第231話 突然の自習
side アリエル
「今日は自習となる。全員大人しく学業に専念するように」
毎朝授業は担任の挨拶から始まります。それがいつものありえる光景。
ですが今日は朝から挨拶も手短に自習というありえない出来事がおきたの!
「絶対何かあったよねファンファン?」
「ちゅ~!」
ファンファンも両手をパタパタさせて私に同調してくれている。やっぱりおかしい! ありえない!
「――アリエル」
自習になって教室の皆も教科書を読んだり友達同士話してたり、教室から出ていくのもいたりしていて私はどうしようかなと思っているとアイラが教室に来てくれて声を掛けてくれた。
でもなんだろう? 真剣な目に見える。
「――緊急案件。ちょっと来る」
「え? えっと、強引すぎてありえな、いやありえる!?」
「ちゅ~」
アイラが席まで来て腕を引かれて食堂までいくことになったのです。でも一体何が?
「今日は早い時間からお客さんが多いよ~」
食堂ではハニーがやってきた生徒の対応に追われていました。忙しそうでありえます!
「ふぅ、今って授業中だと思ったけど皆までどうして?」
ハニーが私達の姿を見て近づいてきて不思議そうにしてます。確かにいつもなら授業中でこんなことありえないのです。
「……急遽自習になった。多分今日一日中授業がない」
「ふぇ、そうなんですか?」
アイラがハニーの疑問に答えました。私はそこまでの話とは知らなかったけど……。
「はい。それぐらいの事態ですよ」
食堂にエルフの姫でもあるイスナが来ました。隣にはイスナと仲の良いクイスにビロスの姿もありえるのです!
「一大事! ビエル心配1」
「あ、ビエル。元気そうで何よりだけど一体何が?」
ハニーも皆の話が気になってるみたい。
「実は急な自習で私も嫌な予感がして精霊を使って先生方の話を聞いてみたのです」
イスナが説明してくれました。そうかエルフのイスナは精霊魔法がつかえる。でも精霊は普通は見えないから調べ物にぴったりなんだね。
「それでわかったのですが――今度学園の特別学区に入学する生徒の一部が何者かに連れ去られたようなのです」
「えぇ! そ、そんなのありえないのです!」
「ちゅ~!」
魔法学園でそんな一大事が起きるなんて信じられません!
「――しかも姫様の調べによると、襲われたのはローラン領から向かってきた馬車。その中には大賢者マゼルの妹君も同乗していたらしいのだ」
真剣な眼差しでクイスが語った。そんな――ラーサと言えばマゼルの妹です。お会いしたこともありますが大賢者の妹として相当な魔力の持ち主だった筈なのにありえないのです――
「……まさかラーサが。ラーサの魔法はそこらの盗賊でどうこうなる物じゃない。そのラーサが乗った馬車がみすみすやられるなんて……」
アイラが信じられないといった様子で語ります。アイラは良くローラン領に遊びにいっていたと聞いてます。ラーサとも仲が良かったみたいですしその実力も把握しているのだと思う。
「――どうやらこの事件魔狩教団が絡んでる可能性が高いのでは、と先生の間で議題に上がっているようです」
「――またあの魔狩教団か」
苦い顔でアイラが言いました。魔狩教団……聞くだけで私も震えが起きてしまう。
私は過去に魔狩教団に攫われた。しかもありえないことに信頼していたメイドのメッサの手引で……とても優しくてときに厳しいメイドだったのに……洗脳されてすっかり別人のようになってしまった。
今はお父様の命で作られた洗脳を治療する為の施設に入ってますが……親しい人が変わり果てた姿を見るのは本当に辛かった――
「アリエル震えてる――大丈夫?」
「え? だ、大丈夫です元気ですありえます!」
「ちゅ~……」
ビロスが心配そうに私の顔を覗き込んで来ました。ビロスは純真でとてもいい子でありえるのです。
そして事情を知ってるファンファンも私を心配してます。なので大丈夫だよと頭を撫でて上げました。
「……とにかく放ってはおけない」
「はい。ですが私達学生では簡単にここから出しては貰えないと思います。ですがせめてマゼルには伝えないと」
イスナが考えを述べました。何も出来ないなんてありえない! だけど確かに私たちはまだ学生。
でもマゼルならきっと――
「本当なら私の精霊を使うのが早いのですが今日は風もあまり無いので距離的に厳しいのです」
「……そうか精霊は気候などにも左右されるから」
話を聞くに精霊も万能ではないようですね……
「ちゅっ! ちゅ~!」
「え? ファンファンが?」
「ちゅっ!」
「えっと、その子は何を?」
私がファンファンの意思を汲み取っているとハニーが興味ありげに聞いてきました。
「ファンファンがマゼルの寮までいって伝えてくれると言ってますありえます!」
私がそう伝えると皆が顔を見合わせた。
「……確かにファンファンなら風紀委員にも引っかからない」
「だけどメッセージはどうやって?」
「いえ! これはいい手です。確かに風の精霊を直接向かわせることは難しいけどファンファンを通じてなら――」
イスナがいい手を考えてくれました。これは十分ありえます!
「マゼルの元までヨロシクねファンファン」
「ちゅっ!」
こうして私たちはファンファンにマゼルへの伝言を任せることにしました。頼りにしてるよファンファン!
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