第190話 魔力0の大賢者、学園に合格!

一時はどうなるかと思ったけど、どうやら新しく出来た特別クラスに合格できたようだね。


 皆も喜んでくれている。特別という響きがまさに特別っぽいと言ってくれているけど、でも何がどう特別なのか気になるところかもね。


「特別クラスの発表も見たな。それならばこれより入学式を行う。合格できた生徒は集まるがいい」


 この声――やっぱり試験官を努めていた教師のゲズルだね。


 事前に聞いていたけどこれから式が始まるようだ。僕たちは揃って先生の前に向かって。


「貴様か。どうやら特別クラスに合格したようだな」


 僕に気がついたゲズルに話しかけられた。先生に体を向け改めて挨拶をする。


「試験の時はお世話になりました」

「ふん。本当にな。全く学科試験といい実技試験といい忌々しい奴だと思ったが、ま、合格できたなら精々落第や退学にならないよう気をつけるんだな」

「……マゼルに限ってそんなことになるわけない」


 顔を顰め忠告してくるゲズルにアイラが割り込んだ。不機嫌そうな目を彼に向けている。


「これはこれは今年の注目株のアイラではないか。しかし君のような才ある人間が魔力が0という才能の欠片も感じられない男の肩を持つとは感心しないな」

「そんな言い方ないだろう」

「ビロス、何かもやもやしてプンプンだよ!」


 ゲズルの発言にモブマンがムッとした顔を見せた。ビロスも拳を振り下ろして不機嫌を顕にしている。


「先生はきっと僕の気を引き締めるつもりで言ってくれてるんだよ。そうですよね?」

「――フンッ」


 皆が僕の為に怒ってくれてるのなら嬉しいことだし友達は本当にいいものだなって思うけど、入学前から教師の心象を悪くするのも得策じゃないだろうし、とにかくここは落ち着いてもらおう。


「貴方様もこの学園で教鞭を取られているのですか?」


 するとイスナがゲズルに問いかけた。あれ? なんだろうちょっと不機嫌なような……


「うん? おや。これはこれはイスナ殿下。エルフ女王国からわざわざこのような場所までご足労頂き」

「そのような話は結構です。学園への入学を望んだのも私なのですから。それよりも学園は身分に関係なく誰もが平等に魔法を学べる場だと、そう聞いておりましたが」

「それはもう」

「だとしたら今さっきのマゼル様への態度はおかしいのでは? とても偏見に満ちていたと思えるが」


 先ずイスナがゲズルに問いかけ、後を引き継ぐようにクイスが詰め寄った。ゲズルの型にはまったような笑顔が引きつる。


「その、今のは彼自身が言ったように、あくまで学園生活を送る上で羽目を外さないよう注意喚起のつもりで言ったことですので」


 しどろもどろになりながらもゲズルがイスナに説明した。イスナはエルフの国から留学生として来ているだけにゲズルも気を遣っているのかも知れないよ。


「そうでしたか。ですが大賢者たるマゼル様なら十分ご理解していると思いますが他に何か?」

「……いえ。それよりももうすぐ入学式が始まりますので」


 ニコリと微笑みかけるイスナ。ゲズルは眼鏡を直しながら答え、入学式へ僕たちを促してくる。


「わかりましたでは参りましょうマゼル様♪」

「う、うん」


 流石エルフィン女王国のお姫様だけあって強いよね。そして何気に彼女が僕の手を掴んで引っ張って来た。


 白くて細長い指。それにとても感触が柔らかい。

 何かちょっとドキドキしてきた。転生前を入れればいい年なのに!


「お待ち下さい。イスナ様とクイス様は留学枠な為、会場では席が別となります」

「……私は皆様と一緒の方がいいのですが」

「どうかご了承を」

「姫様。ここは致し方ありません。既に席の準備も整っているでしょうから」


 僕たちと違ってイスナとクイスは入学が決まっていたし、準備が出来ていたなら確かに今から断るのは難しいかも知れない。


「……残念だけど仕方ない。ならマゼルは私達と一緒」

「一緒一緒~♪」


 すると今度はアイラとビロスが僕を挟むようにして腕に……二人共すごい美少女になってるし、あ、やばい何か熱っぽく――


「全くマゼルが羨ましいぜ」

「やはり大賢者はモテるのですね」


 いや、これは別にモテるとは違う気もするけどね。皆僕に気を遣ってくれてるんだとは思うけどただ密着度が……


「いや、そこのマゼルも他の生徒とは別枠だ」

「え?」

「……どういうこと?」

「嫌だ! ビロスはマゼルと一緒がいい!」


 眼鏡を直しながらゲズルが僕を指差し言ってきた。


 ビロスがピタッと僕に寄り添って叫ぶ。アイラも剣呑な顔つきだ。


「マゼルお前は特別クラスで合格したのだ。特別クラスも他の生徒とはわけられる」


 そういうことか……確かに僕が合格したのは今年から新設されたという特別クラスだ。


「皆、それなら仕方ないよ」


 そういう決まりなら文句を言っても仕方ないしね。皆にも納得してもらって僕はゲズルについていく。


「あそこがお前たちの場所だ。いいか? 他の生徒の邪魔だけはするなよ? それとイスナ姫は留学生としてわざわざ入学してくれたんだ。貴様のような悪い虫にまとわり付かれては迷惑だ。その辺りの事もしっかり弁えることだな」


 僕に特別クラスの生徒が集まる場所を教えた後、最後にそんなことを言い残して去っていった。


 ふぅ、随分と嫌われたものだね全く。

 

 とにかく僕は既に集まっている生徒の輪に加わることにした。この皆が僕のクラスメートになるんだね――

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