどつい表情に出ていたらしい。皆が心配そうに声を掛けてきた。
「ちゅ~……」
ファンファンも僕の様子を気にしているみたいだ。
「何かあったのかマゼル?」
アズールに怪訝そうに聞かれてしまったよ。でも皆は試験に向けてラストスパートに入ってるところだし、イスナが言っていたようにあまり知られていい話でもないよね。
「う、ううん。特になにもないよ。あ、それでちょっと僕、気分転換に散歩してこようと思うんだ」
「さ、散歩?」
なんとか誤魔化そうと思って出た言葉だった。ガロンが不可解といった顔を見せてるけどね。
「皆は構わず勉強を続けていて。できるだけ早く戻るからね」
皆にそう言い残して僕は教室を出た。とにかくラーサの事が心配だ急がないと――
◇◆◇
side メイリア
「あれは絶対何かあったわね」
「結構わかりやすいですよねマゼルも」
「うむ。とは言え普段から世話になっているわけだし詮索はしないでおこう」
「てか、メイリアもいつの間にかいなくないか?」
「そういえば――」
教室から残った皆の声が聞こえましたが私にとって大事なのはマゼルの動向ですと私は私にお答えします。
マゼルはこっちにいきましたとお答えします。私はこのままマゼルを追いかけますと私は私にお答えします――
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