第218話 魔力0の大賢者、師匠からヒントを得る?
「へぇ最近のゴーレムは凄いんだねえ。びっくりだよ~サインしよっか?」
「いらないとお答えします」
師匠は再度メイリアにサインの確認をするけどやっぱり断られていたよ。
「ちぇ~マゼル~慰めてよ~」
「ちょ、何してるんですか~もう!」
よよよ~と僕にしがみついてきて師匠が目をキラキラさせた。いやいや師匠いい年なんだから。生まれ変わった僕より長生きなんだし。
「ところでマゼル~それ何してるの?」
「あ、うん。実は――」
師匠が興味を持ったようだから、僕は学園から支給された教科書について師匠に教えて上げた。
「へぇ~頁がバラバラねぇ――」
師匠が教科書を手に取りパラパラと捲っていく。
「スーメリア様。ここのイロリ先生というのが酷いんですよ! こんな教科書を渡して私達を追い出そうとしてるんです!」
「お前好きな作家だとわかった途端ころっと手のひら変えるんだな」
メドーサが師匠に泣きつく。その変わりようにアズールが驚いている様子だ。
師匠は正直変わったところもあるけど面倒見のいい人だし、理解して貰えたなら嬉しいけどね。
「ふ~ん……そのイロリって先生中々面白いことしているようだね」
「いや、全然面白くないぞ」
師匠が意味深に語る。それにアズールが反応しているけど、師匠のこの顔は――
「いや、今の面白いはきっといい度胸しているという意味だと思うぞ」
「あのスーメリア先生を怒らせるなんて……」
ガロンとドクトルは師匠の発言を別な意味で捉えちゃってるよ。いや、確かに師匠は怒ると怖いけどね。
「先生何かわかったの?」
師匠に聞いてみる。ここでは教師なわけだから先生と呼ぶけどね。
「そんな他人行儀な呼び方いやん。スーちゃんって呼んで(キラッ☆)」
「いや、今までそんな呼び方したことないし――」
瞳をキランっと光らせて戯ける師匠。いい人だし尊敬もしてるんだけど、おふざけが過ぎるところがあるんだよねぇ……。
「そうだねこの教科書なんだけど――ま、マゼルならこれぐらい理解出来ると思うよ。小難しいことは考えずに、ね♪」
師匠が僕の肩をぽんっと叩くと火の精霊や水の精霊光の精霊なんかも現れて僕を囲って輪になって踊りたしたよ。
「すっご~い。炎や水や光が踊ってるみたいだよ。流石エルフの大作家先生!」
リミットが腕を組み目を輝かせた。師匠が凄いのは確かだよ。ただ作家としてそこまで成功してるなんてね……。
「さてと、皆がどんな子かも確認出来たしね。私は一旦戻るよ~」
「え、も、もう戻ってしまうんですか?」
アニマが名残り惜しそうな顔を見せた。それはメドーサやリミットも一緒だね。
「あのスーメリア先生! 僕たちに勉強を教えてもらうわけにはいきませんか?」
するとドクトルが歩み寄りすがるように師匠に頼んだ。師匠は、ん~、と天井を見上げた後、ドクトルの頭を撫でる。
「ふぇっ!」
「大丈夫大丈夫。私が何かしなくてもきっとここの担任が面倒見てくれるさ~」
撫でられたドクトルがビックリしてるよ。そして師匠はイロリ先生について触れた。
「しかし、あのイロリという教師は俺たち相手に授業もしない。とても面倒見がいいとは思わないが」
ガロンが不満を口にする。
「ま、その辺りは色々考えがあってのことじゃないかな。どちらにせよ鍵となるのはマゼルとその教科書さぁ。それじゃあねぇ」
師匠はそう言い残し、手のひらをヒラヒラさせて帰っていった。
「いや、だからその教科書が問題なんじゃねぇか」
アズールが唖然とした顔で呟く。この教科書が鍵か。師匠は一見適当そうなところもあるけど、決していい加減なことを言う人ではない。
この教科書に何かが隠されてる――改めて僕は教科書を眺めてみた。
基本的な事――難しく考える必要は、ないか……あれ?
この教科書なんとなく引っかかりは覚えていた。頁と頁の繋ぎ目に違和感があったんだ。
それはもしかして、この記号――そうか! これが術式の一部だと考えれば!
改めて僕は全ての教科書に目を通す。そして確信した。
「エイッ!」
「「「「「「えぇえええぇえええぇええ!?」」」」」」
僕が掛け声と同時に教科書へ手をかけて一気にバラバラにすると、周囲から驚きの声が上がった。
「ちょ、マゼル何してるの!」
「あ、うん。一度本を断裁して纏めなおそうと思って」
これでそれぞれの頁を入れ替えることが出来るからね。
「え、えと、えと、そ、それに何か意味が?」
「ピ~?」
アニマと肩のメーテルが不思議そうにしていた。そうだね先ずはそこから説明しないといけないかな――
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