第228話 魔狩教団に抗え
side アン
「お前たち何をコソコソ話しているんだ!」
魔狩教団の一人が私達の様子に気がついて叫んだ。何をするにしてもあまりこそこそしても疑いを掛けられちゃうかも――
「ヒィ、そ、その僕たちこれからどうなっちゃうのかなって」
するとブルックが立ち上がって上擦った声で答えていた。肩がプルプルと震えているのがわかるよ。
「さてどうなると思う?」
教団のリーダーらしき人がニヤニヤとした笑みを浮かべて逆に聞いてきた。
私達の慌てふためく姿を見れて満足そうだよ。
「お。お願いですせめて、せめて僕だけでも助けてくださーーい! 僕なんてこの中じゃ何の価値もありませんし煮ても焼いても食えませんから~!」
ブルックが教団に向けて命乞いを始めた。そんなこの状況で自分だけ助かろうだなんて。
「な、なんて奴だ」
「見損ないましたわ!」
シルバとフレデリカもブルックを非難している。正直二人もあまり協力的ではなかったと思うけど。
「おい、今のうちに作戦を立てるのだよ。先ずお前! 何の魔法が使える!」
「え? い、今のうちってブルックくんがあんなこと……」
「ブルックのことは僕が一番わかっているのだよ。あいつは仲間を見捨てるような奴ではないのだよ」
「ハハハッ、自分だけが助かりたいか。いいぞ、貴様のような愚か者こそが神に逆らいし愚かな魔法使い共の本性なのだ」
「まったく。ほらそんなに助かりたいなら犬みたいに鳴いてみろ!」
「ワンワン! ワンワン!」
「こいつ本当に犬ころみたいに鳴きやがったぞ。ハハハッ!」
ブルックのやっていることは確かに一見すると見苦しい。でも、確かに教団の目は今ブルックに向いている。
これが本当に彼なりのやり方なら、私は、私にだって出来ることがある筈!
「私は花魔法が使えます」
「花魔法だと? いいぞお誂え向きだ」
「アネ。貴方は外の連中の身動きを封じて貰えますか?」
「やっとやる気になったようだね。任せておきなお安い御用さ」
ラーサに頼まれたアネが手早く外に出ていった。でもあんな小さな体で大丈夫なのかな?
「おい! お前たちはどうなんだ。こいつみたいにみっともなく泣きわめいて命乞いでもして見せれば少しは私達の気が変わるかもしれないぞ?」
「ふざけないでください! ブルックもいい加減そんな真似よしなさい! 恥ずかしくないのですか。見ていてイライラします!」
ラーサが立ち上がりこれまでの印象からは想像できない辛辣な言葉を投げかけた。
「――自然の息吹、生命の緑、芽生えよ種」
その間に連中に聞こえないように静かにグリンが詠唱をつぶやいていた。そうかラーサも更に相手の目を引き付けるためい敢えて、それなら私も――
「助かるために必死になって何が悪いんだよ! 君みたいな子にはわからないだろうけどね!」
「情けない。そんな真似するぐらいなら死んだほうがマシだと思えないのですか!」
「やれやれ伯爵家のお嬢様は随分とご立派な考えをお持ちで。これだから裕福な」
「いい加減にしろ! 全く少しは楽しめるかと思えば我らを無視してふざけた喧嘩なんて始めやがって」
二人が言いあいになったところで教団の連中がイライラした顔で怒鳴りだした。
そしてそれとほぼ同時に――グリンの眼鏡がキラッと光りました。
「ガキはすぐムキになる。それは魔法使いでも何でも変わらんな。愚かしい」
「愚かしいのは果たしてどっちでしょうか?」
「何だと?」
ラーサの雰囲気が一変し奴らを挑発。それと同時にグリンが立ち上がり懐から何かの種を取り出した。
「よくやってくれたのだよブルック! 我は成長を促進し眼の前の敵を拘束するだろうグリーンバインド!」
グリンが密かに詠唱を完成させると同時に車内に種をばら撒いた。
直後一瞬にして芽が伸び蔦になり教団の連中を拘束していきます。
「な、何だこれは!」
「さては奴ら魔法を」
「慌てるな。そんなもの切り捨ててしまえ」
「させません! 花の香りで眠れスリーピングフラワー!」
私もグリンの様子を見て詠唱していた。魔法の完成と共にグリンの蔦に花が開きその香りで拘束された連中は勿論逃れた奴らも眠らせていく。
「な、眠りにまでだと? チッお前らすぐにこっちに――え?」
残ったのはリーダーらしき男だけ。その男はすぐに外に控えていた仲間に助けを呼んだけど見ると窓の外ではアネの活躍で既に倒れた面々が凄いラーサの従魔ってこんなに強かったんだ――
「どうやらこれで決着はついたみたいですね」
「は、ははは! どうだこれが魔法の才能に長けた私達の力だ!」
「ホッホッホ意外と大したことありませんでしたわね!」
ラーサが勝利を宣言するとシルバとフレデリカも立ち上がって何か得意になって笑ってた。
でも二人って特に何もしてないような……それはそれとして流石にあのリーダーらしき男もこれ以上何も出来ないよね?
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