第176話 力0の大賢者、ゴーレムと戦う
さて、メイリアという名前のゴーレムと戦うことになった。見た目からして他のゴーレムとは一味違いそうだぞ。
「ゴッ!」
すると、ゴーレムが腕を突き出して、かと思えば僕に向けて腕が飛んできた!
「おっと!」
突然腕が飛んできたから驚いたよ。躱したけどね。
だけど、ゴーレムは更にもう一本の腕も飛ばしてきた。しかも腕は軌道を変えて僕を追いかけ回してくる。
「やるね。なら!」
僕は二回拳を前に突き出した。すると腕が二本とも消え去った。拳圧でね。
でも、あれ? こんなもの? 見た目からしてもっと頑丈かと思ったんだけど……
『あはは、凄い凄い純度90%以上のオリハルコンに
う~ん、多分凄いんだろうけど、オリハルコンの純度が低いね。それだとやっぱりどうしても脆くなる。ただエテルニウムは術式の効果が発揮しやすい魔法金属だった筈だね。
だから膜のように魔法の障壁で覆われているんだろうけど、それにしては強度が低い。やっぱり試験用だからあまり頑丈にはしてないんだろうか?
『だけど、腕を壊したぐらいでは終わらないよ』
ゲシュタルの笑い声が響いた。するとゴーレムの無くなった腕から奇妙な形の細長い棒が伸びてきたよ。
『それは魔導速射銃さ』
ゴーレムの手に備わった棒、どうやら速射銃というらしいね。そこから僕に向けて高速で弾が発射された。
小さいけど威力はあるようで地面に痕が残っていく。
「お、おい、何だあいつ、何であんなわけわかんない攻撃を躱してるんだよ!」
周囲から驚きの声が上がったけど、えっと、確かに結構な量の弾が飛んできてるけど、避けられない程じゃないよね。魔法の使えない僕でも避けられるぐらいだから、ある程度魔法が使えれば簡単だと思うよ。
『これは凄い! グリーンドラゴンの群れも一掃出来るこの攻撃をこうもあっさり避けるとは!』
グリーンドラゴンか……レッサードラゴンよりは上だけどそれでもドラゴンの中では下級……つまりゲシュタルから見て現在の僕に対する評価はその程度ってことか。
『どうやらメインウェポンに頼らざるをえないようだね――』
すると両肩の大砲から光線が一直線に突き抜けた。ドゴォオォオオオン! と轟音が響き渡る。
「ば、馬鹿な! 耐久力強化の術式さえも施した壁が破壊されるとは!」
『あれれ? ちょっと出力高すぎたかな? やば、死んでないよね?』
「……マゼル!」
「え? 嘘ぉ! マゼルーー!」
「マゼルが冗談だろう!?」
「そんな大賢者マゼルが!」
「え? 何が?」
「「「「「「ケロッとしてたーーーーーー!」」」」」
何か皆がざわついているような……う~ん。ちょっと驚いたけど、耐えられない程の威力じゃなかったね。あ、でももっと氣で覆っておけば良かったかな……上着がボロボロだよ……
『は、はは、本当に驚きだね。まさかあの超魔導砲を受けてもピンピンとしてるなんて……』
何をそんなに驚いているんだろう? それにさっき出力がどうとか聞こえてきたから、何となく手加減してくれたのかな? と思ったりしたけど。
あ、でも後ろの壁に大きな穴があいてるね。修理が大変そうかも……
さてと、そろそろ僕からも攻撃を仕掛けた方がいいかな。実はどんな手で攻撃したら認めてもらえるかなとずっと考えていたけど、今のゴーレムの攻撃で思いついたよ。
だから僕は腰だめで構えをとって――
「ハァアアァアァアアァアアア!」
両手を前に突き出すと光の覇道と化した氣がゴーレムを呑み込んだ。師匠からは覇光拳と名付けられていた技だ。恥ずかしいから絶対に言わないけど。
『ゴッ――』
そして僕の氣に呑まれたゴーレムが動きを止めて膝をついた。全身がバチバチとなんだか迸っている。
『……驚いたね。あれはまさに伝説のゼロの大賢者が使用したとされる伝説の聖光魔法ディバインジャッジメント――まさかこの目に出来る日が来るとはね!』
凄く興奮した声が聞こえてけど、ごめんなさい。全く違います。聖光ではなくて今のは氣ですから!
『魔導出力低下、行動術式破損、これ以上の動作は不可と判断します。マスターどう致しますか?』
その時、ゴーレムから妙に可愛らしい声が発せれた。うん? このゴーレム喋れるの?
『あはは! 本当に驚きだよ! まさか鎧の方を倒しちゃうなんてね。想定外だけど、こうなったら仕方ない。許可を出すよメイリア。外に出てマゼルと戦うんだ』
ゲシュタルの声に従うように、ゴーレムの胸部がウィイィインと言う音を鳴らしながら上に開いていく。
そしてその中の席には――メイド姿の女の子が座っていた。青い髪をしていてボブカット、そして可愛い……かなりの美少女だと思う。
「えっと、君は?」
「私はメイリア。マスターによって作られた自立思考型ゴーレム」
へ? ご、ゴーレムなの? 確かに今ゲシュタル教授が鎧が倒されたみたいなことを言っていた気がするけど……
『ふふ、さて大賢者マゼル。さっきもいったけど君の相手はあくまでメイリア。そしてメイリアの本体は目の前にいる少女の方なのさ~というわけで試合はここからが本番ってことで、レッツファイト!』
「え~……」
まさか、本当にこの子と? ま、まいったなぁ……
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