第171話 魔力0の大賢者、的を狙う
「お、おい。あいつ魔法が眼鏡らしいぞ」
「いや眼鏡が魔法なんだろう?」
「違う眼鏡が本体なんだよ」
「あぁなるほど。納得」
「本体は僕ですよ……」
ネガメの眼鏡魔法にざわつく受験生達。眼鏡から光線が出ればそれは驚くよね。ちなみにネガメによると攻撃よりはネガメ魔法は対象をズームインしたり、透過したり、鑑定したりといったことがメインなようで攻撃出来る魔法は限定的らしい。
それでも太陽光線を撃てるのは凄いと思うけどね。一応僕も出来るけど眼鏡に反射させるという発想が凄い。
「おぉ、点数も92点と高得点だ。やったな眼鏡!」
「ネガメです!」
「あ、ごめんつい……」
どうやらモブマンは素で間違ったようだよ。
「ふむ、眼鏡を使う魔法か。今回の試験には変わった魔法を使うのもいるもんだな」
リカルド……あれでも流石に理事長だけあって魔法はしっかりチェックしてるんだな。
「……次は私――」
次に前に出たのはアイラだ。アイラは錬金魔法の使い手だ。実はアイラの魔法は僕にとっては実に興味深いものだったりする。
「錬金魔法・ダイヤモンドスピア――」
そしてアイラが魔法でダイヤモンドの槍を大量に生み出し的に当てた。威力も精度も高い。凄いなやっぱり魔法は。ダイヤモンドを生み出すなんて僕がやるとしたら地面の中から適した成分を吸い寄せてギュッと握って造るぐらいしか手はないもの。
「おい見ろよ! 100点だぞ!」
「マジかよ……100点とか出るのかあれ……」
「素敵――」
「アイラお姉さまって感じよね……」
アイラに一斉に注目が集まった。男女問わず感嘆の声が上がっている。やっぱりアイラは流石だよね。
「ふむ、流石はナムライ辺境伯の娘といったところか――」
流石にリカルドは来ている受験生の素性はチェックしているか。アイラに関しては特に興味深そうでもある。
「次はビロスだよーーーー! マゼル見てて見てて~!」
「うん。頑張ってねビロス」
ニヒッ! といい笑顔を返してくれたね。本当ビロスは明るくて、見た目にもとても元が蜂だと思えないよ。
「あのマゼルって奴、何であんな可愛い子ばっか……」
「魔力もないくせに……」
「でもさっきから見てると点数は凄いぞ」
「どうせ何か卑怯な手でも使ったんだろう」
ふぅ、耳がいいというのも困りものだね。余計な情報まで自然と耳に入ってきちゃうもの。
でも、やっぱり魔法学園では魔力が0というのは受け入れられないものなんだろうね。
おっといけないいけない。それよりもビロスの魔法をみないと。
そういえば、ビロスの魔法を見るのは初めてだね。人化して魔法が使えるようになったらしいけど一体どんな魔法なんだろう?
「行くよ! 蜜魔法! ハニーボール!」
するとビロスが両手を上げ、手と手の間に蜜が集まっていく。段々と形が纏まっていき、ビロスの頭より一回りぐらい大きな球体となった。
蜜魔法――それがビロスの魔法なんだ。蜂らしいと言えばらしいけど、これもかなり変わった魔法だね。
そしてビロスが投げた蜜の玉は見事に的に命中してパンッ! と爆発するように弾けた。あれ、結構威力高そうかも――
「おい、あの子は90点だったぞ!」
「どうなってんだあの列。さっきから高得点連発じゃないか」
再び周囲がざわめき出す。モブマン、ネガメ、アイラ、そしてビロスと確かに連続で読点が高かったからね。
「うぅ、100点じゃなかった」
「いや、90点でも十分凄いよビロス」
「本当? 偉い? ビロス偉い?」
「うん。凄いし偉いと思うよ」
「やった~! マゼル大好き~~~~!」
「わっ!」
ビロスがぎゅっと抱きしめてきた。ま、参ったな。こういう感情表現はまだまだ野性的と言えるのかもしれないね。
「……ビロス」
そしてアイラがビロスの肩を掴んで向こうへ引っ張っていった。な、なんか目が怖かったような?
「蜜を操る魔法? 初めて聞いたな……」
リカルドは怪訝な顔だ。ビロスの魔法に色々と考えを巡らせているのかも知れない。
「……次だ。順番がつかえてるのだから早くしたまえ!」
「あ! はいすみません!」
ゲズルに怒鳴られてしまった。急いで所定の位置についてっと。
「いや、つかえてるってマゼルが最期だよな?」
「ですね。もう皆終わってるようですし」
「……あの試験官心が狭い」
「マゼルーーーー! やっちゃえーーーー!」
皆の声が聞こえて気づいたけど、確かに僕で前半の試験は最後みたいだ。
う~ん、それでかな? 心做しか妙に注目されちゃってるような……
うん? そういえば――正面の的……さっきまでと何か違うな。的の周囲に障壁が纏われている。あんな障壁さっきまで張ってなかったけど……もしかしてパンチングマシンを壊しちゃったから警戒されてる?
でも、そうか障壁があるならもう流石に壊れるようなことはないよね。
さて、この試験、これまでと違ってしっかり魔法で見せないといけないよねやっぱり。拳の衝撃で撃ち抜いてもいいけど、やっぱり周りから見てしっかり魔法だと認識出来そうなのが望ましいのだと思う。
よし、だったら――僕は気も利用して血流を操作し、細胞を活性化させることで体内の電気を増幅させた。右手がバチバチと迸る。
よし、あとはこれを的に向けて――放つ!
「ハッ!」
掛け声を上げて手を突き出すと、バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ! と激しい音が鳴り響き無数の電撃が踊るように移動し的に命中、続けてまさに落雷といった雷鳴と眩い光。
そして光が収まった後には――的があったと思われる場所が黒く染まり煙を上げてしまっていた。
「……え、と――」
「……す、すごい。これがあの伝説の大賢者の神雷魔法――ゴッドサンダー!」
「いやいや! 違う違う!」
アイラが目をキラキラさせて言ってるけど、そんな大層なものじゃないからーーーー!
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