第188話 魔力0の大賢者、合否を確認する

 朝から師匠のことでドタバタしたけど、僕たちはいよいよ試験の合格発表を見るために学園前の広場までやってきた。


 ここで合格したらすぐに入学の手続きに入る。だから入口近くの広場に受験番号が記載された巨大な掲示板が用意されているわけだ。


「凄い人だよマゼル~」

「受験生が皆集まってきてるからね」

「何かドキドキしてきました」

「姫様は受験をそもそも受けてないのですが……」

「もうクイスったらドライね。こういう空気にあてられてるの。それに心配は不要と思いますが大賢者マゼル様のことを思うと……」

「……むぅ」


 何かイスナが妙にうねうねしてるような? それを見るアイラの視線もちょっと厳しいような?


「う~ん、やっぱり皆緊張してるのかな?」

「何かマゼルのこういうところ見るとちょっと安心するな」

「大賢者マゼルでも弱点はあるようですね」


 モブマンとネガメが苦笑して言葉を交わしていた。僕に欠点……それはもう大いにあるよ!


 むしろ欠点だらけの人間ですから……今更だけどそもそも魔法使えないんだし……


 それはそれとしてアイラがはしゃぐビロスを窘め、そして一緒に掲示板の前まで向かった。


 うん? でもなんだろう。妙に視線を感じるような?


 まぁ敵意とかじゃないけどね。だからそれは気にしないことにした。


「あ、マゼルこっちこっち~」

「アダム」


 手を振って僕たちを呼んだのは試験で一緒になったアダムだ。彼の魔法は皆を驚かせたよね。


「一緒に発表見ようよ。ま、マゼルなら間違いなく合格だろうけどね」


 ニコニコとアダムが笑顔を振りまく。いい顔で笑うよね。


「……マゼルは流石。男女関係なく人を引き付けるカリスマ性を兼ね添える」

「まさに大賢者たる所以ですね」


 アイラとイスナが話しているけど、いや……本当そんなことはそもそも女の子にモテたためしがありませんから!


「改めて見ると結構な数が試験を受けてたんだな」

「この中から選ばれるのは大変そうです」


 モブマンとネガメが真剣な目で受験票の数字と掲示板を見比べた。


 アイラやビロスも眺めている。


「あ、あったよ! 僕の数字があった!」

「おめでとうアダム」


 アダムはもう自分の番号を見つけたようだね。僕にも番号を見せてくれたよ。掲示板にはアダムの受験番号が金色に光って表示されていた。


「……私もあった」

「ビロスも~!」


 アイラとビロスも番号を見つけたようだ。数字を教えてくれたけど二人の番号は銀色で表示されていた。


「あ、お、俺もあった! あったあった!」

「僕もです! やった! これもマゼルのおかげですよ!」


 モブマンとネがメも無事合格できたみたいだ。二人の数字は青色で表示されていた。


「後はマゼルだね」

「マゼル~どこ~?」

「勿論マゼルは受かってるよな」

「僕たちでも合格できたんだから当然ですよ」


 皆が期待に満ちた目を向けてくる。僕も出来れば皆の期待には答えたかった。


 だけど――


「……マゼル。どうしたの?」

「マゼル様?」


 アイラとイスナは僕の様子を見て何か気がついたようだ。本当なんて言っていいか――


「はは、ごめんね皆」

「え? まさか!」


 苦笑するしか出来なかった。何度も確認したけど、確かに間違いない。


 僕の番号は見当たらなかった。つまり――


「ごめん。僕落ちちゃったみたいだ――」


 そう答えると皆の笑顔が消えた。何か申し訳ない。でも予想出来なかったことじゃない。


 だって僕は魔力が無くて魔法も本当は使えてないわけだし……


「ありえないわ!」

「チュ~!」

「へ?」


 その時、聞き覚えのある声が僕の耳に届いた。えっとこの口調って……

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