第198話 魔力0の大賢者、クラスメートを知る
僕たちZクラスは校舎兼寮で生活することになった。授業もここでやるらしいよ。
そしてせっかくだからとそれぞれ自己紹介することになったんだ。
「先ずは俺だな。俺はアズール・ブレイズ! 得意なのは火魔法! 魔力は200! あのゼロの大賢者を超える大魔導師になるのが俺の夢だ!」
ビシッと親指を自分に向けてアズールが改めて皆に自己紹介した。ワイルドな赤髪の少年だね。
「あんたはもう聞いたわね」
「あぁん!」
「そもそも得意って自分を燃やしてたよね?」
「ぐっ!」
緑髪の少女はどこか冷めた目を向けていた。オレンジ髪をツインテールにしている少女は入学式のことを思い出して言ってるみたいだ。
「あれはなんつぅか、感情が高ぶると時折あぁなんだよ。気にするな!」
「気にするわよ。危ないし……全く。まぁいいわ」
緑色の髪をファサッと掻き上げた後、緑髪の少女が続く。
「私はメドーサ・ストーンよ。魔力は160で扱う魔法は――石化魔法よ」
胸に手を当てて彼女が言う。石化魔法か。魔物にもそういう能力を持つのがいるけど魔法で使えれば強力そうだね。
「石化魔法だなんて凄いね」
「え? え、えぇ。ま、まぁね」
僕がそう伝えるとメドーサがちょっと困ったような顔になった。あれ? 何か不味いこと言ったかな?
「僕はドクトル・オペルドール――魔力は5だよ」
今度は癖のある灰色髪をした少年だ。魔力が5と聞いて皆がちょっと驚いている。僕は0だったりするけどね。
「魔力が5って最低限の魔法しか使えねぇんじゃないのか?」
「う~ん、そうだね。僕が使えるのは――」
アズールに問われると、反応したドクトルが右手を掲げた。すると手の中に小さな刃物が出現した。
「これは、魔法で作ったのか?」
「正確には魔力形成だね。魔力を利用してメスを作ったんだ」
「メス?」
ドクトルの発言に小柄な女の子が反応を示した。
「メスは一部の地域で使われている器具だよ。僕はそれを魔法で作成している」
「ふ~ん。でもあまり強そうじゃないけどそれで戦うの?」
「戦えないこともないけど、僕はこれを医療目的で使う。つまり怪我した人を治すのに利用するんだ」
「は? 何言ってるんだ? 刃物で怪我が治るかよ」
アズールが怪訝そうに言葉を返す。ドクトルは笑顔を崩さず答えた。
「これだけだとね。だから僕はこれも使う」
ドクトルの左手に糸が生まれた。あれも魔力で形成された物みたいだ。
「へぇ器用なんだね」
「これも魔力でか? しかし細い糸だな」
魔力で形成された糸に触れてアズールが感心していた。僕も見てみた。細いけどかなり丈夫そうだ。
「これは一本だけなのか? 伸びたりは?」
「伸びる長さと本数は比例するね。一応一本3メートル程度なら五本は出せるかな」
青髪の少年に問われ、そうドクトルが答えたよ。
「う~んでも、魔力5でこんなに出せる物? 貴方本当に魔力5?」
「それは、間違いないよ。うちは元々魔力が低い家系なんだ」
「ふむ。ならばますます不思議だな」
「何か秘密があるのかな?」
「魔力の制御が凄く巧みなんじゃないかな」
何となくて見てて感じたことを言った。するとドクトルが驚いた顔で僕を見る。
「魔力の制御? それがそんなに関係あるのか?」
「魔力の制御が高ければそれだけ魔力の無駄がなくなるからね。しかも魔力を一点集中して圧縮もからめてるんじゃないかな? 凄い技術だと思うよ」
魔力0の僕が言っても説得力ないかもだけど、でも魔力はなくても細胞の微妙な変化や動きで間接的に魔力を感じ取ることは出来るからなんとなくそういうのはわかったりする。
「凄いなそこまでわかるんだね」
「も、もしかして魔力0であれだけの魔法も使えるのもその制御に秘密があるのかマゼル!」
「え? えっと、アハハ――」
鼻息を荒くさせてアズールが聞いてきたけど全く関係ないんだよね。そもそも魔法じゃないから……
「う~んでもやっぱりわからないなぁ。これでどうやって治療するわけ?」
「例えば患部や病巣を切除してから糸で縫合したりとか、そういったやり方が基本だね」
「げっ、やっぱ切るのかよ」
「ますます悪化しない?」
「それなら教会の治療魔法に頼った方が安心なような……」
「……まぁ。そういう風に思う人も多いよね」
ドクトルがスッと目を細めた。何だろう? 何かとても淋しげででもぎゅっと拳を握りしめているあたりに執念のようなものも感じるような――
「手術は治療魔法だとどうしても治しきれない病巣や魔法でカバーしきれない部位の怪我には有効だよね」
どちらにせよ皆に誤解があるみたいだからそこは僕からもフォロー出来たらなと思った。
「そうなのかマゼル?」
「うん。もともと治療魔法は目に見える傷を治すのは得意だけど見えない場所となると結構大雑把なものだったから……」
まぁこれも転生前の知識ではあるけど、ただ完璧に治療が出来る魔法の使い手はそこまで多くないとは思うんだよね。僕の場合魔法ですらないし。
それに手術は転生前では結構見た技術だ。
「――そ、そうなんだよ! 治療魔法だって万能じゃない! それに高度な魔法の使い手は少数だ。だから手術だって十分怪我の治療に役立つ!」
するとドクトルがキラキラした目で僕の手を握ってきて熱く語ってくれた。
何か凄く喜んでくれたみたいだけど、皆のあっけにとられた様子を見て、ハッとした顔になってすぐに離れたよ。
「次は私ね!」
今度はオレンジ色の髪をツインテールにした少女が元気よく自己紹介を始めたね。
「私はリミット・オーバー! 魔力は1100よ! そして得意な魔法は火、水、土、風! この辺りなら問題なく使用可能よ! 驚きなさい!」
「お、おいおい魔力といいマジかよ!」
アズールが仰天していた。それにしても魔力1100は確かに相当高いね。魔法も色々使えるようだけど――
「いや、だとしてどうしてそんな貴方がこのZクラスなのよ?」
「ギクッ!?」
メドーサが訝しげに問いかけた。あぁそこは皆もちょっと気になるところなのかなぁ?
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