第178話 魔力0の大賢者、メイリアと決着?
メイリアはどうやら人型のゴーレムらしいのだけど、人型だろうとなんであろうと、見た目には綺麗な女の子だ。
それなのにあんなひらひらしたスカートで格闘戦は、か、感心できないよ! とにかく、僕は紳士として彼女の、スカートが捲れないように接近させないと誓ったんだ。
「……解析完了。マゼルの魔法は大賢者故に特殊と書き換えましたとお答えします」
いや、その、そういうわけでもないというか、魔法ではないと言うか……
「ですが、それでもマゼルの能力では総合的に見て私を近づけさせないなど不可能と判断します」
「……そう。君は頭がいいのだね」
『あはは、メイリアは僕の最高傑作といっても差し支えない出来だからね。そんじゃそこらのゴーレムと一緒にされちゃ困るのさ』
ゲシュタルの声が聞こえてきたけど、だとしてももう少しこう格好に気を遣うとかさせてほしかったよ……
「出力を50%まで引き上げるとお答え致します」
『へぇ……そこまでとは驚きだね』
ゲシュタルの感心したような声。50%ということはさっきの倍ってことか。
「50%、遂に全開ってことか!」
「半分ですよモブマン」
「……いくつでも同じ。マゼルには勝てない」
「そうだよ! マゼルはとっても強いんだから~」
皆の声が届く。そうだ、折角ここまで来たんだから皆と一緒に合格したい。
だけど、近づけさせない、それは守らせてもらう。その上で合格をもぎ取らないと。
僕は静かに呼吸を整えて――制空圏を広げた。
刹那、メイリアが一気に距離を詰めようとしてくる。だけど、僕の制空圏に入った瞬間弾き飛ばした。
「――ッ!?」
メイリアが驚いているのが見えた。近づけないことで躊躇っているのかも。
「お、おいおい何だ今の? 何が起きたんだ?」
「……あれは、かつての大賢者が使用したとされる守護魔法――
「あれがあの伝説の!?」
「凄い凄い! マゼルすっご~い!」
何かまた凄い勘違いされている気がする……
さて、これで範囲内に氣を張り巡らせて相手を近づけさせないことに成功した。相手が足を踏み入れても僕の氣の操作で弾くことが出来る。
メイリアは何度も僕に近づこうと試みるけど、その度に弾き飛ばされることになった。勿論ダメージは抑えているから怪我はない。
「ならば、障壁ごと斬るとお答えします」
メイリアの肘から三日月型の刃が飛び出た。あれは魔力の刃か――そして僕の制空圏手前で刃を振る。
だけど無駄だった。そもそも魔法じゃないわけだしとにかくメイリアが再び弾かれる。
暫く地滑りするように後ろに流されたメイリアが急停止し僕を見ながらメイド服を手で払った。
「――解析完了。マゼルの実力判定更新。これより中距離戦に移行するとお答えします」
そう語った途端、メイリアが両手を突き出し、かと思えば十本の指から魔法の弾が連射された。
これは秒間千発以上は発射されていそうだね。でも、全て制空圏に入った瞬間に処理させてもらった。僕にその弾は届かない。
「――出力100%。
すると今度はメイリアの周囲に金属で出来た球体がいくつも浮かび上がった。かと思えば僕に向けて飛んできて、体当りしたり一定の距離から細長い光線を発射してきたりする。
「――これも、届かない。出力不足とお答えします」
そう、だけどそれも全て制空圏に入った瞬間に相殺した。
「――マイマスター。
『うっそ~! 凄いよ大賢者。まさかメイリアがここまで言うなんてね』
メイリアが何かをゲシュタルに要求し、途端に嬉しそうな声が響き渡った。さっき出力100%とメイリアが言っていた気がするけど、まだこれ以上があるのかな?
『――わかったよメイリア。制限解除を許可する。思いっきりやって僕を楽しませてよ!』
「マスターの許可を確認。出力150%。これよりヴァルキリーモードへ移行します」
すると、メイリアの周囲に突如大量の武器が現出した。
「サウザンドウェポンの発動とお答えします――」
そしてメイリアの手で操られた大量の武器が一斉に僕に襲いかかってきた。大剣や槍だけじゃなくてさっきだしていた球体やメイリアの肩には筒型の武器も備わっていて、先端の丸まった円筒状の物体も僕に向かって飛んできた。
光線や電撃、火球や氷弾、竜巻も含めてあらゆる攻撃が降り注ぐ。
これは僕もうかうかしてられないね。氣を集中させて――
「ハッ!」
気合いを入れて地面を踏み抜くと膨れ上がった氣が間欠泉のように吹き上がる。メイリアの生み出した数多の武器は全て砕け、メイリアが空高く舞い上がった。
「しまった! 力みすぎた!」
あのままじゃ怪我させちゃうかも! それにスカートが捲れちゃう!
リンクを蹴り、てリングごと消えちゃってる――とにかく地面を蹴って跳躍、落下し始めたメイリアを空中で受け止めた。
「な、何だよこれ、凄すぎだろ!」
「……あれは大賢者の極聖魔法ディバインゲイザー――」
「伝説級の魔法がこんなにばんばん飛び出すなんてやっぱりマゼルは凄い」
「マゼル凄~い! 大好き~!」
「……ビロスどさくさに紛れて、あ――」
リングが見事に消えちゃったからメイリアを掴みながら外側に着地した。
「えっと、大丈夫?」
「……理解不能」
「え?」
「……マゼルに、お姫様抱っこされてる――」
「へ?」
その時、アイラの声が僕の耳に。それで気がついた。た、確かにメイリアとのこの格好は、えっとつまり理解不能って――
「ご、ごめんなさい! そんなつもりじゃなくて!」
すぐにメイリアを下ろしてあげて謝罪する。もしかしてこんな形で抱きしめてしまったことで気分を悪くさせたかも!
『いやはや、まさかここまでとはねぇ。しかも、逆にメイリアが助けられるとは。それで、どうメイリア?』
「……大賢者マゼルの情報を更新。現在の戦闘力を計測した結果、今の私では150%勝利は不可能とお答えします」
うん? えっとゲシュタルの問いかけにメイリアが答えていたけど、それって――
「マイマスター申し訳ありません。私の負けとお答えします」
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