第192話 魔力0の大賢者、入学式でクラスわけについて知る

 流石にリカルドの話を聞いて出ていく生徒はいなかったけど、ざわめきは起きていたよ。


「ま、まぁそういうことなら納得しておいてやるか」

「わ、私も」


 そしてアズールと女の子の方が苦笑交じりに一歩引く様子を見せた。


「さてどうやら文句もないようだしな。そして勿論だが例え殿下であろうと我が校に入学した瞬間から皆と平等に扱うことなる。さて折角なので我が校への留学を決めてくれたイスナに新入生代表として挨拶をしてもらおうか」


 ここにきてリカルドは殿下呼びからイスナと呼び方を変えた。これで平等に扱うという点を強調しているようだ。


 そしてリカルドに促されイスナが壇上に姿を見せた。クイスの姿も壇の端で見守っている。


「お、おいあれがエルフの留学生かよ」

「耳、本当に尖ってるんだ……」

「てかめちゃめちゃ可愛くね?」

「端にいるのもエルフだけど向こうも可愛いなちょっとキツそうだけど」

「はぁ尊い――」


 イスナが壇上に立ったことで明らかにこの場の空気が変わったね。男女関係なく見惚れている。


「ただいまご紹介に預かりましたイスナです。先ず今日こうして魔法学園に入学できた事、そして後の魔法使いを目指す皆様と一緒にこの魔法学園で学べることに感謝致します」


 イスナは肝が座ってるね。新入生全員の前で挨拶を頼まれても全く動じること無く堂々としている。


「今ワグナー理事長の話にあったように私は留学生として入学を許されました。エルフが魔法学園に通うのはこれが初となります。ですが皆様と同じ新入生であることに変わりはありません。私はエルフとしても魔法使いとしてもまだまだ未熟です。ですからどうか私に至らない点があったり間違いがあった時には遠慮なさらず教えて下さい。どうか皆様クイス共々仲良くして下さると嬉しく思います――」


 イスナの挨拶を皆静かに聞いていた。鈴が鳴るようないい声をしているから聞き入ってるのかも知れない。


「やるわねあの子。何気ない挨拶のようで理事長の言うことを真に受けないよう暗に伝えているわ」


 後ろから少女の声が聞こえた。この声は緑髪の少女だね。


 そして僕もチラッとリカルドの顔を見たけど若干眉間に皺が寄っている。リカルドはイスナが留学生として入学したことに文句があればやめろとまでいい切ったけど、そのイスナが何かあれば遠慮なく言って欲しいと皆の前で宣言してしまってるわけでそれが面白くなかったのかもしれない。


 そしてイスナの挨拶が終わると聞いていた生徒たちから一斉に拍手が起きた。僕達も一緒になって拍手する。


 今ので多くの生徒の心を掴んだねイスナ。

 そして挨拶を終えたイスナと入れ替わり再びリカルドが壇上に立った。


「とてもいい挨拶だった。流石大自然と共に生きるエルフは心が広いようだ。今後もしっかり注目させてもらおう」


 チラリとイスナを視線に入れながらリカルドがマイクを使って言った。


 注目ね……リカルドからは笑顔も消えたよ。


「さて、先程特別学区の話をしたが我が校では更に新しい制度を取り入れた。先ず合格発表の際に文字の色がそれぞれ違ったことに気がついた生徒も多いことだろう。あの色はそのまま君たちの入るクラスに繋がる。金色の文字はSクラス――これは主に試験が免除された生徒が入るクラスだが今回は受験生でも二人だけSクラス入りとなった生徒がいた」


 リカルドが全員にクラス分けについて説明していく。あの文字はそんな意味があったのか……そして金色と言えばアダムの番号がそうだった。それが後一人いるということか。


「そして銀色はAクラス。これも受験組としてみれば最高クラスの成績と見て良いだろう」


 銀色はアイラとビロスだね。


「そして赤色がB、青色がC、黄色がD、茶色がE、そして灰色がFクラスだ」


 再びざわめきが起きる。


「今の話で大体理解できたと思うがSが最高ランク、そしてA、Bとランクは下がっていくことになる」

「マジかよ俺なんてFだぜぇえぇえ!」


 悲鳴に近い声が聞こえてきた。今の話のとおりならFは下の方ということになる。

 

 ただ一つ気になったことがあって。


「おい、それってどういうことだ?」

「私達の番号には色なんてついてなかったよね?」

「そ、そういえば……」

「うん。何か木製の掲示板で妙だなとは思っていたけどね」

「……」

「やっぱり特別だからかしら?」

「寧ろ嫌な予感がしてきたぞ……」


 僕のクラスメートになる皆も今のリカルドの説明では納得出来ないことがあったようだ。


 僕たちの番号は木に乱暴に彫られていただけだしね。だけど今の話だと――


「さてクラス分けに一喜一憂していることだろうが、ここで疑問に思った者もいることだろう。そう今回新設された特別クラスについてだ」


 リカルドが僕たちに顔を向ける。


「結論から言うと今回新設された特別クラスとはZクラス――何もないZeroからとり名付けられたクラス。我が学園における最底辺に位置するクラスとなるのがこのZクラスだ――」

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