第195話 魔力0の大賢者、思いがけない教師に驚き

 ラクナは元の場所に戻っていき理事長のリカルドは挨拶を再開させた。それにしても無駄に長い気がするよ挨拶。


「な、なぁ。マゼルは本当にあの大賢者の生まれ変わりなのか?」


 ふと、アズールが僕にそんなことを聞いてきた。なんとも返答に困る質問なんだけど……


「えっと、そういう風に言われることもあったけど、そんなことはないよ」

 

 でも流石にこれはそうですとは言えないしなぁ。信じてもらえるとも思えないし。


「馬鹿だね~そんな筈ないじゃん」

「ま、まぁそうだよね」


 するとオレンジ色の髪の少女が呆れたように口にした。アズールが頬を描いて答える。どうやら自己完結したようだね。


 僕としても助かったけど。


「でも、さっきの魔法はマジ凄かったな」

「え? あれってあのラクナが自分で解除したんじゃないの?」


 アズールが興奮した口調で言ってきて、そこに緑髪の少女が口を挟んだ。


「ちげぇよ。近くで見ていたからわかる。あの野郎は魔法を解除するつもりなんてなかっただろうし、何より解除で粉々になるなんておかしいだろう? なぁマゼルがやったんだろうあれ?」

「えっと――ま、まぁ一応」


 これについてはごまかしても仕方ないしね。何よりこれから一緒に勉強するクラスメートなわけだし。


「あんな強力な魔法を――どうやら大賢者という噂は伊達ではないようだな」


 青髪の少年が唸りながら呟いていた。


「そこうるさいぞ!」


 皆と話しているとゲズルに注意されてしまった。まだ入学式の途中なわけだしこれは仕方ないか――


「さて。ここで君たちと同じように今年から我が学園に新しく赴任することになった教師を紹介しよう」


 新しい教師か――そしてリガルドに促され壇上に五人の男女が上り整列した。て、あそこにいるのって!


「……あの人」

「まさか! あのスーメリアさんが!」

「これは驚いたな」

「宿屋であった人だ~」


 皆の声が自然と耳に入る。どうやら皆も驚いたようだね。僕もびっくりだよ。まさか師匠が教師として赴任してくるなんて……


「あれってエルフか?」

「留学生だけじゃなく、教師としてもやってきたんだ」

「てか何あの格好? 奇抜すぎない?」

「あ、はは――」


 Zクラスの皆も真っ先に師匠に注目した。う~ん転生前から知っていたから僕は慣れちゃっていたけど、改めて見ると目立つ格好だよね本当。


 師匠はそれぐらい奇抜な格好をしていた。世界中を旅しては気に入ったものを購入したり身につけたりしているうちにあぁなったらしいけど、東の島国に伝わる着物を意識した衣装やガンマンが暮らす国で過ごして手にいれた魔法銃に弾丸をしまえるベルト、他にも何か色々とごちゃまぜになった出で立ちだ。しかも布面積が狭いし――親代わりの師匠だからちょっと恥ずかしい……


「先ずは右からだが見ての通り彼女もまたエルフ。名前はスーメリア。知る人ぞしる冒険作家だ。世界中を旅して周りその経験を活かして執筆した著書はどれもベストセラーとなっている」


 師匠の名前を聞いた生徒たちがざわめきだした。やっぱり今は作家として有名なんだね。


「――彼女の経験は学業においても役立つと私は考えた。何より精霊魔法の使い手でもある。教師としては申し分ない逸材だろう。私の申し出を快く受けて頂いたことに感謝する」

「うん。まぁ弟子の通う学校でもあるしね」

「うん? 弟子?」


 し、師匠また余計なことを!? リカルドも怪訝な顔を見せているよ!


「あ! い、いや。私がやってきた以上生徒は皆弟子みたいなものって意味なのさ~」

「あぁなるほど。はは、なるほど弟子かそれはいい。では学園の師匠として存分に教鞭を振るって欲しい」


 ふぅ。師匠も流石にここはまずいと思ってごまかしたようだ。そしてリカルドは残りの教師についても紹介していく。


 師匠の隣に立つ三人は皆教会の人間が身につけるような格好をしていた。


「こちらのお三方はこの度、聖魔教会から特別に来てくれた。右からエミス・ハミル司祭、ゼミラル・ローハイム司教、ウリアル・アインへーぜ司祭だ。学園ではこれまでも治療魔法の授業を行なっていたが、より専門的な知識を身に着けて貰うため今年からは直接教会の教義を受けてもらうこととした」


 教会――か。まぁ流石に学園に来てるのはまともなんだと思うけどね――

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