第219話 魔力0の大賢者、教科書の秘密に気がつく

「えっとねこの教科書は中心部分に秘密があるんだ」

「え? 中心に?」

「うん」


 僕が説明するとドクトルが小首をかしげた。そしてバラバラになった頁の一枚を手に取る。


「……これのどこに?」

「そうだね。窓の側に持っていくとよくわかるかも」

「窓?」


 僕が伝えるとドクトルが窓際に立って改めて頁を見た。そしてハッとした顔を見せる。


「これって、透かしが入ってる!?」

「うん」


 ドクトルもそこに気がついたみたいだね。


「ねぇ透かしって何?」

「「「「え?」」」」


 メドーサが疑問を口にすると、リミット、ガロン、アニマ、ドクトルの四人が口を揃えたよ。


「なぁマゼル透かしって知らないとやべぇのか?」

「えっと……」

 

 そしてアズールはそっと僕に耳打ちしてきた。透かしが何か説明はしたけどね。


「しかし確かに光に当てると文字のようなものが見えるが、これに何の意味が?」

「あ、それにこれ、透かしが入ってないのもありますよ!」


 ガロンは透かしに気づいたみたいだけどそれが何を意味するかはわからないみたいだ。アニマについては透かしの入っていない頁があることにも気がついたみたいだね。

「そう。透かしのある頁とない頁があって、更に片側だけ見ても駄目なんだ。だから――」


 僕は透かしの入った頁だけをまず集めた。その上で頁を組み合わせていく。


「こうやって組み合わせていく。これで皆もわかると思うんだけど」

「さっぱりわからないわよ」

「うむわからん」

「えっとね――」


 アズールとメドーサは組み合わせについて頭を悩ませていた。説明いしようかなと思っていると隣から嬉しそうな声が聞こえる。


「そうかわかった! これは魔法の記述に使う古代文字なんだ!」

「あ、そ、そっか。しかも、こ、これ、わりと基本的な文字」


 そう。ちなみに魔法を記述する際に使われる文字が昔から伝わる古代文字だ。


「うん。これって二つ組み合わせて数字を現す文字だよね――あ、そっか!」

「つまりこれが頁を現すということだなマゼル」

「うん。そうなんだよね」


 気がついてくれたみたいだ。つまりこの教科書は透かしが入っているという点、透かして浮かび上がる記号は古代文字な点、更に組み合わせることで頁を表してる点が特徴なんだ。


 つまりこの数字に合わせて頁を組み合わせていくと――


「あ、一冊の本になったよ」


 ドクトルが出来上がった本を見て目を丸くさせてるね。


「おいおい何で本の数が減ってるんだよ」

「やっぱり騙さされてるんじゃないの?」


 アズールとメドーサが怪訝そうな顔を見せる。確かに冊数が減ると不安にもなるかもだけど。


「このままちょっと読んでみようよ」


 皆に提案して僕も出来上がった一冊の教科書に目を通す。これは――すごくわかりやすい。要点もしっかり押さえられているし、しかもこれって――


「これってもしかしてこの中に今回のテスト範囲が収まってる?」

「あ、つまりこれを徹底的に勉強すれば」

「テスト対策に繋がるってわけか!」


 そういうことだね。だからイロリ先生はしきりに言っていたんだ。教科書をよく見ろってね。


「――皆わかるのかこれ?」

「騙されてるんじゃないの?」


 あ、でもメドーサとアズールは?顔で頭を悩ませているよ!


「え、えっとね、ここはこうなって……」

「アズール。この問題はね」


 とにかく教科書を読んでわからない点は皆で教え合うことになった。得意分野や苦手な分野はどうしてもあるもんね。


 でもこれで小テストは何とかなりそうかな。


 その後は皆でお昼を準備して食事を摂り、引き続き勉強に専念した。


 午後になるとイロリ先生も戻ってきたのだけど。


「――お前ら……」

「あ、先生おかえりなさい。教科書とてもわかりやすいですよ。本当にありがとうございます」


 そう僕が伝えると、先生は目をパチクリさせて僕を見た後、フンッと鼻を鳴らした。


「――俺は何もしてねぇよ。それよりシグルって狼を連れ帰ったぞ。外にいるから後は適当に何とかしろ。面倒かけるなよ」


 先生はそう言って頭を掻きながら教室を出ていった。


「シグル!」

「ピィ!」


 先生から話を聞いたアニマはメーテルと一緒に早速外に見に行ったね。でも、イロリ先生はやっぱり――

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