第206話 魔力0の大賢者、蛇を――
「あれ? 今何か蛇の魔物がいたような?」
「う、うん。間違いないみたいだね……」
「いやしかし驚いたな」
「こ、これ全部マゼルくんがや、やっつけたのですか?」
「あ、うん。蛇も栄養があるしね」
すべてのマッドデッドスネークを倒して解体していたところで石化が解けたようだね。とりあえず三十秒以内で倒せてよかったよ。
全部で五匹いたけど子どもの頃に相手したデススパイダーよりは単体としては弱かったんだよね。デススパイダーを倒したときと同じ用に抗体でまとめてあっさり倒れてくれたし。
「ゲッ! まさかこれも食べるの?」
「え? 変かな?」
メドーサが仰け反りがちに驚いていた。あまり蛇は好みじゃなかったかな?
ローラン領でもそう言えば蛇を食べることはなかったかな。前世では食べてたからある程度詳しくはなったんだけどね。
「いや、確かに蛇は調理法でいくらでも美味しくなるよ。見た目で忌避感抱く人はいるみたいだけど特にスープとの相性が良いんだ」
「ああ。ただ蛇は骨が多くてな」
どうやらドクトルとガロンは食べたことがあるみたいだ。蛇の感想を口にしていたけど多分それは一般的な蛇の話だね。
「美味しいって何!? ご飯!」
するとリミットが起き上がってきてよだれを垂らした。良かった目が覚めたんだね。魔力がある程度回復してきたんだと思う。
「リミット。お前……ずっと気絶してたんだぞ?」
「え? あ、そうか。私魔法を使ったから……」
「うん? どういうことだ?」
「えっと、そ、それよりこれ凄いね! 皆がやったの?」
リミットが話題を変えるように蛇に話題を持っていった。
「俺達も動けない状態だったからな。気がついたらもうマゼルが倒していたんだ」
「そうなんだ。それにしても本当に凄いねこれ」
リミットが解体した蛇に興味津々だ。せっかくだからさっきの疑問の答えを教えてあげる。
「さっきのことだけど魔物でこのサイズの蛇なら骨はそこまで多くないんだよ。ほら」
「うん? おいおいもう解体してるのかよ」
「しかも殆ど終わっている上見事な腕前だ」
「僕も魔法で出したメスで解体出来るけどこのサイズをこんな手早くは自信ないかも……」
「本当凄いよね。メドーサは見ないの?」
「み、見ないわよ!」
「ちょ、ちょっと怖いかも」
「ピ~」
近づいてきた皆が解体したマッドデッドスネークの感想を述べていく。ただメドーサは気味悪がっているね。アニマは離れたところから観察してるけどメーテルが僕の肩に飛び乗ってきた。
随分と興味深そうだ。いやもしかしたら食べたいと思ってるのかな。鷹は蛇を食べるからね。まぁこれはサイズが違いすぎるけどね。
「後で君にもわけて上げるね」
「ピ~♪」
やっぱり食べたいみたいだ。凄く嬉しそうだし。
「それにしても本当に骨が少ないな。蛇は食べる身の少なさが欠点だったんだが」
「このタイプの魔物は魔力を制御して動いているからね。だから骨に頼らない」
ガロンが疑問に思ってるようだから僕の知る知識で答えた。だから蛇に関しては魔物の方が食べごたえがある。
「なるほど。骨に頼らなければ自然と骨への依存がなくなって結果的になくなっていくってわけか」
ドクトルは興味深そうに聞いていたね。
「それよりも早く食べた~い」
「あんたそれ食べるの?」
「お腹減ってるし」
リミットのお腹がぐぅ~と鳴いた。よっぽどお腹が空いてるんだね。メドーサはやっぱり蛇に苦手意識あるみたいだけど。
「ヴィルトシュヴァインもあるから肉は十分だと思う。後は野草とかも手に入ったらバランスいいよね」
「それぐらいは俺が手に入れてみせるぜ。このまま負けっぱなしってわけにはいかないからな!」
「え? 負け?」
「川に向かって魚を捕まえるか……」
「野草の種類は結構わかるし……」
何かアズールが対抗意識を燃やしてるような……勝負をしてるわけではなかったんだけどね。
でもそこから皆もやる気を出して結構な量の食材が集まったよ。
「……なぁ。これ集めたはいいけどどうやって持ち帰るんだ?」
「「「「「あ――」」」」」
アズールの疑問に五人の声が揃った。確かにそもそも魔物の肉だけでも結構な寮があるからね。
「集めるのに夢中でうっかりしてたね」
「もうここで食べちゃおうよ」
「いや、道具がないだろう」
「心配ないよもうしまったから」
「「「「「「「一体どこに!?」」」」」」」
今度は七人の声が揃った。
「えっと空間になんだけど……」
「……空間収納――最上級とされる空間魔法の一つ」
シアンが小さな声で呟いた。いや、でもそれはちょっと違うというか――
「嘘でしょ。本当に魔力0でそんな凄い魔法が使えるの?」
「まさか、ほ、本当に大賢者の再来?」
メドーサとアズールに随分と驚かれた。いや、確かに元大賢者だけどね!
「いや、ほら! 僕もちょっとだけ頑張ってみた結果というか!」
「ちょっとだけ頑張った程度でどうにかなるものでもない気がするが……」
「凄いよねメーテル」
「ピ~♪」
ガロンからもツッコミが! アニマはメーテルに聞いていてメーテルはなぜか嬉しそうに鳴いていた。
「ほら、それより一旦戻って料理しないと。ね?」
「そうそう! 細かいことは後にして食事だよ!」
とにかく僕は皆を促して旧校舎に戻ることにした。リミットも我慢できないって様子だったしね。
そろって校舎に戻るとイロリ先生の姿があった。
「何だもう戻ったのか」
「もうじゃないわよ。あんな危険な魔物が出るなんて知らなかったわよ!」
「奥には魔物が出ると言っておいただろうが」
メドーサが先生に文句を言ったけど先生の態度は素っ気ない。
「そこまで奥だとは思えませんでしたよ。何かあったらどうするつもりなんですか?」
「知るか。忠告したんだから俺に責任はねぇよ」
ドクトルも先生に向けて不満があるみたいだ。でも先生は相変わらず突慳貪な言い方だね。
だけど、本当は僕たちの事を気にかけてくれてるとは思うんだけど。
「先生は今戻ったんですか?」
「……何言ってやがる。俺はずっと部屋で寝ていた。起きたらたまたまお前らが戻ってきたんだよ。たく、お前らみたいのをいちいち相手するのも面倒だもう一眠りするから起こすなよ」
そう言い残したイロリ先生は、床に土の跡を残しながら部屋に戻っていった――
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