第203話 魔力0の大賢者、クラスメートと狩りに
「マゼルってちょっとお人好しよね」
狩りに行くことが決まり旧校舎から出て獲物を求めて歩いているとメドーサがそう言って肩を竦めた。
う、う~ん。お人好し、なのかな?
「自分ではよくわかってないかも」
「だってさっきもあのやる気なさそうな先生に御礼まで言って」
「あ、で、でもそれは、危険を、教えてくれたからなんだよね?」
「ピィ~?」
メドーサはイロリ先生にあまり良い感情を抱いていないようだ。聞いていたアニマは確認するように聞いてきたけどね。メーテルも首を回しながら鳴いている。
「あれだって……ただ面倒が嫌なだけでしょ?」
「う~んでも……ほら調理器具とか」
僕は厨房を確認したときの様子を思い出して言った。先生の言うように食材さえあれば調理できるぐらいの道具は残っていたんだけどね。
「あれがどうかしたのか?」
ガロンが話に加わった。ガロンも器具は見ていたね。
「手入れ、されていたよね」
「うん? 手入れ?」
僕の言葉にアズールが視線を上げ腕を組む。
「あぁ。確かにそうかも。建物は古いし結構ボロボロだけど、道具に痛みはなかったもんね」
ドクトルが思い出したように言った。そう。つまり誰かが手入れをしていたってことだけど……
「なんとなく先生が手入れしてくれたのかなって、そう思ったんだけど……」
「あの先生が?」
メドーサが眉を顰めた。やっぱり不信感は消えないみたいだ。
「それよりも~早く何か獲物を狩ってお昼にしようよ~」
リミットが手持ちの杖をブンブン振り回した。よっぽどお腹が空いてるんだね。
「ならこっちかな」
「え?」
「そっちに何かいるの?」
結構緑の濃い森だけど、食材になりそうな動物の気配はよくわかる。
進んでいくと下草を貪る野ウサギの姿があった。
「本当にいた……」
「凄いなマゼル。俺も気配には敏感な方だと思ってたが……」
アズールとガロンが感心してくれたようだ。さて、後はウサギを上手く仕留めないとね。
「リミット。貴方色々魔法が使えるんでしょ?」
「え? あ、いやぁ私はあんな可愛いウサギはちょっと……」
「んだよ。だったら俺が火魔法で」
「待て待て! こんなところで火なんて撃ったら火事になるぞ」
リミットはウサギを仕留めるのに忌避感があるみたいだ。だからかアズールが前に出たけど、確かに周囲に燃えやすそうな植物も多いしこの場で火魔法だと厳しいかもしれないね。
「ピィ~!」
するとアニマの肩からメーテルが飛び出して野ウサギを仕留めた。
「あ、ありがとうねメーテル」
「ピィ~」
「おお~やるじゃん」
メーテルの活躍にアズールから感嘆の声がもれた。
「これで食べられるの?」
「いや、先ず処理しないとね」
「それなら僕に任せて」
ドクトルの手に一本の刃物が出現した。
「これが僕の魔法。この魔力で生まれたメスで――」
シュパッと毛皮を接ぎ血抜きしてくれた。見事なメス捌きだね。
「やるなドクトル」
「あはは、一応生物の体については常に勉強しているからね」
感心するガロンにドクトルが答えた。照れている様子はあるけど、普段から勉強しているのがよくわかる手さばきだね。
「でも野ウサギ一匹じゃ足りないよな」
「勿論だよ。もっと大物仕留めないと!」
「リミット。貴方ねぇ。それなら自分でもちゃんと仕事しないと」
「え? あ、あはは~」
メドーサとリミットがそんな話をしていると――大物の気配を感じた。
「皆気をつけて」
「え? 何で?」
「ブモォオォッッォォォオオオオ!」
その時鼻息を荒くさせた巨大なイノシシがこっちに向かって突撃してきた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます