第225話 どんどん乗り込んで来る生徒達
side アン
「これで文句ないんだよねぇ」
「アネありがとう」
「アネ様感謝致します。それにしても――」
ラーサの肩の上でアネが腕を組んで問いかけていた。ラーサもそのことにお礼を言っていたね。
お付きの人はアネをジッと見ていた。やっぱり珍しいんだと思う。
「ちょっと、結局それを連れて行きますの!」
「お嬢様。見ての通り足も変化しましたしここは大人しくしておいた方が……」
「た、確かに少しはマシになったですけどだからって!」」
「君たち。そろそろ馬車が出るから大人しく座ってなさい」
お付きの子がフレデリカに説明したけどまだ納得いっていないみたい。そこに御者の声が響いた。
「な、貴方私を誰だと思って!」
「学園では貴族の権威など意味はない。文句があるなら降りてもらってもいいのだぞ」
更に御者から注意が入った。確かにいい加減馬車も出ないといけないもんね。
フレデリカは不満を口にしていたけど御者に強く言われてしゅんっとして席に座ったよ。でも学園では身分で区別しないというのは本当だったみたい。
「それでは出発するぞ」
馬車が動き出した。このまま学園に向かうのだろうか? だけど席にはまだ空きがあるから他にも乗る生徒がいるのかも。
「学園までは結構かかるのかなぁ」
「この馬車かなり速いようなので思ったよりは早く着きそうだけどね」
ラーサが答えてくれました。確かに何かしら魔法が掛かった馬車なんだと思うけど普通の馬車よりもずっと速いです。
「そろそろ停車する。そこでこの馬車で乗せる生徒は最後だ」
御者のおじさんが教えてくれた。この馬車は御者を含めて九人乗りだ。今は御者と生徒が五人乗ってるから後三人は乗れることになる。
馬車が停車し扉を開けて三人の男の子が乗ってきた。ずっと女の子ばかりだったから何だか新鮮に思えてしまうよ。
「ほう? これは驚いた。まさか私と同じ馬車にこのような可憐な華が咲いていようとはね」
そう言って一人の男の子がやってきた。銀色の髪をしていて後ろ髪が癖の強い広がり方をしています。
「あら? 見る目は確かなようね。ですがこの私にそのような態度百年はや――」
「本当になんて綺麗な華だ。これは運命かもしれないな」
「――は?」
「え?」
えっと銀色の髪をした男の子はラーサの側までやってきて話しかけていました。フレデリカの肩がプルプルと震えています。
「ちょっと貴方! サンドール公爵家の私を無視してそのような田舎娘を優先させるとはいい度胸してますわね!」
フレデリカが立ち上がりお付きの女の子がまぁまぁと抑えようとしてます。無視されたのが許せないのかなぁ?
「フン。正直君のような女は見飽きているからね。それにサンドール家の息女といえばわがままで有名だ。私は中身を重視するタイプなのだ。さ、君はこちらへ」
「え? いきませんけど……」
何だか銀髪の子がラーサの手を掴もうとしたけどあっさり手を引っ込められてます。
「ハハッ、いくら私がチェリオ侯爵家が期待の星。シルバ・チェリオだからといって照れることはない」
髪を掻き上げながらそんなことを口にした――この人すごい自信家……。
「チェリオ――な~んだ。誰かと思えば最近落ち目で有名なチェリオ家の愚息ですのね。道理で見る目がない筈です」
「な! お前こそやはり性格悪そうだな。大体私は彼女を誘ってるんだ! 関係ないのは黙っておけ!」
「えっと、誘われても困るのですが……」
あぁラーサが眉を落として困り顔です! これは良くない!
「あの。席は決まってるようなのでそのとおりにした方がいいと思いますよ……」
勇気を出してシルバにそう伝えた。うぅ、相手は高位の貴族みたいだから緊張するけど……。
「うん? ほうこれは素朴ながらなかなかの逸材。君きっと眼鏡を外した方が映えると思うよ。どうかな彼女と一緒にこっちへ」
「えぇ!」
「フン。そんな芋娘にまで手を付けるなんてやはり落ち目な貴族は節操がないですわね」
何かシルバに誘われてしまったよ~。ラーサの助け舟になれればと思って声を上げただけなのに。
そしてフレデリカがまた悪態をついてしまってます。
「くっ、さっきから失礼だぞ! 大体私は魔力測定で777もあったのだ。チェリオ家はこれから変わるこの私の手でね!」
「お~ほっほっほ。高々777で大きく出ましたわね。私など測定結果800ですわよ」
「ぐっ、た、大した違いではないだろう!」
二人が急に魔力の多寡で張り合いだした! だけどやっぱり凄い。私なんて320なのに……
「おや君たちどうしたかね? あぁ私の魔力を聞いて驚いたのかい?」
すると私とラーサを交互に見ながらシルバが髪を掻き上げていいました。確かに驚いたけど……。
「そんな筈ありませんことよ。私の魔力を聞いて怖気づいたに決まってますわ」
「えっと……」
あぁ! ラーサが更に困り顔に!
「全く。さっきから随分とレベルの低い話をしてるねぇ」
「ちょ、アネいいから!」
ラーサの肩に乗っていたアネが呆れ顔で語りだしました。ラーサはアネが何か言おうとしてるのを止めにかかってます。
「何言ってるんだい。大体あんたも何で黙ってるんだい。確か直前に測った魔力は1580だっただろう?」
「「1580!?」」
「わわわっ!」
アネの話を聞いて二人が驚いてるよ――でも凄いよラーサ。貴族二人の魔力を合計してもまだ足りないだけの魔力を持ってるなんて。
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