第183話 魔力0の大賢者、とその師匠
「……マゼル、知り合い?」
「え~? だれだれ~?」
「ハッ!」
アイラとビロスが不思議そうにしている。しまった! 冷静に考えたら僕のことを師匠が知ってるのはおかしいぞ!
「くっ、また美人がマゼルのことを!」
「モブマンどうして血の涙を!?」
モブマンを見てネガメが叫んだ。あ、うん。何でだろう?
「うふふ……一体どちら様かしら?」
「イスナ様落ち着いてください」
何かイスナやクイスも師匠に注目してる! ヤバい。師匠も余計なことを言わなきゃいいんだけど……
「でもマゼル驚いたよ~ざっと五百年ぶりぐ――」
「ちょっとこっちへ!」
思わず高速ダッシュして師匠を抱え別の場所に移動した。あぁもう!
「いやだ~マゼルってばだいた~ん♪」
「ふざけないでください! いや、というか、そ、そのマゼルとか転生とか、な、何のことでしょう?」
つい声が大きくなってしまう。何か師匠が頬に両手を付けてくねくねした動き見せてるし……とは言えよく考えたら僕は転生してるわけだし師匠が僕だってわかるのはやっぱりおかしい。何かの間違いかもしれないから惚けてみる。
「おやおや私が愛弟子だったマゼルのことがわからないと本気で思ってる? 師匠として悲しくなっちゃうよ~」
「いや、よく見てくださいよ。僕はどうみてもまだ十二歳の子どもですよ~貴方の言ってるマゼルは随分前にいらした大賢者のことですよね?」
「あはは~相変わらずマゼルは嘘が下手だね。そこが可愛いところなんだけどね~」
うぅ、そうだ。師匠は修行は厳しくもあるけど、よく僕をからかって愉しむような人でもあったんだ。
「ま、わかったのは魂が見えたからなんだけどぉ。ハイエルフの私ならそれもわかるしぃ~♪」
魂――そうか。言われてみれば転生前に魂を
「だからねぇ~私にはわかるのだ! マゼルの魂は前と変わらず無垢でキレイなままだよね~でもだからってまさか未だどう――」
「わああぁあぁあああぁあああぁああ!」
僕は思わず叫んだ。なんて事を言うの師匠!
「うぅ、僕の負けです。確かに僕は転生した元のマゼルです」
「うんうん。よしよし。素直なのはいいことだよねぇ~」
膝をついて認めた僕の頭を師匠がナデナデしてくれた。
「いや師匠。前世から通算すると僕五百歳超えてるのに……」
「あはは。ハイエルフの私から見れば五百歳なんて子どもと一緒だよねぇ~」
あぁ、確かに師匠は転生前に見た時から容姿が全く変わってない……
「師匠も変わりないですね。見た目も性格も」
「そんな褒めないでよ~照れるぜ♪」
キランっと光の精霊を利用して目元を輝かせて決めポーズ。本当以前から変わらない。
「でも、まさか転生してから師匠に会えるとは思わなかったですよ」
「あはは。私はもしかしたら~とちょっとは思ったけどね」
「え? そうなんですか?」
「うんうん。大賢者の再来が現れたって風の噂で耳にしてたからねぇ」
そうだったんだ。いや、それ以前にどこまでその噂広まってるの!
「でも――マゼル頑張ったんだね。正直まさか本当に転生してからも力を維持できてるなんて思わなかったけど~」
う~ん確かに。僕もまさかとは思ったんだけどね――
そう、あれは転生前――
『え? 魂に刻むですか師匠?』
『そうさマゼル。いいかいマゼル! 人は他種族と比べると寿命が短い。その代わり人は転生しやすいんだ。マゼルだって何れ結婚し子どもが出来てそして、そして――うぅ』
『師匠どうして泣くんですか!』
『ついマゼルの未来を想像してぇ。でも悲しいからできれば一生そのままでいてね♪』
『そのままと言われても僕はできれば成長したいです』
『そういう意味ではないのだけどねぇ~。とにかく人は死ぬと転生する力が備わっているんだよねぇ。だけど転生すると基本的に前世の記憶は失われるし当然赤子からやりなおしさぁ。だけどねマゼル。魂をしっかり鍛えておけば転生後でも記憶がそのまま! しかも肉体的な強さもすぐに元通りなのさ! いわゆる強くてニューゲームって奴? 素敵だと思わないかい?』
『は、はぁ……でも魂を鍛えるってどうやって?』
『それが魂に刻むなのさ! マゼルは氣も完璧に使いこなせるからきっとそれも可能だよ。氣の源は魂だからねぇ~そうやって日々の経験を常に魂に刻んでおけば転生後も安心だからしっかりねぇ。転生しても私のことは忘れちゃ駄目だぞ♪』
――そう。それから僕は修行でも何でも魂に刻むことを意識してやってきたんだった。
でも、まさかそれで本当に記憶と力を維持したまま転生出来るとは思わなかったけどね。
「よく頑張ったねぇ~マゼルぅ~」
「だから撫でないでください」
「マゼル~どこ行ったの~?」
あ、ビロスの声だ。流石に突然消えたら心配されるかな。
「マゼル呼んでるね~」
「はい。とにかく戻りますが転生のことは誰も知らなくて……」
「あぁそうだよね~私もうっかりうっかりぃ~♪ 大丈夫もうバレるようなこと言わないからね。師匠として弟子の困ることはしないよ~」
いや、もうちょっと困ったことにはなってしまったんだけどね。とりあえずさっきの事も含めて上手く誤魔化すからと約束してくれたし皆の下へ度ることにした。
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