第127話 魔力0の大賢者、結局願いを受け入れる!?
「お願いだよマゼルくん!」
「頼むぜ大賢者!」
モブマンとネガメの2人から魔法の指導を頼み込まれてしまった。でも、これは中々困ったことになったぞ。なにせ僕は魔法がそもそも使えない。
「あの、何故2人はお兄様から魔法を?」
するとラーサが間に入って2人にわけを聞いてくれた。うん、確かにそこは気になるところだね。正直言えば指導者ならもっと適任者がいると思うんだけど……。
「それは、僕もモブマンも、大賢者マゼルの活躍を見て、魔法使いに憧れるようになったんだよ」
「そうそう。それに以前ネガメと畑を守るために蟲と戦っただろう? あの時から俺たち魔法にも興味を持って独学だけど勉強を続けていたんだ」
「その内に、本格的に魔法の勉強がしたくなって……それで、魔法学園に通いたいと思うようになったんだ!」
「え? 魔法学園に?」
これは驚いたね。まさか2人が魔法学園に通いたがっていたなんて……ラーサも行きたそうだったからここにいる3人が魔法学園に入学希望ということになるよ。
「なるほど、魔法学園ですか……」
「うん、でも、魔法学園には入学試験があるのだけど」
「それが凄く難しいって聞いてな……独学だけじゃ厳しいかもしれないと思い始めたんだ」
「だけど、誰かに習うと言っても僕たちには伝がなくて」
「伝か……でも町に魔法を教えてくれる人はいないの?」
「いるのはいるけど教えてくれるのは基本的なことだけだからなぁ」
「一応これまでも習っていたけれど、もう僕たちには教えることはないって言われちゃって」
それって結構凄いのでは? それに僕だと基本的なことも教えられるかどうか……勿論知識だけでいいなら一応わかることもあるけどね。
「確かに、私も自分なりに調べましたが魔法学園の試験は基礎だけだと厳しいかもしれません。色々と応用も利かないと」
「そうだろう? それで思ったんだよ、マゼルがいるってな!」
「うん、大賢者マゼルなら僕たちには本来もったいないぐらいだとは思うし……もしかしたら迷惑かもしれないけど……」
「そんな! 2人は友だちだしそんなことで迷惑になんて思わないよ!」
「え? 本当に?」
「やった! なら教えてくれるんだな!」
「流石お兄様です。その度量の大きさも大賢者たる所以なのですね!」
「え!?」
しまった! 僕はただ教えてくれって頼まれただけで迷惑になんて思うわけ無いってつもりで言ったのに、教えてくれるって捉えられちゃったよ!
「いや、あの……」
「よっしゃ! マゼルも大賢者になったから、もしかしたらもう俺たちの頼みなんて聞いてくれないかもと心配したからな」
「それはお兄様を馬鹿にしすぎです見損なわないでください」
「おっと、すまないなラーサ。勿論俺だって信じてたぜ!」
「え、え~と……」
「はぁ、でも良かったです。試験には結構お金が掛かるから、失敗したら折角許可してくれた親にももうしわけなかったし」
う、うぅ、訂正しようと思ったけど、もうそんなことを言える雰囲気じゃなくなってきたよ。でも……費用か……。
「ごめん、僕もそこは勉強不足で。受験費用ってそんなに高いの?」
「あぁ、一般試験だと金貨6枚だからな。平民にはキツいよ」
そんなに! 基本家族3人で1ヶ月暮らすのに必要なお金は金貨1枚とされている。つまり生活費半年分のお金が一度の受験で飛んでしまうことになるんだ。
「とにかくマゼル、俺達への指導、宜しく頼む!」
「お願い致します!」
改めてお願いされたよ。これはもう覚悟を決める他ないのかもね……。
「う、うん。わかったよ。ただ、役に立つとは断言出来ないけど……」
「お兄様が自らご教授するのですから、役に立つに決まっています! そして勿論私も参加しますね!」
えぇ! ラーサも教わる気満々になってるのよ~むしろそれならラーサが教えた方がいい気がするんだけど、でも皆の顔を見たらやっぱり無理とも言えないもんね――
◇◆◇
「マゼルよ。ラーサから聞いたが町の友だちに魔法を教授するのだとか?」
「もうお聞きになられたのですね。はい、成り行きではあるのですが……」
「うむ、マゼルならきっと良い教えをすることだろう! 教わるものが羨ましいぐらいだ!」
いや、どちらかと言えば教えることになった僕が頭を悩ませている問題ではあるのだけど……。
「そういえばお父様。実は僕に教えて欲しいと言ってきたのは友だちのモブマンとネガメなのですが、その理由が魔法学園に入学したいからということでした」
「む、ま、魔法学園か……」
あれ? 学園のことを話したら父様が眉を落としてどこか浮かない様子だ。そういえば以前も魔法学園について、どこか暗い様子だったような……。
「その、実はラーサも魔法学園に行きたいということで一緒に教わりたいと言われたのですが」
「ラーサも……そうか、マゼル、やはりお前も学園には行きたいのだろう?」
「え、いえ、僕は……」
「いや、皆まで言わなくてもわかる。大賢者の称号を得たとは言え、やはり魔法の申し子として学園に興味を持つのは至極当然!」
いやいや! まだ僕何も言ってないからね! 皆して勝手に話を進めすぎ!
