第227話 襲われた学園行きの馬車

side アン


 私達の乗っていた馬車が急停止し馬車の中に黒ローブを纏った何者かが入ってきた。


 それぞれ剣やナイフを抜いていて明らかに学園関係者じゃない。そもそも御者のおじさんが危険だからと警告していた相手ですし――。


 それにあのおじさんの悲鳴も聞こえてきたし一体何がどうなってるの?


「な、何だお前たちは! 盗賊なのか!」

「だ、だったら襲う馬車を間違ってますわ! 私たちは金目の物なんて持ってませんわよ!」


 シルバとフレデリカが叫んでこの馬車を襲っても何の意味もないって相手に訴えてるみたい。


 だけど、そんなことで納得するのかどうか……。


「馬鹿だね。さっきの外での会話を聞けば盗み目的じゃないってわかりそうなものじゃないかい」


 ラーサの肩の上でアネが呆れたように言った。そういえば外でも御者のおじさんが盗賊かって確認を取っていたような――


「ま、どっちにしろあたしが乗ってた馬車を襲ったのが運の尽きだね。ラーサ言ってくれればいつでもあいつら処理してやるよ」

「待って。外も囲まれてるしアネだって今の状態じゃ本来の力は発揮出来ないんでしょ?」


 アネはやる気十分なようだ。凄く好戦的だけど何だから頼りになる。だけどラーサは相手を警戒しているみたいだよ。


 でも、確かに馬車には謎の集団全員が入れるわけじゃない。今入ってきたのも仮面を被ったのが三人。


 それ以外は外にいて馬車を完全に囲ってしまっている。この状況で下手に手を出すなんて自殺行為だと思う……。


「全くさっきの塵といい我々を盗賊風情と間違えるとは失礼も甚だしい」


 真ん中にたった仮面の人物が頭を振って答えた。声からして男。それに仮面が他とは違うからこの中ではリーダーなのかもしれない。


「やれやれ突然馬車を止め武器を片手に集団で襲いに来る連中が盗賊でなくて一体何だと言うのだよ」

「ぐ、グリン駄目だよ刺激しちゃ!」


 眼鏡を直す仕草を見せながらグリンが相手に言い放った。煽るようなセリフで私もドキドキする。


 隣のブルックも同じ気持ちなようです。


「口の減らないガキだ。これだから神に背きし断罪者は。しかも事もあろうに魔法を学ぶ学園に通おうなど――やはり神にとって今後害にしかならない芽は早い内に摘んでおくに限る」


 リーダーらしき男が言った。仮面の奥に見える冷淡な瞳に背中がゾワゾワした。


「やっぱり――魔狩教団の連中ですね」

「ほう。流石は大罪人であるマゼルの妹といったところか。他の連中よりは敏いようだな」


 仮面の男の視線がラーサに向けられた。魔狩教団――確かに今そう言っていた。そういえば聞いたことがある。


 各地で魔法に携わる人を次々と殺して回っている危険な教団があるって――それがこの連中?


「貴方達に褒められたところで何も嬉しくないです」

「ははは。大賢者などと煽てられうぬぼれたウジ虫を兄に持つだけに気位だけは高いようだな」

「――お兄様の事を悪く言うのは許しませんよ」


 え? な、何かラーサから凄い圧力を感じるよ……。


 あいつらはもしかして触れたらいけないものに触れたのかも――


「お前たちは何か勘違いしているようだが――われわれは高い魔法の才能を買われ今学園に向かってる途中なのだよ。ここにいるのは私も含めて下手な大人顔負けの実力を兼ね備えている。マッタリ教団だからマヌケ教団だか知らないが子どもだからと甘く見ていたら痛い目を見るのは貴様らなのだよ」


 グリンが立ち上がり何かとんでもないことを言い出しだよ! えっと確かに魔力が高いとか色々評価されては来たけど~。


「ちょグリン何を言ってるんだい!」

「そうよ私達を巻き込まないでよ!」


 あ、シルバとフレデリカは巻き込まれたくないって言動に出てます。


「お前たちも覚悟を決めるのだよ。この状況で何もせずにいたなら学園どころではない。これから何をされるかわかったものではないのだよ」

「へぇ。中にはマシな事を言うのがいたもんじゃないさ。ラーサあんたも覚悟を決めた方がいいよ」


 グリンは私達にも抵抗するべきだと伝えて来てるようで、しかもアネもラーサに動いた方がいいと言っている。


 でも、私は戦いなんてしたことないしどうしよう――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る