第205話 魔力0の大賢者、石化について知る

「これが私の魔法よ。私を中心に半径三メートル以内の生物を石化するの」


 皆の石化が解けた後、どこか諦めたような表情でメドーサが魔法について説明してくれた。でもそれで得心が行ったよ。


 リミットとガロンが石化しなかったのは範囲外だからだったわけだ。


「おいおい問答無用かよ」

「そうよ。文句ある? 石化中はかなり頑丈だからそう簡単にやられないって利点はあるのよ」

 

 不満を伝えるアズールだったけどメドーサとしては致し方なしと行ったところらしい。


「わ、私も石化してたんだ」

「一瞬だったから僕も気が付かなかったよ。詠唱もなかったよね?」

「私の石化魔法フリーダムストンは詠唱が無くても使えるの」

「ほう。それなら使いみちは多そうだ。範囲に気をつけていればいいし守りに徹したいなら十分役立つ」

「……ま、まぁそうね」


 メドーサはガロンの意見に同意したけど、どことなく自信がなさそうに感じるよ。


「ところで石化の解除はどうしてるのかな?」

 

 なんとなく気になったから聞いてみた。術者のメドーサ本人も石化してしまってたからね。


「――石化は三十秒で解けるわ」

「うん? それはいつでもきっちり三十秒ってことなのか?」

「……そうよ」


 メドーサが視線を逸してガロンに答える。きっちり三十秒で解除――


「それ解けた後すぐにまた使えたりするのか?」

「……無理よ。一度解けたら一分ぐらい使えないから」

「はぁ~? 何だよそれ。再使用までにかかる時間の方が長いじゃねぇか」

「う、うっさいわね。そういう条件なんだから仕方ないでしょ!」


 不機嫌そうにメドーサが答えた。


「で、でも完全防御は凄いと思います!」

「ピ~」


 アニマがメドーサを嘆賞した。ただメドーサは素直に受け取れてない印象だね。


「いいわよ無理して褒めなくても。わかってるわ。もしこれが本当に使える魔法ならこんなところにこないでしょう。私の魔法は自由が効かない。それが欠点だからこうなったのよ」

「そこまで自分を卑下することでもないだろう」

「そうだよ。使い方だと僕は思うよ」


 ガロンがむくれるメドーサをなだめる。僕も彼に続いて気持ちを伝えた。可能性は十分にあると思うし。


「まぁメドーサのことはわかったよ。それよりこっちはどうなってんだ?」


 アズールが頭を掻きながら倒れてるリミットを見ていた。


「さっき魔法を使ったら急に倒れたんだ。シアンの話だと魔力が切れたらしい」

「魔力が? そんな激しい戦いになったの?」

「いや。ヴィルトシュヴァインはリミットの魔法一発で倒れたんだけどね」


 ガロンの説明を聞いてドクトルが目を点にさせた。だから僕が直前の出来事を説明して上げる。


「つまり一発しか魔法使ってないのに倒れたのかよ。一体どうなってるんだ?」

「どっちにしてもこのままってわけに行かないわよね」

「そうだね運んで、待って!」

「今度は俺にもわかった! 気をつけろ――」


 僕に合わせるようにガロンが警告を声を上げる。すると地面が盛り上がり大きな蛇の魔物が何匹も出現した。


 マッドデッドスネークの群れか。


「お、おいおい! こんなのに囲まれたら流石に――」

「え?」


 アズールが驚嘆した、と思った時にはもう石化していた。しかも今度は僕以外全員だ。メドーサの魔法か。確かに既に一分は過ぎていたし今回は半径三メートル以内に皆入っていたから石化しちゃったんだろうけど――


「えっと僕は石化して、ないんだよねぇ」


 間違いなく僕も範囲内なんだけどね。隣のガロンは石化してるし。


 う~ん――まぁ考えても仕方ないか。それに三十秒きっちりで解けちゃうならそれまでに何とかしないとね――

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