「……どうやら、話さなければならなくなったようだな。今の魔法学園について……本当はあまり話したくはなかったのだが……」
え? 魔法学園について、やっぱり何かあるのかな? そういえばリカルドも気になることを言っていたし……何か関係があるのかもしれないね。でも……。
「父様、話したくないのであれば無理に……」
「わかっている! マゼルは心優しいから本当は聞きたくてもそう口にしてしまうのだろう!」
いえ、本当に無理してまで聞きたいと思わないだけなんだけど……。
「思えば、私は逃げていたのかもしれない。学園に関して語れば、我が家の不甲斐なさが知れてしまうと、そう思い込んでしまっていた」
うん? 不甲斐なさ?
「その、不甲斐ないというと?」
うぅ、聞かなくてもいいつもりだったけど、そう言われるとつい聞き返してしまう僕がいた。
「……マゼル、お前には黙っていたのだが、じつは私の父の父、つまり曽祖父の代まで東の魔法学園の理事長はローラン家が務めていたのだ」
「え! そうなの?」
思わず素で聞き返してしまった。それはちょっと驚きかもしれないね。
「でも、今は?」
「うむ、あのリカルド、つまりワグナー家が理事長の座についている……我がローラン家に代わってな」
代わった……ローラン家からワグナー家に理事長の座が移ったということなのだろうね。
「それは、何か理由があったのですか?」
「……記録では曽祖父の不始末が問題視されたとある。正確に言うと曽祖父の娘が結婚した男性による実験によって当時の魔法学園都市に魔物が大量発生した。幸い死者こそ出なかったが損害が大きく、その責任を理事長だった曽祖父が取らされ辞任し、代わりにワグナー家が就任される運びとなったのだ」
「そんなことが……でも何故ワグナー家が?」
「それが……曽祖父のことなのでこれも記録上の話だが、魔法学園都市に魔物が大量発生した際に率先して魔物たちを排除して回ったのがワグナー家の魔導師達だった。結果的にその所為で最悪の事態は避けられたという事となり、そしてその時に纏め役を担っていた男がその功績を認められ理事長の座に就いたとそういう話なのだ」
う~ん、なんだろう。どうにもスッキリしない話だよね。凄く引っかかりを覚えるよ。勿論過去の話だから今更覆るものでもないのだけど。
「そういうわけで、恥ずかしながら我が家は理事長の座を保つことが出来なかった。それが、心苦しくて言えなかったのだ。済まないな、そうでなければ堂々と学園に送り出すことが出来たのだが」
「そんな、そのような事、父様が気に病むことではありません。過ぎたことですし、曽祖父については無念ではあると思いますが、大事なのは過去よりも今、そして未来ですよ父様」
「マゼル……はは、やはり杞憂であったか。立派だぞマゼル。ただ、今でも曽祖父の意思を引き継いだものが学園の纏め役となっていれば、もう少し魔法学園も通いやすくなっていただろうと思うとな……」
うん? それは一体どういうことなんだろう?
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